20億人の未来銀行

日経BP社さまより「20億人の未来銀行」をご恵贈頂きましたので感想を書きます。

ビジネス的な話、人生的な話、世界のこれから的な話それぞれが詰まった、面白く、そして読みやすい良書でした。いわゆるフィンテックに関わる方やサービスデザイン、起業などに興味ある方には特におすすめできる本でした。

著者の合田さんは「日本植物燃料」というベンチャーの経営者で、電気のないアフリカの村で電子マネー経済圏を作ることに挑戦している起業家です。iiinoというyoutubeとブロックチェーンのマッシュアップ事業のCOOもやっています。

日本植物燃料は、世界のエネルギー問題、経済格差解決をミッションとして掲げてさまざまな事業を営んでいる会社です。

現在進行中の手記

合田さん自身も書かれていますが、日本植物燃料の取り組みは現在進行中といった段階です。ただ、その進行中だからこそ書ける生々しい空気感がすごく面白い。かっこいいことばかり書いてある手記でない、生々しさが本書の特徴かと思います。

モザンビークのど田舎で。

モザンビークはアフリカ東部の人口2967万人、UNDP調べでもっとも貧しい国とクラス分けされています。181位中188位(ちなみに日本は17位)。そのモザンビークで「忘れられた土地」と呼ばれるくらい開発が進んでいない、カーボ・デルガド州というところでビジネスをされています。この電気も届かない場所で、電子マネーを使った次世代銀行をつくろうとしています。最初は植物燃料を売るビジネスをやっていたのですが、そのうち燃料市場開拓のために電気を使うキオスクを運営するようになり、その事業を通して土地固有のお金の問題に気づき、銀行事業に移ってきたそうです。

テクノロジーで妖精と戦う。

本書内にはモザンビーク特有のいろいろな事情が出てきます。

その中でも、「豆粒みたいな妖精がお金を奪う問題」には驚きました。

モザンビークには妖精を派遣する黒呪術師と、呪いを解く白呪術師という現地職業があるらしいです。あるとき、合田さんたちが運営するキオスクから売り上げが消える問題が発生し、犯人は妖精だとわかりました(!!)。この問題に対する合田さんの考え方がユニークで、防犯カメラなどを使って、妖精や呪術師の文化の否定をせずになんとかできないかと考えたそうです。その土地固有の文化を否定するのは、その土地に拒絶されることにつながります。そこで電子マネーの導入に思い立ったというストーリーは興味深いです。

いきあたりばったり人生。

合田さんの経歴は非常にユニークで、なかなか見かけないキャリアを経て来られています。

京大法学部中退→塾講師アルバイト→先物取引会社→ITベンチャーに転職→破綻したその会社を借金して5000万で買う→発送代行会社設立→債権回収先で見つけたバイオディーゼルに惚れ込み日本植物燃料起業→資金枯渇、社員ゼロ、無収入に→友人に毎日500円もらってくらすヒモ生活→新規事業が上向き今という、とにかく豊富なエピソードをお持ちなのは想像がつきます。基本、面白そうかどうかで人生を選んで来ているとのこと。

上記のような経歴だけ見ると、破天荒で無茶苦茶なテンション高い方のような印象を受けますが、実際の合田さんにお会いすると、上記想像とは逆で、落ち着いて人あたりのよい方。でもチャレンジしていることや考えている視座、枠の大きさが大胆で面白い方です。

お金とものがたりの関係。

事業や製品を作る際に、かたちや作法のデザインのよりどころになるのはものがたりであって、そのものがたりを紡ぐことがデザインの本質であったりします。ものやアプリの外観や構造をデザインする以前に「ものがたりのデザイン」があって、実際私の仕事の領域でもそれがメインのプロジェクトもあるくらいです。

テンプル騎士団の財産証書化サービスから始まった為替のシステム。為替をはじめとしたお金のシステムそのものはものがたりなので目に見えない。みんなが信じれば新しいお金が回り出す。だからみんなが信じれるお金のものがたりをつくることで、世界のお金の仕組みは変えられるはずだと合田さんは本書で書いています。これこそ「ものがたりからのものづくり」ですね。

最近でこそ与信や電子マネーやカードヒストリーが集団思い込みによって支えられていることを理解している人も増えてきました。ただ、お金はものがたりだから、ってスパッと言い切る人はあまりいないので面白いです。

お金と地域の未来の関係

上記の他にも、人の生活に溶け込むことで様々な人々の信用情報や生活情報をごそっと集めて、それを社会の発展に還元するという取り組みに関連するさまざまなビジネス展望や未来への視座、国ごとの事情によるリープフロッグと事業との関連性、モザンビークと日本の地方の共通性など、さまざまなトピックが書かれており、学びある、充実した一冊でした。

(最近heyに蔵書コーナー作ったので、置いておいた)

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