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ディスク ガイド#01 KAGAMI - The Broken Sequencer

90’sがいろいろな業界で再評価・・・?

というか看板架け替え効果で「新しい」という風潮になってきてますが、実際のところ「どんなダンスミュージックが流行っていたのか知らない」って人も多いかもしれないので、

90年代~2000年代中盤までのディスクガイドを書いてみます
いわゆる【ジャパーニーズ・テクノ黄金時代】ですね

KAGAMI というアーティストから

2010年に過労による急性心不全で亡くなり、その後、未発表曲や新音源発掘もなく2019年になってしまいました
もし順調に行けばおそらく、電気グルーヴとの共演・DJ TASAKAとのプロジェクトを続けていて、金太郎飴みたいなEDMに対抗できるKAGAMIらしいユニークな楽曲を今でも作りつづけていたかもしれません
そんな期待されたKAGAMIの1stアルバムが「The Broken Sequencer」

2019年に聞いても色褪せないくらい、軽い・ショボイw いい意味で!!

それなのに、不思議とダンスミージックとして完成していてフロア映えする曲、
電気グルーヴみたいな【飛び道具(の瀧)】もなく、ケンイシイのような【作りこんだシンセサイザーサウンド】でもない
誰でも作れそうで作れなさそうな、ギリギリのボーダーラインを上手くついてくる曲構成。
M4 .Elefunts' Disco と M9. World Cup が好みですね

1998年当時のアルバム帯には、こんな評価も書かれています

ダンスへの渇きが爆発し適度な軽さとユーモアが混じった徹底したダンス・アルバム(エレ・キング編集長 野田努)

18歳で鮮烈なデビューを飾ったカガミは次々とオリジナリティー溢れるダンス・トラックを作りそのたびフロアを沸かせてきた(略)
本アルバムは、まさに新しい世代のテクノを代表する、アッパー一本元気いっぱいの作品に仕上がっている。(アルバム解説)

つまり、それくらいの逸材だったのが伺えます

そしてテクノ系のアーティストにありがちな「都市伝説」というか「逸話」
例えば、
・電気グルーヴでは「楽器を弾けない瀧」「機材ナシでライブをやった、音楽機材として自転車を搬入」
・ケンイシイでは「壊れた中古の KORG  M1 だけでテクノを作って世界デビュー」
その他にも当時有名だったDJは「親から勘当されて住む家もなく、所持金500円でDJを始めた」とか。まぁ、アーティストの個性を象徴するような内容。
そしてKAGAMIの逸話はといえば

「 YAMAHAのQY20と、『しょぼいサンプラー』だけでフロアを沸かせる曲をつくった 」という逸話
ずっと半信半疑だったんですが、KAGAMIについての追悼コラムを読んで事実と分ったのは嬉しい驚きの反面、とても悔しく惜しい気分になったのを覚えています

トランスを作ろうとして、ヤマハのQY20(入門者向け格安シーケンサー)とモノラル音源のサンプラーしか持っていないから似ても似つかない音しか出せなくて悩んでいた加々美くんは、シカゴのチープでプアだがファニーで踊れる音が耳に入って、「これなら僕にも作れる!」と俄然やる気を出した。そうしてできたのが、デビュー曲となった"Y"だ。(Columns 追悼:KAGAMI | ele-king)より引用

『The Broken Sequencer』では、ヤマハのQY20(入門者向け格安シーケンサー)とモノラル音源のサンプラーだけで作ったのかどうかは今となっては分りませんが、何かの記事で『機材のフェーダーの使い過ぎで壊れてしまった、でもネタとして面白いからアルバムタイトルにした』といういきさつから

壊れたシーケンサー = The Broken Sequencer となったらしいです

DAWが全盛期となっている現在では、こんな逸話はあまり生まれないかもしれないけれど、「最新機材の良さではなく、機材の魅力を最大限に引き出す努力」をするってのは今でも使える技術なのかも

いちアーティストとして、それだけは確信が持てる事実だと信じています

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