空衣

旅鳥。文学、哲学、セクシュアリティーが主な漂流範囲。ドイツ留学中

空衣

旅鳥。文学、哲学、セクシュアリティーが主な漂流範囲。ドイツ留学中

マガジン

  • 学生の想い出

    健やかに絶望する。

  • sexuality

    変わりゆくセクシュアリティについての断片的な記憶。

  • 雑文

    のらりくらり。

  • Deutschland

    帰還せよ。

  • アンビバレンス

    どんな形容詞も邪魔だ。

最近の記事

空衣がスマホ盗まれたってよ。

スクランブル交差点を見下ろす巨大パネルは四次元の喧騒で街を威圧する。そこから徒歩五分しない裏路地には、フォロワーのまだ少ない東京の洒落たバー紹介アカウントでだけ名前が知られていそうな、小綺麗な小宇宙がしゃんと広がっている。 入店と同時に、バーテンダーは僕にいつもの照葉樹林を差し出す。こんな奇妙な後味のカクテルを好んで頼むのは僕だけなのだ。深淵を覗くような深緑がライトに照らし出され、武骨な氷はドイツの冬ほどにゆっくりと溶けてゆく。 そうして一つ先の席に座る男女二人組の姿を映

    • もしも一億円当たったら

      100万円ならまだわかるけど、一億円って想像つかない。ってのは友だちの言葉。宝くじのコマーシャルを見ていたのです。 マクドナルドのCMで、キッズがハッピーセットにいちいち発狂して喜びをぶちまけている回があった。そんな風なキチガイとなって、「ファミリーマートの入店音」だとか「ドンドンドンっドンキ~」になっつかしいいいいいいいいいいいいいいいいいいって大興奮していた。こんな日がくるなんて、自分の中のギネスブックに記録しておこう。日本、なっつかし。2000年初期なっつかしい。

      • 団子三兄弟みたいな雪だるま作りやすいのもわかる

        不登校の生徒が学期最終日に通知表を受け取るために仕方なしに登校してくるようなテンションで、輝ない瞳の太陽がちらりと顔を出した。着飾ってるのでもいい、若干の春のおとずれ、うっれしいなあ、なんて能天気な自称ムードメーカーの顔で、三十分以上かかるいつもはバスで通る道を、ひょんひょこ徒歩でいった私がバカだったんだろうか。あっという間に雪景色。 今日は不幸にも一着しかない寝間着のスウェットに純アメリカンなサルサディップの真っ赤な固体未満液体以上の濃厚なチリソースをこぼしてテンションが

        • 透明な毛細血管を編み込んで、淡々と、いきをして、天の川にはあちらの果てがあるのだと信じる勇気をめいっぱい振りかぶって、手をのばす。

        空衣がスマホ盗まれたってよ。

        • もしも一億円当たったら

        • 団子三兄弟みたいな雪だるま作りやすいのもわかる

        • 透明な毛細血管を編み込んで、淡々と、いきをして、天の川にはあちらの果てがあるのだと信じる勇気をめいっぱい振りかぶって、手をのばす。

        マガジン

        • 学生の想い出
          100本
        • sexuality
          78本
        • 雑文
          100本
        • Deutschland
          27本
        • アンビバレンス
          84本
        • 32本

        記事

          イカリングの如く輪廻する。

          午前3時起床、午前4時イカリング調理開始、午前5時今に至る。 イカリングは美味い。でももっと美味しいのはオニオンリングだと思う。 前回は午前3時にオニオンを揚げていたら火力が強すぎたらしく、火災装置がウィンウィン鳴った。一分以上はなり続けていた。フライパンの火を消して窓を開け、突っ立ってうろうろしながら火災装置の悲鳴の元を探して右往左往していると、ドイツ人のルームメイトが起きてきた。そりゃそうだ。あれだけうるさいんだもん。むしろなんでもう少し早く起きて止めてくれなかったの

          イカリングの如く輪廻する。

          就活しない。

          馬鹿広いドイツ列車の中。リクルートスーツに着られてる男子ってダサいよねー、と言い合う女友達たちの話を、そんなの全く関心なかったわ、とだけ返す。 二人は同じく日本からドイツへの留学生で、来月ロンドンで開催される就活の国際的ビッグイベントへ行くそうです。その場で内定あるいはインターンオッケーの返事をもらったらそこで就活終了、圧倒的勝者になれるってことらしい。 私もちらりと情報を見たのだけど、理解不明なアラビア文字以上にちっともときめかなかった。というか企業名を知らないし、アラビア

          就活しない。

          ウサギの詩

          せめて朝が来れば せめて春になれば あと少し 大丈夫なんじゃないかと自分を騙しあって 本心を雪に埋めてきた。 息は白い 頬も青白い 魂は燃え盛ったまま 消えることはなかった。 美しく生まれ出てもいいのですか。 貴方が これ以上夢でも幻でもなく 腕の中にいれば あのとき誓ったから 貴方と幸せになってもいいですか。

          ウサギの詩

          平均睡眠時間12時間(プラスお昼寝)、生きてる。

          無気力な日々にスパイスもなく。倦怠感、嫌悪感。現実だとおもっているココよりも、夢の方が主役。それでも、なんでか生きてしまって、まだいなければならないようで。 こんなに長生きすると思っていなかった。 それを就活だのなんだのの言い訳にしているみたいだが、事実だ。単なる、でも決定的な事実として、今日も存在した。好きな人がドイツへ飛んでくるのを待っている。 「普通の王道にはなれない。」という記事を書いたのが2017年の4月でした。 変わりたかった。愛されてみたかった。 どれ

          平均睡眠時間12時間(プラスお昼寝)、生きてる。

          スマホがなくなった。あなたの写真も好きな音楽も、もう声も聞けない。過去はもぎ取られた。だから、現在進行形か未来しか、ないのです。

          スマホがなくなった。あなたの写真も好きな音楽も、もう声も聞けない。過去はもぎ取られた。だから、現在進行形か未来しか、ないのです。

          脳天を突き刺すほど甘い。

          なんて、トルコ菓子を形容するにはぴったり。のびーるアイスや、和菓子に似た練り菓子ロクムや、唇の柔らかさも、確かにそんなんでした。びっくりするほどトルコのお菓子が甘いものだから、ついに私の味覚がイカレタかと思った。それで正しいらしい。どのガイドブックやネットにもトルコ菓子の驚異的な甘さが謳われているいるのを、ドイツに帰国してから知った。 ノープラン、ノーテレフォン、ノーガイドブック、ノーボーイフレンド。希少な日本人として、観光されたのはどっちだかわからない。携帯電話をギリシャ

          脳天を突き刺すほど甘い。

          女はイスタンブールを逃走する

          黄昏時が散り散りになり、墨汁をぶちまけたような雲が主役、私は、知らない道を知らない車で知らない人に連れられていた。イスタンブールは日本時刻から時計の針を半周戻せばいいのだからわかりやすい。だがそれくらいの救いは何の役にも立たない。 覚悟が決まった。いざとなったらこの身一つで車から飛び降りよう。本当に、誰かの名言にあったように「勇気と希望とわずかなお金」さえ守り通せばその先なんとでもできるだろう。 気がかりといえば、後方のトランクに積まれたリュックサックの中に、日本へ送るは

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          女はイスタンブールを逃走する

          生まれてからこのかた一度も雨に降られたことのない人がいるだろうか。天気予報があれど傘があれど、濡れるときには濡れるものでしょう。注意は無意味と化されるのだから。 そんな感じで、鮮やかに、スマホを盗まれました。なんとかドイツに帰還しました。

          生まれてからこのかた一度も雨に降られたことのない人がいるだろうか。天気予報があれど傘があれど、濡れるときには濡れるものでしょう。注意は無意味と化されるのだから。 そんな感じで、鮮やかに、スマホを盗まれました。なんとかドイツに帰還しました。

          オリーブオイルをぶちまければ地中海料理ですか

          オリーブオイルをぶちまければ地中海料理ですか

          Αθήνα

          シンタグマ広場は、ギリシャ国民の中心の場だそうだ。その噴水を、信号を渡った先のマクドナルド二階から見ている。 マックは最強である。WiFiとトイレ無料、安い早い、言語わからなくてもなんとなくメニューわかるし、長居して追い出される心配もない。隣の客はきっとギリシャ語で会話しているけれど、外国語知らん人間がイメージする洋楽と同様に、ただ心地いいだけのBGM。 お婆ちゃんが羨みそうなほどスケートリンク並みにすべっすべの階段を降り、シンタグマ広場でなんだかよくわからない食

          Αθήνα

          障害物競走

          ものすごく嫌な夢をみる 一番想像したくないけれど襲ってくる獣は、好きな人が消えてしまうこと そんなことは考えたくないので宇宙の果てまで追いやる 今朝の夢も嫌な夢 「死んでくれない?」 と母から懇願される夢 夢が本物に思えるリアリティ 現実の仮面はもう私には合わないよ とっくにそうだっただろう 昨日の夢も嫌な夢 祖母に人生を否定される 今まで賭けてきた自分でも苦しく虚しい決断と過程を経て、ようやく出会えた大切な人 彼女

          障害物競走

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          二月が嫌いだ。日本製のチョコレートみたいに、甘いというより苦い。一掃しきるまで奥に残る。私はそれだけの孤独に耐え慣れていないから、大火傷しそうになる。毎年のことなのに。 終わりを直観できないまま呆気なく糸が切られる様は、かわいく言えばチーズフォンデュだし、現実的に言えば大気圏ギリギリでいつまで息がもつかという話で、捥がれた後の苦しみが大きいのだ。そんな風に好きだった人は去っていった。一番嫌いな季節に。 そうして三月がやって来る。乱暴だな、と悪態つく方が悪いみたいに

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