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生命の火花。
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記事一覧

障害物競走

ものすごく嫌な夢をみる

一番想像したくないけれど襲ってくる獣は、好きな人が消えてしまうこと

そんなことは考えたくないので宇宙の果てまで追いやる

今朝の夢も嫌な夢

「死んでくれない?」

と母から懇願される夢

夢が本物に思えるリアリティ
現実の仮面はもう私には合わないよ
とっくにそうだっただろう

昨日の夢も嫌な夢

祖母に人生を否定される

今まで賭け

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沈黙

「あ、最近私に連絡した?ごめん、しばらくLINEブロックしてたからさ」

だらしなくベッドに寝そべって生命力を感じながら、日本の友人と通話してそんな報告もした。

日本ではそろそろ日曜の午後が終わる頃で悲しみが増す時間帯だろうけれど、その友人は忙しいのが当たり前の生活を送っているから、何曜日であろうと社会の荒波に揉まれている。

真逆の性質を持ったその友人は、交わることのないような私の

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残酷な人

女も人間も生物もやめたい。

貴方がそれを阻むのです。

短編夢劇場

一夜にして

10か20の夢を見た

一話10分もなかった夢もある

それだけたくさん見たのに。

ひとつだけを覚えている

あなたの寮内に侵入して

廊下で待っていた

あなたは見て見ぬ振りでわたしの横を通り過ぎる

わたしはもちろん追いかける

エレベーター内で他の人に気づかれないよう

わたしはあなたのうなじに口付ける

そっと温もりが伝わる

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本当は

こんなに長生きする気はなかった

だから

金も人脈も物も

もはやほとんどない

生き通しただけでも褒めてください

ごめん

せめて何処へも出かけず

悪い気を起こさず部屋にこもるつもりです

今日が一年で一番嫌い

恐怖している

それでも

ついてきてくれるのですか

あなたには絶望を知ってほしくない

『君の名は。』

高級イタリアンレストランにて、私は待っていた。

無限に続く喧騒の中で、ミラノ風ドリアが50皿を超えて提供される。赤と白のワインボトルは机上に乗り切らない数ほどあり、それに伴って学生のノリもタチが悪くなる。まれに注文されるミラノ風ドリア以外の料理をどの卓上に載せればいいのか店員は困惑し、ベタベタになったテーブルを拭くための紙ナフキンも散乱している。以前悪酔いしてミラノ風ドリアを他の客に投げつけ

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お前は既に疲れている

ねえ、きっと大丈夫じゃないよね?

当たり前です。

ビジネスレベルでドイツ語できる友だちだって言ってるじゃないですか。
「日本から来てる留学生、みんなよく寝てるって言うよね。そりゃそうだ。外国語に囲まれて生活してるんだから、特に何もしてなくたって疲れるわ」

ああそっか。こんなにドイツ語できるこの人が、そう言う。語学に難ありの私なんかますますストレス感じてるんだろうなと初めて気づいた

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二年半前の自分を慰めに行きたい。あのとき、大好きになった光景をずっと独りで見ていて、ああ死ぬんだなと思った。何もなかった。苦しかった。孤独はずっと続くよ。でも今幸せだ。大切な人が、あのとき見ていた光景を、ドイツまで、飛んできてくれるって。今度こそ一緒にいれるよ。

それまで君はずっと淋しいよ。初めて同性を好きだと自認して、一年間現実に向き合えずにいて、それでも色々な場所へ体当たりして、踠い

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終着、延長。

あなたが管で繋がれている。点滴の音だけが、聞こえる。これほど近くにいるのに、あなたの鼓動が世界から途絶えたようなのです。それを打ち消すように、私はひとりで窓の外を見る。向かいの塀の無彩色が、鮮やかな世界を遮断する。

呼吸器の下に見えるあなたの整った鼻は、凛として生きている。あなたは、生きているのだ。

私は看護師に事情を話し、あなたの個室に長く滞在することを許された。家族でも恋人でもない

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この世が有限であることの証明

星とたった二人きりになりたい。

隣に恋人がいたとしても、その瞬間だけ忘れてしまうくらいに。わたしの影は星明かりにスポットライトを当てられ、ワープしてしまうの。宇宙に投げ出され、種族の殻を溶かしたわたしは、宙を駆る。上も下もなく、泳ぎだす。

もしもこの世界が無限だったら、きっと星々の存在が知られることもないくらい、輝きしかないんだろうね。あるいは、弱肉強食を具現化するように蠢いて、お互い

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面白いドイツ語でショートストーリー

eine taube Nuss
直訳)空っぽのクルミ
→意味)価値のないもの

Ich habe nichts zu verlieren.
ぼくは失うものは何もない
→何でもできる

Mit ihm ist nicht gut Kirschen essen.
彼と一緒では美味しくチェリーが食べられない
→彼とは付き合いにくい

eine kalte Dusche
冷たいシャワー
→失

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感じる

オカルトちっくなことを言うようですけれども、私は感じるんです。人の誕生日に。数字を聞いて、ビビッとくるときとそうでないときが明確にあるのです。

誕生日を一発で覚えられる人とは、大抵縁があります。それ以前に、誕生日を聞いてみたい欲が湧き上がる相手と、別に興味がないから聞かずに済ましてしまう相手に分かれるんですね。初対面にも関わらずそういう区分けが勝手に出来上がるのです。暫く関わったクラスメート

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恥という概念が復活する前に送ってしまう。投函。既読。自身のエクスタシィのための行為。オナニーと何ら変わらない虚しさ。けれどもそうでもしなければ生きがいが見出せないのです。