『シュレディンガーの猫』

「シュレディンガーの猫という理論知ってますか?」

「うーん聞いたことある。理論はわからない。あっ、歌でシュレディンガーの猫ってのがあって、それで知ってるや」

「そうなんですか。
シュレディンガーの猫って話は、箱に猫と放射性物質を入れるんです。もし放射性物質が粒子を出したら、猫は死ぬんです。

だけどそのアルファ粒子が放出されるかはわからなくて、箱を開けたときに猫が生きているか死んでいるかは50%ずつの確率なんです。生きている状態と死んでいる状態が重なり合っている。開けてみるまでわからないんです。

だからこうして今わたしと空衣さんが電話で繋がっていても、本当にそこに空衣さんがいるかは会ってみるまでわからない。」

「じゃあ、(確かめに来てよ)」

「…っていう演劇を、今やってるんですね」




私が「シュレディンガーの猫」という単語を知っていたのは、TSUTAYAでテキトーに引き出して借りたCDのひとつのタイトルにあったから。(Brian the Sun/ シュレディンガーの猫)

こうして不明確だった点が愛する人と線になったのも、偶然あのとき、何もかもどうでもよくてとりあえず新しい音楽でも聴いてみようかと投げやりに選んでみたCDが「シュレディンガーの猫」だった、というただそれだけの話だけども。

それこそシュレディンガーの猫じゃないの。

#小説 #エッセイ #音楽 #遠距離恋愛

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