潮だまり

宝さがしと根くらべ

「今夜は満月か・・・。よし明日はちょうどお休みだ。海に行こう!」

海に囲まれた島暮らし、月をみて潮汐を判断して、海に繰り出す人も多い。

私もそのひとり。

私は、親戚と大潮の干潮の海へ出るのが大好きで、潮の時間と休みの日があえば、貝を拾ったり、カニとりをする。
沖永良部島の海はゴツゴツしたサンゴ礁が多く、海に沈んでいたそのサンゴ礁が干潮時に現れ、沖の方まで歩いていくことができる。

最初は、派手な色をしたヒトデや魚にばかり目が奪われてしまうが、歩きながらよく見ていると、目が慣れてきてお目当ての貝やカニを見つけることができる。

立ち止まって、潮溜まりを覗くと、そこは天然水族館。

カラフルな熱帯魚やサンゴ、ナマコなどたくさんの生物がいて、見ているだけでも飽きないし、癒やされる。歩きながら海にまつわる方言、料理についてなどの話を聞けるのもとても勉強になるのだ。

また、晩御飯のおかずになる貝やカニを見つけるのは、まるで宝さがしのよう。

おもに、いい出汁がでる宝貝(方言でクルシビ)とカニを探すことが多い。

特に、小さなカニは、私の住む集落では、つぶして出汁をとりカニ汁を作る。これが絶品なのだが、このカニを捕まえるのが、根気のいる戦いである。

割り箸にイカのおつまみをつけた餌を用意して、カニのいる小さな穴の入り口に少しだけ差し込む。そのおいしそうなにおいに引き寄せられたカニが穴から出てくるのを待つのだが、警戒心の強いカニは、少しでも異変を感じると、すぐに穴に引っ込もうとしてしまう。

少しずつ少しずつ、餌をずらして外におびき寄せたり、引っ込まれたり、カニと人とが根比べをするのだ。
サンゴ礁はまるで小さな生き物の集合住宅、迷路のようで、カニも逃げたと思ったら違う穴からでてきたり、小さなウツボがでてきたりとサプライズがいっぱい。


海に出るときに気をつけていることは、毒のある生物やとってはいけない生物には触れないこと。まだ小さな貝やカニなどはとらないこと。

晩御飯のおかずの分だけとることである。

天然水族館を楽しんだあと、新鮮な海の恵をいただけるのも島暮らしならではの醍醐味だなと感じる。

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