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コロナワクチンにおける職域接種開催に至るまでの流れ①(2021年6月10日)

コロナワクチンが世に出て、日本でも接種可能になった時点で職域接種や学校での集団接種ができるだろうと考えていました。しかし、まさかこんなに無理ゲーで準備が大変だとは夢にも思っていませんでした😅
嘱託産業医の先生方は首がもげるんじゃないかってくらい首を縦に振って同意いただけると思います。まだ接種開始には至っていませんが、嘱託産業医が職域接種をするのにこれは大変だった、ここはこうやったらなんとかなる、それは無理っしょってことを書き連ねていきたいと思います。

職域接種とは

そもそも職域接種とは、ワクチン接種に関する地域の負担を軽減し、接種の加速化を図っていくため、企業や大学等において、職域(学校等を含む)単位でワクチンの接種を行うものです(厚労省HPより)。
職域接種の開始については下記の表を参照してください。

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これだけ見ると、すごく合理的で素晴らしい施策なんです。そう、この準備が簡単ならね・・・

職域接種の情報入手

5月に入って集団接種会場での接種も始まり、一気に接種数が増えました。そんな中、5月21日にモデルナワクチンが承認されました。さらに接種が多くの方に進む可能性を考えていました。

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これが5月27日、朝のツイートです。そして、その5日後である6月1日早朝のツイートがこちら↓

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ちょっと待って、6月1日早朝にこれで、21日から開始?3週間しかないけど、マジ?一気に目が覚めました😅
半年ほど前から産業医先には安全衛生委員会でワクチンについて、職場での接種の可能性について話してきたので、予想の範疇だったのですが、なにせ時間がない。ちゃんと厚労省や自治体がバックアップがあってのことだよね・・・と、この時はまだ淡い期待を持っていました。

事前に準備期

産業医先に6月1日の8時頃にメールをしました。そして先方から翌日の2日に面会して欲しいとの返信がありました。そこに添付してあった書類を見て愕然としました。

職域接種を想定しているのは単体もしくはグループで
・接種の実施に要する医療従事者等の人員・接種会場等を自前で準備できる企業等に限る
・接種対象は、接種する企業の関係者(社員等(正規・非正規、契約・派遣など雇用形態によらず、企業において本人確認が行える者)、及び社員の家族等

「医療従事者を自前で準備できる企業に限る」と言うことは、こちらで見つけて、引き連れて接種会場に行かないといけないってことですね。まぁ、ここはなんとかできるかな。
ん?見間違いでなければだけど、接種対象は接種する企業の関係者(〜、及び社員の家族等)となっているんですが・・・仮に1,800人のグループ従業員がいて、その関係者となると場合によっては5,000人越えるんじゃないかな・・・

そして一番驚いたのは、企業への事前アンケートの提出期限が、1次締切:6月3日AM中まで、2次締切:6月9日までと言うこと・・・
このメールの時点で6月1日16時・・・
明日(6月2日)のお昼の面会で結構なところまで詰めて決めないといけないじゃないか〜〜〜〜😱

いざ面会

先方の上役も含め3人でいらっしゃいました。こちらも事前に策を練って、事務方を連れて臨みました。
① 何人の接種を想定しているのか
② ワクチンの保管場所と接種会場をどうするのか
③  接種日程、時間はどうするのか
④  医師と看護師の報酬含めて接種にかかる費用をどうするのか
これくらいは1時間ほどで話を詰めないといけない。そうしないと翌日の午前までの事前アンケートに間に合わない。

① 何人の接種を想定しているのか
想定従業員が1,800人で従業員のみと言うことになりました。理由は先方も何人になるかすぐには把握できず対応ができないから。
② ワクチンの保管場所と接種会場をどうするのか
かなり大きな会議室があり、冷凍庫と冷蔵庫も設置できる場所も隣の部屋を使うことができることになりました。冷凍庫のある部屋は鍵付きとし、電源部分をロック付きのものに変更した上、ブレーカーが落ちないよう緊急電源の入るよう設定してもらえました。
③  接種日程、時間はどうするのか
8割くらいが接種希望するとして最大1,500人くらいで設定しました。1回250人に打って6日、300人に打って5日です。13時に調整始めても17時くらいまでが時間は限界です。そうなると、1日200人〜300人で6日(×2回接種)と言うところで双方納得しました。おまけに平日の接種が難しい人がいるため、土曜をセッティングして欲しいとの要望があり、月・水・土曜日の午後を使い、2週に分けて行うことになりました。
④  医師と看護師の確保と報酬含めて接種にかかる費用をどうするのか
これが一番大変ですね。予診票の確認は医師一人でなんとかなるかもしれないですが、打ち手が問題です。打ち手が多くいれば短時間で済みますが、その費用をどうするかはこの時点では未定だったんです。とりあえず毎回3人看護師を確保する仮定で話を進めました。国は医療者の報酬が決まらずに話進めろってどうよ?と言うのが本音でしたね。丸投げ感が半端ない😅

なんとか1時間ちょっとで会議は終わったのですが、そこからがまた大変でした。看護師は本当に集まるのか、接種の日は休みにするのかなど、次の問題が出てきましたが、報酬次第でなんとかなると踏んで、まずは事前調査アンケートを提出してもらいました。

決まらない報酬

6月8日に厚生労働省から、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する職域接種向け手引き(初版)」が出されました。
え?遅くね?

そしてこの中身がまた驚愕でした。

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・必要な人員を企業等が自ら確保すること(原則として市町村における予防接種体制に影響を与えないようにすること
ワクチンの接種を行うのは集合契約により市町村と委託契約を結んだ医療機関であるため、まず、企業等は医療機関を確保することが必要である。
え?まじ?結構な無理ゲーじゃね?

常勤先がある産業医は、企業とその常勤先とで契約を結んで、そこから看護師も派遣する契約にしないといけない感じですよね。平日日中って普通の勤務医にできるの?そしてそこの看護師を派遣できるの?一気に無理ゲー感が漂ってきました。
そして何より、報酬が明示されていない!
え?こんなことってあるの?

この手引き(初版)を見る限りでは、報酬は契約した医療機関から払われることになります。そもそも契約自体が市町村と医療機関で行われるから、その医療機関から医療者には報酬が支払われるんです。
え?言い値で良いの?こういうの本当に面倒くさい😅
医療者の募集をかけるときに、時給計算で働いた時間にするのか、日給で固定給にするのかで集まりやすさが変わってきます。

これ、専属産業医じゃないと無理じゃないの?
他にこのタイミングで嘱託産業医でやってる人いる?
とは言え、ここまで来たらやるしかないんですよね。何よりさっさとたくさんの人にワクチン接種して、さっさと集団免疫獲得したいのが原動力なんです😁

ここまでのまとめ

おそらく国は専属産業医のいる企業での職域接種を想定しているのでしょう。勤務医で嘱託産業医で1,000人以上の規模だと、仕事休んで、看護師を無理矢理でも取り込んでやらないと無理だと思います。僕みたいな嘱託産業医が他でもこのスピードでやってたら、アタオカだと思うくらいヤバ目の無理ゲーです。

さて、お気付きの方はいるでしょうか?ここまで情報開示から10日でやっているんですよ。誰に聞いてもやっていない、分からないことをこの短期間でできたことは自分でもよくやってると思います。

でもね、もう一つ大変なことに気づいたんです。

実際の接種まであと10日しかない😱

随時更新していきます。リアルタイムの方がいろいろ書けそうなので🐻


(続く)

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