カジノ紀行 第14回「AJPC予選突破」

 まず最初にご連絡ですが、しばらく休止します。ラスベガスには行ったので、今後はシンガポールとマカオに行く予定ですが、前回・前々回の記事に書いた通り、少し疲れました。当マガジンの月額制も解除し、一旦、休憩を挟みます。

 事情は他にもあるのですが、ひとつは9月末から生活圏が変わります。もうひとつは証券会社主催の講演会に講師として呼ばれました。場所は東京で、日時は2018年11月11日です。私は不動産と造船関係の会社を経営していますが、株や為替といった投資にも携わっています。今回はサラリーマン時代にゼロから立身した「経験談」と「手法」をお話して来る予定です。

http://www.sunward-t.co.jp/seminar/2018/11/11/

 テーマは《資産構築スキーム》です。「達成可能な目標を立てる」というところから始まり、私が用いている「勝率の高い戦略」をいくつか紹介する内容となっています。金融知識よりもスキームに比重を置いているので、一般的な話に落とし込むと「目標を立てる」→「達成可能なレベルに落とし込む」→「方法を見つける(運に頼らない)」→「堅実に実行する」といった趣旨になります。

 世の中には普遍的な上達方法があります。受験勉強ならそこそこの学校に入学でき、スポーツならセミプロくらいには上達できます。将棋や囲碁も同様です。あらゆる分野において、個々の能力差はあっても、歩むべき道を正当に突き進めば、誰でもある程度のところまでは到達できます。実のところ、これをポーカーに転用したのが当ブログです。まあ、運の要素も強いので面食らいますが。

 ところで、その「ある程度のところ」を突破するのは並大抵ではないですね。いわゆるプロフェッショナル、1流の世界です。たとえば資格試験をパスして資格を得たところで、活躍している人は一握りです。スポーツならオリンピックに出てメダルを獲得し、芸能人なら番組を持たせてもらい、作家ならベストセラーを連発、などなど。大変な道程の先には狭き門があり、実力や忍耐だけでは潜り抜けられません。これだけは夜も眠れぬほど悩み考えたところで、なかなか答えは出ないのです。

 私も携わるからには1流を指向します。投資では運用額を膨らませると損失時のリスクも甚大なのでブレーキを踏んでいますが、今回、講演の依頼は快く承りました。純粋に誰かのお役に立てればと考えています。講演会は無料なので、ご興味があるかたはどうぞいらして下さい。


 さて、ポーカーに関してです。こちらもいずれは世界的なトーナメントで成果を上げたいと考えています。ただ、どうしても運の要素に左右されるので、焦りは禁物ですね。シンガポールとマカオに行くのは、また長期休暇を設けてからにしますが、ちょうどラスベガスにいる頃、ポーカー仲間から日本国内で開催されるトーナメントを紹介して頂きました。AJPCです。

 AJPC(All Japan Poker Championship)は日本国内で毎年開催されており、国内でやっているトーナメントは他にもあるようなので、こういったものに参加してみようと思います。勿論、賞金もあります。以下はAJPCの賞金です。

 参加費が無料ですが、優勝すれば100万円と海外トーナメントの参加権利が貰えます。2位以下は賞金が激減するものの、同じく海外トーナメントの参加権利がつくので、こういうところから勝ち上がって取得していくのも良いですね。まさに実力で勝ち上がる「わらしべ長者」です。

 ただ、このAJPC、簡単には参加できないようでした。なんと予選があります。予選は日本各地で行われており、列挙すると北海道・東京・埼玉・静岡・名古屋・金沢・京都・大阪・兵庫・広島・香川・高知・福岡・沖縄となっています。本選にはこの予選に参加した「15人から1人だけ」が参加できるとのことです。この予選はインターネットで募集していたので、さっそく登録しました。

 たまに行っているアミューズメントのお店でも開催されていましたが、私の日程が合わなかったので、ちょっと遠出することにしました。難波駅は日本橋、少し外れのビルにある《大阪ディーラースクール》というところです。行ったのはラスベガスから帰国して1週間後の平日でした。

 開始時間の5分前に行くと、ビルの前で佇んでいる背広の若者がいたので「ポーカーですか?」と声を掛けました。「そうです」と言うので、一緒にエレベーターに乗り込み、指定された階層まで。

 部屋に着くと、スタッフと思われる人たちが愛想よく応対してくれました。参加者と思われる人たちもいましたが、人数は少なく、開始時刻に席に着いたのは7人でした。スタッフが「本選に行けるのは、この中から1人だけ」と言ったので、正直これは望み薄な感じがしました。

 席は6番でした。開始チップの3000点を受け取って、並べ直しました。並べ方は一列に積み上げる人や混ぜ混ぜにする人、常に数枚を手に持ってコイン遊びしている人などがいますが、私は点数別に右から順に並べます。枚数が少なくなった場合は、すぐにオールインできるように一列にします。

 参加者は40代が1人と30代が私を含めて3人、20代が3人という感じでした。あとから5人来て、合計12人でした。金髪のアメリカンも登場しましたが顔見知りの様子で、何人かは常連みたいでした。ディーラーと気さくに喋っている人もいて、私はアウェイ感があったものの、カードはしっかりシャッフルされており、配り方も正しかったので、妙なところはありません。常連の人が「俺はAJPCの予選、いつも初手オールインって決めてるんだよね。去年と一昨年もオールインしたし」と言い出したので、警戒していましたが、オールインは来ませんでした。

 最初はブラインド(強制ベッド)が25-50だったので、500点チップは温存して、25点チップと100点チップを投げていました。序盤は微増です。

 オールイン宣言をしていた40代の常連さんは、冷房が利いている中で半袖半ズボンという服装で、まだ7月末なのに真っ黒に焼けていました。ディーラーとの会話を聞いている限りではマニラに行っていたそうです。ポーカーの腕もなかなかで、他のプレイヤーがフォールドした際には「持っていたのはAQあたり?」と尋ね、「なんで分かったんですか?」というやりとりもしていました。

 ただこの人は非常にアグレッシブで、どんどんレイズしてくるので、私は苦手なタイプでした。とにかく私は彼のレイズにコールかフォールドの2択で、防戦に徹しました。特に序盤は様子見しつつ、他プレイヤーにフォールドを迫るような手は使わず、自分に手札が来るのを待ちました。そうして何回目かでKと10のクローバー揃いが来ました。フラッシュとストレートが狙えて、Kを拾ってもそこそこ強いハンドです。

 アグレッシブさんがレイズして私はコール。
 他は全員がフォールドしました。

 フロップが開かれると、K/4/10でした。Kと10のツーペアです。アグレッシブさんが先手だったので、案の定、レイズが飛んできました。ポッドの300点に対して600点が投げ込まれ、引きずり落としに来ています。KK、TT、44を持たれていると負けますが、そこまで強ければスロープレイでコールを誘うか、私にレイズさせようとするでしょう。おそらく私が勝っています。なので、まずはコール。

 ターンは2でした。マークはバラバラなのでフラッシュ性はありません。もう1枚来ても大丈夫でしょう。先手のアグレッシブさんはここで1500点を投入。先程、300点の中に600点ずつ入ったので、合計1500点、ポッドサイズのレイズですね。セオリーです。

 私の読みとしては、KQかKJ、ペアでも77以下、あるいはA4あたりだろうと考えました。リバーで覆る確率は10%以下だと考慮しつつ、万が一を考えてオールインしました。これはちょっと早まった気もしましたが、アグレッシブさんはあっさりフォールドしました。

 500点チップが倍になりました。ちなみにこのアグレッシブさん、全員がフォールドすると自分の手札を見せていたので、このとき私もツーペアを見せました。すると「いや、そんなの見せられても」と薄ら笑いをし、「なんかもうヤル気なくなったなあ。やっぱり参加費が無料だと軽いんだよなあ」と言っていました。なかなかのタチの悪さでしたが、彼の手元のチップは1000点あるかどうかで、その後は気軽にレイズもできなくなり、おとなしくなりました。

 ここで、先に話したアメリカンが来て、私とアグレッシブさんの間に座りました。他にも一人二人と途中参加してきました。テーブルはひとつですが満席になりました。

 アグレッシブさんが静かになったことで、今度は私がテーブルを支配しました。この支配状態では、常にトップペアを持っていることを装えます。たとえばフロップで7/5/Qと来たら、私はK9やA3を持っていたとしてもレイズ、するとQを持っていない人はフォールドしてくれます。誰かがコールしたとしても、もう一度レイズするとフォールドに追い込めます。実際にQを持たれていたとしてもAAやキッカー負けを危惧して降りてくれれば儲けものですね。

 そんなわけで、積み上がってきました。

 対戦相手は非常にタイトな人が多かったです。全くコールしない人や、レイズされたらあっさりフォールドする人ばかりでした。退場寸前まで行っていたアグレッシブさんも、私が参加しなかったところでオールインして、相手が「あげますよ」とフォールドしました。

 私も途中からは生き残りを優先し、85やK2のような手札は棄てて様子見していました。左隣りの人で30代前半くらいの人が、タイトかつアグレッシブで脅威でしたが、オールインで2連敗して退場となりました。帰り際に「まだポーカーを初めて半年です」と言っていたので、将来有望ですね。この他、金髪アメリカンも退場、20代のおとなしかった人も退場となりました。

 状況は私がトップで、アグレッシブさんがなんと2番手に復帰しました。他は、おとなしくフォールド連打していた20代が2人です(ひとりは建物に入るときに声を掛けた人)。時刻も1時間が経ち、スタッフが「途中参加は終了です」と言いました。やはり優勝した1人しか本選に行けません。

 と、ここで私に77が来ました。ポケットぺアとしてはあまり価値がありませんが、フロップで7が落ちてスリーカードとなれば、非常に強力です。例えば7/K/Aとなれば、A持ちは勝っていると思い込むでしょうし、AKがいれば全部取ることも可能でしょう。なのでアグレッシブさんがオールインして来なければ、絶対にコールでフロップを見に行きます。

 すると、今まで沈黙していたタイトプレーヤーがレイズ、もうひとりのタイトプレーヤーがコールしました。アグレッシブさんはフォールドして、「ここまで我慢してレイズされたら、降りるしかない」と言いました。この人、態度は良くないですが、様々なレクチャーもしており、人気者です。

 そうして私の番。確かにアグレッシブさんの言う通り、AAやKKが飛び出して来る可能性は大いにあります。結局は7が引けるかどうかの勝負ですね。これはおよそ12%です。手持ちのチップ数は私が3倍以上持っていたので、コールするのは安いです。ちょっと考えました。

 結果、オールインしました。2人はレイズとコールなので、まずAAやKK、AKではないと読みました。あるいはQQやJJでもオールインしているでしょう。そうなればAQかKJ、ペアでも99以下でしょう。それならオールインに対してフォールドしてくれる可能性もあるので、77はブラフ込みでオールインするのが得策です。コールされても勝機はあります。

 2人のアクションは、あっさりオールインコールでした。負ければ退場で構わないということですね。私が77を開示すると、ひとりがAJを、もうひとりがKJを開きました。まあ予想通りです。この時点でKJの勝利は望み薄になりました。そして――。

 フロップは5/6/10と来て、ターンに10、リバーに2と出ました。私の77が逃げ切りました。これはもう運です。AJでのオールインは私もラスベガスで幾度としましたが、3回に2回は痛い目を見ました。KJに到ってはオールインにコールできるハンドではないですね。ここに経験差が出た気がします。

 ということで、2人とも退場となり、私とアグレッシブさんが残りました。アグレッシブさんは序盤に飛びかけたので、劇的な復帰でした。「もうヤル気がなくなった」と姿勢を崩し、雑談しながら中盤までフォールドし続けていましたが、ブラインドが上がってきたところでオールイン。私はクズ手だったので降りましたが、他の人がコールし、AQで勝っていました。その後もレイズしてフォールドさせたり、フロップ4/9/Aからオールイン、全員がフォールドすると44を見せました。私が「それはスロープレイすればいいのに」と言ったら、「このほうがコールしてくれるかと思って」と。

 ともあれ、一騎打ち(ヘッズアップ)です。最初に配られた手札はAJでした。見れば、スペードのAとクローバーのJで、先程飛ばした人と全く同じです。アグレッシブさんが悠々とレイズしてきたので、まずはコール。

 フロップはJ/9/8と来ました。Jと9はスペードです。私はAJなので、Jが当たって、トップペアトップキッカーとなりましたが、これはストレートもフラッシュも有り得る危険なボードです。アグレッシブさんは再びレイズ、額は1500点。私はコール。

 ターンはクローバーの6でした。フラッシュ性は進展しませんでしたが、57持ちならストレート完成です。あるいはツーペアの可能性もあります。アグレッシブさんは間を置かずにレイズ、500点チップの山を押し出しました。ディーラーが数えて、4500点と宣言。

 私はJのペアのみなので、ここまでレイズされた場合は「相手の方が強い」と考えてフォールドするのがセオリーですが、私より強い手はAA、KK、QQなので、それなら初手でオールインしてきたはずだろうと思いました。なので、アグレッシブさんの手持ちはJKかJQ、あとはTTあたりが濃厚です。99か88でスリーカード、98でツーペアを引かれていた場合は仕方ないですが、ここで負けてもまだ私のほうが多いので、勝負に出ました。

 オールインすると、アグレッシブさんは「4000点はミスったんだよなあ」と言いながらオールインコール、手札を開示しました。ダイヤのJとハートの4でした。トップペアのJのみでリードしていたわけですね。4が出れば私の負け、それ以外なら勝ちです。

 リバーはスペードの5でした。
 ジャックのペア同士で、キッカーエースの私が勝ちました。
 優勝です。

 Congratulations!
 AJPC2018予選、参加者12人にて、突破!
 本選は9月15日です。

 いや、しかし本選が愉しみですね。日本各地から《15分の1》の予選を勝ち抜いた猛者たちが集まってくるわけですから、いったいどんな勝負になるやら。参加費を出せば出場できるトーナメントとは違うので、そう簡単には勝たせてもらえないでしょうね。勝負を焦らず、学んでくるつもりで挑もうと思います。


 さて。冒頭の通り、しばらく休止となります。AJPC本選の結果や他のトーナメントに参加した際には、また更新する予定です。ただ、講演会の件とは別に9月半ばから来年4月まで新しい仕事に携わるので、ぼちぼちになりそうです。

 以下、今回の《読者枠》は「Ⅰ.私の上達方法」と「Ⅱ.ライングループの案内」です。「Ⅰ.私の上達方法」はこれまで個人事業を始めとして投資や不動産、そして今はポーカーに注力していますが、《成果を得られるまでにやってきたこと》を体系的にお話します。これは現在作成中の本の草案でもあります。次に「ライングループの案内」はポーカーに興味のある人でやりとりしたいかた向けです。トーナメント情報の共有などが目的ですが、一緒にオンラインポーカーをするのも面白そうですね。WSOPを始めとして、海外遠征も予定しています。ということで、どうぞ宜しくお願い致します。 


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