裁判沙汰/民事調停とは何か

 2015年6月2日、私は不動産業において民事訴訟を起こしました。この記録はメールマガジンにてお送りしたものであり、経緯を取り纏めて戦略を練りつつ後から振り返ることができるようにと作成したものです。そして2016年8月現在、新たな訴訟問題を前にしています。世の中は常に食うか食われるかです。権利は主張しなくてはいけません。黙っていれば餌食になります。

 今回、この記事を公開することで誰かしらの役に立てるのではないかと考えました。内容は事実に基づいて「民事訴訟とは何か」の一例をご紹介したものです。脚色はありませんが、いくつか省略しています。私も潔癖ではありませんし、内容の中で不思議に思われる箇所もあると思います。それでも私がどのように立ち回り、そして切り崩し、あるいは切り返したかに関しては、大いに学んで頂けるものであるとも思います。


1.始まり

 事の始まりは私が大阪のミナミで3LDKのファミリーマンションを買ったことより端を発します。この部屋は元のオーナーが自己破産したことで競売落ちする寸前でした。土地と建物の価格を試算すると合算で約2,300万円となりましたが、売りは2,000万円で出されていた為、すぐに買い付けを出しました。その後、値下げ交渉をして、最終的に1,750万円で購入しました。この時点で約550万円の利益でした。この物件の想定家賃収入は年間140万円で、固定資産税およびローン返済などが併せて90万円、差し引きで年間50万円の粗利でした。


2.購入時の諸問題(以下、箇条書き)

・仲介業者より「物件の買い付けに特殊な技能と労力がかかった」という理由から仲介料とは別に報酬を要求された。

 ⇒私が儲けられるなら問題なし

・仲介業者がお抱えの司法書士を使役。報酬は私持ちで、説明もなく割高料金を支払わせられた。

 ⇒これは疑問点あり

・以上は、銀行での取引時に請求書を手渡しされた。さらに売り手側の仲介業者から「値下げの要望を売主に通した」という理由より報酬を請求された。

 ⇒理解不能


3.購入後の諸問題

・2013年11月に購入後、リフォームを依頼。当初、同年12月2週目までに終わるとの説明。

・12月2週目時点で未着手。この時点で私は再び工期を確認。年末までにとの返答。

・12月末でも未着手。仲介業者自身も正月休みに入り、音信不通。

・2014年1月になり、リフォーム業者が着手。1月2週目に終了。終わった日に仲介業者と共に確認の立ち合い。その場で6箇所の不手際を発見。早急に手直しを指示した。


4.その後

・2014年3月に入居者が決まる。

・1年後の2015年4月に退去。立ち合い時に部屋を確認すると、リフォームの手直しを命じた個所が直されていないことが発覚。


5.そして訴訟へ

・仲介業者に「リフォーム屋を呼べ」と怒りました。しかし「責任はウチにあります」の一点張りでリフォーム業者を呼ばないので、それならば代わりに賠償できるのか? と打診。

・仲介業者は「賠償できない」という回答。

・仲介業者の管理部より「このまま話し合っても平行線になるので、出るとこに出てもいい」との言葉。馴染みの担当者に「それでいいの?」と確認をしたら、「会社の方針なので仕方ないです」の返答。私からは「そうですか、分かりました」で打ち切り。


 以上が事の流れです。不手際に関しては叱りましたが、賠償に関しては打診のみで深追いはしていません。又、[2]の「過剰請求」においては、儲けさせて貰っているので問題視していませんでした。私を儲けさせてくれるならば、その分の報酬は払います。しかしながら、それだけの報酬を得ていながら[3]の不手際は赦せません。最後の最後で私に不利益を与えたならば、それまでの高額報酬も見合っていないわけです。

 私が次に向かったのは、法律事務所でした。無料相談で対応してくれたのは弁護士になったばかりの29歳と28歳の2人組でした。予定では30分のところを、2時間以上も話し込みました。この2人からはキン肉マンとテリーマンのような最強タッグ感があり、一緒に話していると愉しかったです。そして、彼らの見解は以下でした。

・リフォームの不手際に関しては、余程ひどいものでなくては賠償されない。

・入居者が出て行った理由を「部屋が汚かった」とするには、写真を見る限りでは立証不可能。

・金銭を回収するとすれば、法定超過の報酬額のほう。

・裁判所で訴訟するよりも、不動産会社が属している組合(あるいは協会)にクレームを出して調停に持ち込んだほうが手数料がかからなくて済む。

・むしろ裁判まで持ち込むと、負ける可能性のほうが高い。

 ということで、翌日、今度は仲介業者が属している組合へ行きました。このとき、私は勘違いして、最初に兵庫支部へ行きました。実際は大阪支部だったのです。ところが、ここで面白かったのは兵庫支部ではハキハキとした局員が懇切丁寧に対応してくれて、話がとんとん拍子に進んだのにも関わらず、後に「業者の本社が大阪にある」ということが分かって大阪支部へ行くと、そこの担当者は陰険で且つ不親切、度々話の腰を折ってくるのです。例えば、下のような物言いです。


私:「○○という業者は仲介料を法定以上に取得しています。返還を要望します」

局員:「どうしてそのとき言わなかったのですか?」

私:「は? まだ時効ではないですよね。言った言わないの話ではありませんが?」


私:「仲介料以外に○○と××の報酬額が発生しています。宅建法では、報酬は仲介料3%以外に取得してはいけないことになっています」

局員:「いや、仲介料以外に報酬を取る会社もありますよ」

私:「それを犯罪だと言っているんです。あのね、高速道路で法定速度を超えた車が白バイに捕まって、他の車も違反していますって言い逃れできますか?」


局員:「でも、どうして訊かなかったですか? 別途手数料や報酬をきちんと確認しなかったのが悪いのでは?」

私:「なんで俺に責任があるんだよ! 説明義務違反って犯罪、知らないんですか? あなた、いちいち茶々を入れるけれど、兵庫支部の○○さんは業者の非を認めていましたよ!」


 と、終始こんな感じでしたが、普段の仕事でも後ろ向きな物言いの人と相対しているので、対応には慣れていました。結局は法律もビジネス同様、人と人との関わり合いなわけですね。兵庫支部ではスムーズに終えた話を大阪支部では蒸し返されているだけなので、難なく説き伏せられました。兵庫支部に行かずに大阪支部にだけ行っていたら、ちょっと参っていたかもしれません。

 こうして苦情申し立てをして、その後すぐに相手の業者から連絡が来ました。会って話したいので来てくれと言われたので、丁重にお断りしました。この時は私も頭に血が昇っており、不用意な言葉を発する可能性もありました。既に裁判沙汰の一歩手前、下手を打てば相手にカードを差し出すことにもなりかねません。つまり、単なる言葉のつもりで発したものが恫喝・恐喝の類となり、犯罪行為になるのです。そうなれば私は被害者からたちまち加害者になります。迂闊さは命取り。一歩も引けないけども、一歩も踏み込んではいけない。そんな状況でした。

 ちなみに、法律の格言で「権利の上に眠る者は保護に値せず」という言葉があります。例えば会社員をしていて、残業をしているのに残業代が支払われないとします。ここで「残業代を申請したけど断られた」のか、それとも「残業代は貰えないと分かり切っているから初めから申請していない」のかで、大きく変わります。というのは、前者は法律によって助けられますが、後者は救われません。何故なら権利を主張せずに黙っているからです。

 今回は、私は仲介業者の権利を否定しました。彼らが得た報酬は法律違反であり、不当のものであるので返還すべし、と。こうして1回目の調停の日を迎えるわけですが、その日、私はこの大阪支部が如何に業者側に位置しているかを痛感することになります。次回へ続きます。

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 さて、前回に引き続いて調停のお話です。

1-5.前回の要約

[1] 大阪で優良物件が持主の事業失敗で売り出されており、安値で購入した。

[2] その際、法定外の仲介手数料が発生した。

[3] リフォームに予定より1ヶ月遅れの着工となった。

[4] リフォームに粗があったので指摘した。

[5] 入居者が決まったけれど、1年後に退室。

[6] 立ち合い時にリフォームの指摘箇所が未着手であることが発覚した。

[7] 不動産会社およびリフォーム業者は謝罪するものの「賠償できない」の返答。

[8] そして訴訟へ。

6.不動産会社からの脅し

 私が相手業者の所属している協会に苦情申し立てをしてから少しして、電話がありました。担当者から「社長が話したいと言っているので来て欲しい」と言われ、私はこれをお断り。「ならお宅へ訪問してもいいですか」という言葉は最後までなく、一連の不手際に関しても私の言葉に対して取り繕うのみでした。仮に私だったら、先手で菓子折りを持参しての謝罪をしただろうと思います。結果論ですが、10万円や20万円程度を渡していれば、その10倍以上もの和解金など必要なかったわけです。ましてや菓子折りなら1万円もしません。言わば「損切りの遅さ」です。さらに、その対応の不適切さに加えて、追い打ちがありました。それは以下のような電話です。

業者「眞壁さん、このまま裁判沙汰になったら大変なことなりますよ。それに不動産の売買もできなくなりますよ。いいんですか?」

私「それはお為ごかしでしょう」

業者「え?」(「お為ごかし」の意味が分からない)

私「お互い痛し痒しの面がある中で、本当に困るのはどちらですか?」

業者「…………」

私「そういうことなんで」

 謝罪もなく、困るのはあなただから辞めておけ、ということでした。あるいは負けるわけがないと思い込んでいるわけです。これには驚きです。子供騙しにも程がありますね。要は、舐めている。金を毟れるだけ毟って、あとは黙らせておく。それで黙っている客も沢山いるのでしょう。でも私は違います。絶対に赦しません。


7.民事調停の確定

 6月2日に苦情申し立てをして、6月末に協会が「受け入れ」ました。この「受け入れ」が断られれば、自分で裁判所に行く必要があります。今回は受領されたので、協会の調停員が立ち合いの元、話し合いが行われます。ただ、協会の担当者が前回のお話した通りのかたなので、詳しい説明もなく、どんな話し合いをするのか分かりませんでした。こればかりは本屋を探しても見つかりません。とにかく準備できるものは準備し尽くし、練習できることは練習しておくしかありません。

 調停の候補日の第1回目は7月中旬でした。その日、私は出張が決まっており、客先の役員と会食の予定まで組んでいたので、断りました。次の候補日は9月となっており、承諾。約2ヶ月の準備期間が与えられたので、とにかく宅地建物取引業法を隅々まで勉強し、その中でも今回の件に関わる内容を頭に詰め込みました。又、説明し易いように状況の成り行きを最初から最後まで記載した一覧表を作成し、補足説明と相手側の法律違反、そして損金を纏めました。


8.調停1回目

 こうして1回目の調停の日を迎えました。指定された時刻に協会へ行くと、別室に移されました。何もない会議室で、耳を澄ませると隣の会議室で話し声が微かに聞こえます。30分ほど待たされて、お声がかかりました。

 案内された部屋に入ると、ロの字で組まれたテーブルに4人/3人/4人と合計11人の調停員が座っており、私はスクリーンを背にした席に促されました。隣にはもう一席あり、空席だったので、ここに相手業者の社長か担当者が来るのだろうと思いました。しかし後で分かりましたが、私の話を聞いてから、私は退室し、今度は相手業者の話を聞く、という交代制でした。

 まずは挨拶をして、簡単に自己紹介をすると、司会進行役の調停員より「では状況の説明をして下さい」と促されました。私は用意してきた一覧表を係りの人に渡して、コピーを配ってもらいました。あとは順を追って説明しました。そして私は、この大阪支部の調停員たちが如何に業者側に位置しているかを知りました。以下のような問答となりました。


調停員1:「お話を聞く限り、あなたは自分には全く非はないということですか?」

私:「どういう意味ですか? それは何を指して仰られているのですか?」

調停員1:「全部です」

私:「お話させて頂いた通りですが」

調停員1:「いや、だから、100%、相手の業者が悪いと言い切るんですか?」

私:「どうして私が、相手業者が悪くないというスタンスでお話する必要があるのですか?」


調停員2:「損害って書いているけど、xxx万円も儲けたわけでしょ。あなたは儲けたにも関わらず、損害と言うんですか?」

私:「事前説明がなく、勝手に報酬を取られれば、損害ですよね」

調停員2:「何故ですか? あなたは儲けたわけです。報酬は正当な対価でしょ」

私:「事前説明があれば、私は正当な対価をお支払いしますよ。正当ではないから言っているんです」

調停員3:「事前説明、事前説明、と言うけど、あなたは確認したんですか? 報酬はかかりますか、と」

私:「どうして知りもしないことを確認する責任があるんですか? 業者には説明義務があるはずです」

調停員3:「説明義務は宅地建物にまつわる話であって、報酬に関してはそんな法律はありません」

私:「では商売道徳上の義務ですね。しかし報酬に関しての法律ならば、仲介料は3%以内と決まっているはずです」

調停員3:「今回のこの報酬は仲介料とは言い切れない部分もあります。銀行や売主への交渉をしているのだから」

私:「それはおかしい。入るはずです。判例がありますよ。参考でお持ちしていますのでご覧ください」


調停員4:「今回の件が調停で終わらなかった場合はどうしますか?」

私:「裁判ですね」

調停員4:「その場合、この業者さんは、今後、銀行と取引ができなくなります。あなた一人の問題で、この会社が業務停止になる。そのことについて考えたことはありますか?」

私:「ありません」

調停員4:「…………」

私:「…………」

調停員4:「それで終わりですか?」

私:「はい」(この人、業者と友達か何かかな?)


調停員4:「しかし事前説明がなかったというけれど、本当になかったの? 個人的な意見ですが、あったと思うんですよね」

私:「なかったから、ないと申し上げています」

調停員4:「お忘れになられただけでは?」

私:「相手が忘れないように契約するのがビジネスの基本です」

調停員5:「証拠はありますか? ない理由を出して貰わないと」

私:「ないものはありません。売買時の契約書を見てもどこにも書かれていないわけです」

調停員5:「いや、だから証拠ですよ。書いていませんでしたって証拠」

私:「むしろ、あるという証拠を出させるべきでは? 業者があると主張するならば、あるという証拠を出してもらうのが筋です」

調停員5:「そんな筋はありませんよ」

私:「は? とぼけた顔で何を言っているんですか?」

調停員5:「私が言いたいのは、一度は納得して払った報酬を何故今になって返せと言い出したのかということです」

私:「話をすり替えないで下さい。それに納得して払ったわけではありません。事前説明もなく、土壇場で切り出されて、判断の余地なく払ってしまったのです」

調停員5:「でも払ったものは払ったんじゃないですか」

私:「同じことを2度も3度も言わせるなよ! まず、まだ時効ではない。こちらには返還要求する権利があります」

 調停員5が他の調停員に「そうなの?」と尋ねました。沈黙が流れて、司会進行役が「時間が来たので一回ここで終わります」と切り出し、続けて「相手業者さんが来ているので、眞壁さんと交代して頂いて、今度は業者さんの言い分を聞きます」と言って、私は退場、最初に入った何もない会議室へ。ドアが開く音がして、足音、そして閉まる音。話し声。30分ほど経ってからドアが開く音がして、足音が去っていく。そして係員が私を呼んで、再び調停員たちの元へ。

司会進行役:「相手業者さんとの話が終わりました。今回はこれで以上となります。何か質問事項はありますか?」

私:「ありません」

司会進行役:「では第1回はこれで終わります。第2回の日程はまたご連絡します」


9.調停2回目

 10月末に連絡あり、前回から2ヶ月後の11月上旬に2回目の調停がおこなわれました。内容は第1回目と同じ要領で、また調停員たちと言い合いをしました。違った点と言えば、前回と面々が半数ほど異なっていることでした。特に、私に突っかかってきた人たちがいなくなっており、30代前半と見られる若い調停員が司会進行の役目を与えられている様子でした。ここでのやりとりは以下となります。


調停員A(前にいなかった人):「お手数ですが、改めてご説明して頂けますか?」

私:「――――」(説明)

調停員A:「前回に配って頂いた資料は私も目を通しています。その後のことです」

私:「その後?」

調停員A:「第1回目の調停で話し合って、変わった点です」

私:「何も変わっていませんが? それに前回の調停を受けて考えを改めろという指示はありませんでしたし、そもそも和解金の譲歩を私から提案するんですか?」

調停員A:「当たり前でしょう。いったい何を話し合ったんですか」

私:「何を話し合ったかは私ではなく他の方に事前に聞いておいて下さいよ」

調停員A:「しかし常識でしょ」

私:「私が和解金を決めるのが常識なんですか?」

調停員A:「…………」(咳払い)

私:「和解金の譲歩はありません。応じなければ裁判です」

調停員B(前回いた人):「いやいや、あなた、裁判まで行ったらとんでもないことになりますよ。相手さんの業者だって潰れる可能性がある。責任が取れるんですか?」

調停員C:「潰れてもいいってことでしょ。この人には関係ないんだから。そういう話はしても仕方ないですよ」


調停員D(50代):「あと、司法書士の報酬を返還要求されてますが、業者は関係ないので、司法書士に連絡しなきゃダメです」

私(30代):「ここでの問題は、私の意志を無視して勝手に雇って、かつ高額な報酬を取得したことです。相場の倍以上です」

調停員D(50代):「倍以上というのは、何か証拠があるんですか?」

私(30代):「相場は3万円から10万円くらいでしょ」

調停員D(50代):「そうなんですか? 私は知りません」(わざとらしい顔)

私(30代):「あなたが何も知らないだけでは?」

調停員E(70代):「いえね、昔はあったんですよ。司法書士に報酬の取り決めが。でも今はいろいろあって自由にしようということでなくなった。その取り決めで見ると確かに高いとも言えなくもない。だいたい半分くらいかなあ」

調停員B(40代):「いや、このかたが言っているのは、法手続きは自分でできるから全部返せということですよ」

調停員D(50代):「銀行が認めないよ。司法書士を通さないと融資なんて降りない」

私(30代):「融資は先に認可されていました。司法書士を通す必要があるかは銀行に確認済みです。自分でできるなら不要という――」

調停員D(50代):「無理無理。あのね、どうやって――」

私(30代):「おい!」

調停員D(50代):「……っ」(おどろいて引き攣った顔)

私(30代):「私が喋ってるだろ! あなたは今、銀行が作ってもいない規則を勝手にでっち上げたんだ! 話をすり替えようとするな!」

調停員D(50代):「…………」(私を睨み付けている)

調停員E(70代):「まあこれは相手業者に非もあるな。司法書士を使ったのは確かなのだから、正当な報酬に直して返還するか、業者が認めれば全額返還になるが」


調停員B:「最後にお聞きしますが、相手業者が認めなければ、本当に裁判をするんですか? 時間もかかるし、費用もかかる。それに、あなた自身にも――」

私:「裁判をするかどうかは、業者の回答次第で考えます」

調停員B:「……そうですか。分かりました」

私:「宜しくお願い致します」(ほぼ確実に業者の社長とお友達だろうなあ)

 以上の他にも色々と言い合いになりましたが、結局、私はある程度の譲歩はしつつも、和解金の額面に関しては一切訂正なしとなりました。そして前回通り、私は退室して、交代で業者が呼ばれる流れになりました。30分ほどでまた声がかかりました。


司会進行役:「相手業者さんに話を伝えましたら、すべてご返還するということでした。ただし、売買時の報酬額と司法書士の報酬までです。リフォーム関係の機会損失に関しては我々も立ち入れない内容なので、この金額は除外としています。不服であれば、この調停はなかったことにして、裁判をなさって下さい。いかがしますか?」

調停員B:「不動産の投資なので、儲かるときもあれば損するときもある。理解されていたはずですよね。十分すぎる程だと思いますよ」

私:「そうですね。裁判は致しません。私にも至らない部分がありましたので、今回の結果で十分です。謹んで受け取らせて頂きます」

 その後、和解金の受取方法などを打ち合わせして、終了しました。翌週に書面を取り交わし、和解金を受け取り、全て終わりました。6月頭から11月末まで足掛け6ヵ月、つまり半年間に及ぶ交渉が終わったのです。


10.終わりに

 振り返ってみれば、調停員は味方と敵という役割に分かれていたのではないかとも思います。彼らの中には法律や商売道徳を無視して、所謂「いちゃもん」も多かったのですが、これはやはり大阪という土地柄でしょう。私は、元々は神戸人で、大学は京都、社会人としては大阪に属しています。なので、商売柄こういった人たちとの交渉も経験があります。今回の件に関しては、法律の知識や裏取りより社会人として培った交渉術が役に立ちました。行儀は悪いですが「相手の言葉を遮って喋らせない」「話をすり替えさせない」「同じ話をさせない」などは効果的です。調停員を敵に回すと勝機がなくなる気もしましたが、言い分を否定されてしまえばおしまいです。貫き通すしかありません。

 準備は万端、結果も良し。ということで、2015年の大仕事は終わりました。長々とお話しましたが、興味のあるかたもいらっしゃったので全部書きました。今年もあと残り僅かです。相場もクリスマス・ラリーが始まりそうですが、最後まで頑張りましょう。

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 以上です。この民事調停では、当初は「リフォーム代でのいざこざ」から始まりました。相手の業者もリフォームに関しての責任は問われないと認識した上での「出るとこに出てもいい」という啖呵でした。

 そして私のほうは、リフォームを訴訟の中心に持ってきても分が悪いことは法律相談所で発覚したので、論点を「追加報酬に関して」にずらしました。調停の結果、やはりリフォーム代は返還されず、しかし追加報酬は全額返還されました。仕掛け通りということです。

 この業者とはそれまで懇意にしていましたが、調停後は一切連絡を取っていません。仲の良かった担当者ともそれっきりですが、彼は会社を辞めて独立したとも聞いています。

 世の中、何もかもがハッピーエンドで終わることは決してありません。結局は勝つか負けるかの世界です。win-loseが常であり、win-winの裏にはlose-loseがいます。いつ戦いになるかは分かりません。そして戦いになったならば勝つしかありません。私はそのように考えています。


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