異業種交流会の無意味と有意義の境目

僕自身、20代の後半から30代前半の頃には、あちこちの異業種交流会に出かけていった。流行っていたのもあるかな。どういう人が主催していたのかも分かっていなかったけれど、ありとあらゆる人が集まっていて活気がある。次から次へと名刺交換をして、手元に100枚以上の名刺が集まったこともある。その頃の僕は、なんとなく満足感があった。そう、無意味な満足感。

その異業種交流会からしばらく経つと、そこで出会った人から電話がかかってくる。当時はメールでアポ取りなんてのはなくて、電話で。「大木さん、◯◯保険の△△さんから」と言われ、そんな会社は知らないし、と思いながら電話に出る。相手は「ご挨拶に」という、アメリカでもっとも嫌われる表敬訪問(笑)をしに来る。とは言っても保険屋さんだから、保険を売り込みに来るわけだけど。あの頃は、たぶん100人くらいの保険屋さんから連絡が来たんじゃないかな。その他にマンション、金融商品、ありとあらゆる人たちが売り込みに来た。

実はそれ以外にも、大手商社の課長さんとか、アパレル関連の人とも名刺交換をしたのだが、その人たちから連絡が来ることはなかった。こちらは、名刺をいただいただけ。記念切手のような存在。

今から振り返ると当たり前のことなのだが、僕に連絡をする「意味」を見出だせなければ、当然連絡をしてくれるはずがない。「お昼でもご一緒に」なんて連絡をもらいたければ、こちらがバリューを提示しなくてはならないのだ。仕事にしても、遊ぶにしても、「この人に連絡すると良さそう」「面白いことになりそう」と思わせるものがないなら、連絡をくれるはずがないわけだ。当時はそれに気付かなかった。ただ、高い会費を払ってそういう場に積極的に出かけていく自分に酔っていただけ。アホですわな。

現在は、本当の意味での「異業種交流会」に出かけることはないけれど、やはり他業界の人に出会うのも好きだし、IT業界の人たちに出会うことも楽しい。だからこそ、そこで自分が何を提供できるのかを考え続ける。目の前にいること人にもう一度出会うためにどうすべきか、だ。

もちろん、もう一度会いたいと思わなければ考える必要もないが、もう一度会いたい、この人と一緒に仕事してみたい、と考えるときは、脳みそが溶け出しそうなくらい(ウソ)、少しは考える。話している間に答えが出ない場合でも、手元のiPhoneでEvernoteにメモっておいて後で連絡する。

僕は、人の出会いには双方にメリットがあるべきだ、と考えている。メリットというと金銭のイメージがあるが、それは必ずしも金銭でなくてもいい。「へえ、面白い考え方をする人だな」とか「そういう視点があったのか」という気付きを提供するだけでもいい。それがイメージ出来ない場合は、紹介してくれと言われても絶対紹介しない。片方にしかメリットがないのは、芸能人の追っかけに似ているからだ。「カッコいいから見てみたい」「一緒に写真に写って欲しい。友達に自慢したいから」というのと同じだ。ただ、芸能人にとってそれはファンサービスになるわけだが、一般の我々には、それすらない。

若干脱線したが、異業種交流会や他社の人と出会う場所に出かける場合は、相手にGiveする準備をしていくことだと思うし、普段からそういうことを考えておくべきだと思う。でないと、擦り寄ってくる相手は「情報交換」なんてウソをついて、相手が欲しい情報だけ持っていく人になるからだ。
(以下余白)

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