理想の管理職を議論する意味

ビジネスメディア誠に、おもしろい対称的な記事があった。

「横暴×マメ」こそ最強のリーダー

部下が指示を理解してくれないのは、あなたの能力不足かも?

最初の記事は、リーダーとしてこうするといいよ、と示唆するもので、後者は管理職はこれがいけない、というNGを指摘するもの。後者はフリーランスの方が書いているので机上の話なので多少間引きして認識すべきだろう。

僕が知っている「リーダー」には、例えば元トリンプ・インターナショナルで19期連続で増収増益を達成したという驚異的な実績を残してこられた吉越浩一郎さん。僕と話してくださるときには、とても温和な感じだが、トリンプ・インターナショナルにいた方の話ではとても怖かったそうだ。

朝会議が有名なトリンプ・インターナショナルでは、2時間の間に50前後の判断を求められる会議が行なわれる。一つ2-3分で判断し、判断材料の足りないものは却下され提出し直し。そんなスピーディーな判断をするのだから、プロジェクタにPCを差し替えて、なんてまどろっこしいことは出来ないから、(当時は)全部紙で打ち出してとっとと判断していく。緊張感のある会議だったことは容易に想像できるし、指摘を受けた提案者は生きた心地がしなかったというのも分かる。

僕が退職した今でも尊敬している孫正義社長も、一緒に仕事をすると怖い人だ。子供のように怒鳴りまくることもあるし、そのくせ細かいところをきちんと見ているのでこれまた怖い。ExcelをA3で打ち出した資料を眺めて1分で指摘される。こっちは徹夜で作ったにも関わらず、だ。

しかし、お二人ともリーダーとしては極めて優秀だというのは、世間の多くの人が認めているのではないだろうか。

一方で、「出過ぎないリーダー」という方もいる。「みんなが助けてくれるんですよ」と公言するリーダーもいる。どちらかが良くて、どちらかがダメなリーダーという話ではないはずだ。リーダー、管理職の最低限の責務は、「利益を上げて社員の給与を支払うこと」であるはずだ。社員のモチベーションとか、社会貢献とかはそのずっと後の話で、それが実現できないのにこちらを考えるヒマなどない。そして、それを実行するうえで、どんなスタイルだったとしても、特に外野が四の五の言う話ではないと思う。ま、居酒屋の愚痴は別として。(これも個人的に嫌いだけど、本人がそれでスッキリするなら)

とかく日本の管理職は板挟みで、とてもツライ思いをしている人が多い。特に最近は、360度評価などがあって、そのトレーニングを受けているわけでもないから、部下を叱ることすら冷や冷やしていたり。自分の信念とは別に、突拍子もない指示が来たりして、それを下に落としこむのに四苦八苦している人たちの多いこと。

また、多くの管理職の人たちは管理職の素養があるから管理職になったわけでなく、営業とか技術とか、それぞれの分野で「プレーヤー」として実績を残したから、本人の意志と関係なく「管理職」に抜擢されたに過ぎない。管理職にならないと収入が増える道もないし。

そうやって押し上げておいて、ある日こういう記事で叩かれるという、割りのわるーい存在なのだ。そうやって考えると、上司の愚痴を言っていた会社員の方々も、少しは思いやる気持ちも出てくる。なんてこたーないか。だよね。
(以下余白)

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