夜中の散歩

とある夏の日の話。

私は昼寝のし過ぎで夜に寝付くことができず、ダラダラとベッドの上でYouTubeを見ていた。

(さすがに寝なきゃだよなー)

そう思いながらもただただ時間だけが過ぎていき夜中の3時を迎えた。



ふと友人が
「夜中の散歩ってめっちゃ気持ち良いよ」
と言っていたことを思い出した。

私は、ウォークマンとBluetoothイヤホンを手に家を出た。

イヤホンを耳に付け、音漏れするくらいの音量で音楽を流した。
いつもは迷惑になるだろうからそんなことはしないのだが、今は夜中の3時。
誰も見ちゃいない。

思わずノリに乗り始め体が揺れ出してしまったが、今は夜中の3時。
しかし誰も見ちゃいない。

体の揺れがどんどん大きくなり軽くステップを踏み始めてしまったが、今は夜中の3時。
きっと誰も見ちゃいない。

曲が良いところになり私は思いっきりターンを決めたが、今は夜中の3時。
どうせ誰も見ちゃいない…


と思っていたのだが、ターンした瞬間に後ろに女の子が立っていたのが見えた。


(ん?今女の子いた?)
そう思い再びゆっくり後ろを見るとそこには、迷惑そうな顔をした女の子が立っていた。

私はゆっくりと前を向き、音量を下げ、早歩きで家に向かって歩き出した。

(は、は、は、恥ずかしっ!エグ恥ずかし!!!)

恥ずかしさからいつもの5倍くらいの速さの早歩きで歩いた。



家に着き急いで玄関に入り鍵を閉めイヤホンを手に取った。
「恥ずかし!!嫌なとこ見られた―。思わずはしゃいだとこ子供に見られたー!」

そこで気づいた。
今は夜中の3時である。
夜中の3時に女の子が一人で道に立っているわけがない。
早歩きのせいで少し汗をかいていたが、寒気がすると同時に引いていった。

「ま、まさかな…おれ霊感とか無いし…」
そう言って自分を落ち着かせようとしていたが、後ろで嫌な気配を感じて考えが変わった。

(嘘だろ…幽霊見ちゃった?しかも今後ろにいないか!?)

興味と恐怖で感情がぐちゃぐちゃにされる中、体は後ろを振り向き始めていた。

(見たい!見たくない!見たい!見たくない!)

後ろが見え始める前に目を閉じてしまった。

(ヤバっ!目閉じちゃったぁ…どうする?目開く?いや怖い!でも…)

思い切って目を開くことにした私は、ガッと目を見開いた。



私はベッドの上に寝転がっていた。


(あれ?夢?)

ゆっくりと起き上がり、辺りを見渡すといつもと変わらず自分の部屋が広がっていた。
「よかったー!夢か!」
私は安心から思いっきり体を伸ばした。
「ん?」
違和感から右手を見ると、手に跡が付くほど力強くウォークマンとイヤホンを握りしめていた。

#夜中の散歩
#心霊体験
#お初にお目にかかる
#夜中一人の全能感
#どっちだったんだろ
#死ぬほど恥ずかしかった

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