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「ウルトラマン」が遺した二つの「発明」

「シン・ウルトラマン」の公開が迫ってきました。怪獣や宇宙人が続々登場する事が告知され、どのようなストーリーになるのか楽しみです。今日はその原点であるTVドラマとしての「ウルトラマン」について振り返ることにしましょう。

「ウルトラQ(1966年1月~)」は製作費が予算を大幅に超過したため、放映元のTBSは番組を海外に輸出して赤字を補填しようとします。しかし「欧米ではカラーテレビが当たり前なのに、今さら白黒ではセールスしづらい」と輸出部からクレームが入り、仕切り直してカラーの新作を制作する運びになりました。それが「ウルトラマン(1966年7月~)」です。

「ウルトラマン」の企画に当たっては、前作「ウルトラQ」の構造的な問題点が徹底的に洗い出されました。

たとえば「ウルトラQ」の主人公は民間航空のパイロットで、新聞社の女性カメラマンと共にセスナ機で怪事件の現場へ飛ぶのがフォーマットですが、滑走路が無ければ降りることが出来ず、上空をグルッと回って戻って来るだけです。(途中でヘリコプターに変更され、現地に降りて取材が出来るようになる)

また、携帯電話の無かった時代ですから、怪獣に遭遇すると黒電話(固定電話)を借りられるところまで引き返して、警察や自衛隊に通報したり、東京の編集長や大学教授(一の谷博士)に報告する、という行動を取ります。(飛行機の無線で通報を要請する描写もある)

「飛行機に乗るという展開が本当に必要か?無くても話が成立するなら尺の無駄使いになる」「民間人の主人公が怪事件に介入する理由を各話ごとに考えなければいけない」というスタッフの指摘から、「ウルトラマン」では怪獣退治の専門家チームとして「科学特捜隊」が設定され、一般市民からも存在が認知されている、という世界観が生まれました。科学特捜隊は自分達で現地調査を行い、怪獣が出現すれば武器を持って対抗し、隊員の一人である主人公がウルトラマンに変身する、というストーリーの流れが澱みなく進行して、特撮シーンの尺が確保できるという体制が整備されたのです。

この設定を支えるために考案された二つのアイデアがあります。一つはヘリコプターのようにどこにでも着陸できる垂直離着陸機( Vertical Take-Off and Landing aircraft:VTOL機)、すなわち「ジェットビートル」、もう一つは「流星バッチの通信機」です。

日本のTV番組における「ヒーローの乗り物」は、特撮・アニメを問わず垂直離着陸が当たり前で、変身アイテム(たとえば戦隊ヒーローのブレスレット)には通信機能を備えた物があります。近年では携帯電話そのものをアイテムとする作品も少なくありません。TVドラマの制作が手探りだった時代、一日の上映会数によって上映時間を調整する劇場映画と違い、毎週30分のTV作品では、ストーリーをスピードアップして必要な情報を過不足なく与えられた尺に収める工夫が要求されました。「ウルトラマン」のスタッフが考案した「二大発明」が、関係者に多大な影響を与えたことは間違いないでしょう。

余談ですが、口絵の流星バッチは円谷ショップで購入しました。固定が甘いのでバッチとして使うには無理がありそうです。ネジ式に改良してもらえないかなぁと思っています。

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