見出し画像

楽しくなくても、大丈夫。

「大学、楽しくないねんな」と次男。

え!? 入学したばかりで、まだ授業がはじまって1カ月も経ってないのに、「めっちゃ楽しい!」なんて、なるわけないやん。きみは、中学に入学したときも、高校に入学したときも、高校でクラス替えがあったときも、「前のほうがよかった」「楽しくないねん」って言ってたでしょ。

でも、中学を卒業するときも、高校を卒業するときも、「楽しかった〜」「この学校で、このクラスでよかった〜」って言ってたやん。

という話をしたら、「そっか」と納得したようで。笑

新しい環境って、なじむまでに時間がかかるものだ。それは誰であっても。子どもでも、おとなだってそうだと思う。

特に私は「超」がつくぐらいの人見知り。学生時代は次男と同じように、環境が変わるたびに、「中学のころに戻りたい」とか「前のクラスがよかった」とかぐずぐず思っていたものだ。

高校時代、進路を決めるときに、両親は「どうしたいのか」とは聞いてくれなかった。就職するものと決めつけられていて、私も「大学に行きたい」「専門学校に行きたい」という希望を口にすることなく、一般企業に就職。

そんなこともあって、当時の私には、「社会人1年生」という晴れやかな気持ちは全くなかった。友達の多くが大学や短大、専門学校に進学する中、私は3月から研修。4月には配属先が決まって本格的に仕事がはじまった。

こんなはずじゃなかった。
こんな仕事がやりたいんじゃない。

仕事を終えて家に帰る途中。駅に向かう歩道橋の階段で、涙があふれてきたことをよく覚えている。まだ就職して1週間とか10日ぐらいのころだ。

高校のころがよかった。つい、1カ月前まで通っていたあの学校に戻りたい、と泣いた。

今思えば、まだ18歳だったもんね。最初、配属先には同期はいなくて、年上の人ばかり。厳しいことも言われるし、気軽に話せる人もいない。そりゃあ、学生時代に戻りたくなる。

でも、どうしようもなく辛かったのは最初の3カ月間ぐらい。そのうち同期も配属されてきて、同期だけでご飯を食べに行ったり、遊びに行ったりするようになった。また、職場の先輩や取引先も含めて旅行に行ったこともいい思い出。仕事そのものは好きにはなれなかったけど、毎日それなりに楽しく過ごせるようになった。

就職したばかりのころは、大げさではなく「絶望的」な気持ちだったけれど、今思えば「前のクラスに戻りたい」レベルのものだったのかも知れない。

もしも、あのころの自分に伝えることができるなら、「今は楽しくなくても、大丈夫」「ここを、懐かしく思い出すようなときがくる」と言ってあげたい。そして今、慣れない環境に疲れ、「あのころに戻りたい」と思っている人にも。

そう、次男にもね。

「こんなはずじゃなかった」と涙した私も、その後いくつもの職場を経て、今は個人事業主。そこそこのやり甲斐も感じながら、文章を書く仕事をしている。シングルマザーとして子どもも育ててきた。新入社員だった私には想像もできなかったことだ。我ながら強くなったし、思いきり年もとりました。笑

「今、居心地の悪い場所」も、きっと「戻りたい場所」「懐かしい場所」になる。がんばれ、新社会人。がんばれ、わが息子。今は楽しくなくても、全然大丈夫。