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藤沢久美の未分化な好奇心

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「藤沢さんの仕事って何ですか?」と質問されることが多いのですが、正直、自分でも、ひとことで答えられません。好奇心が導くままに、様々な仕事と出会う日々を、つれずれに綴っていきます。
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#映画

漫画『火の鳥』と映画『君たちはどう生きるのか』

この夏の三連休に久しぶりに手塚治虫氏の『火の鳥』を読み返しました。改めてその洞察の凄さに感動すると同時に、最近見た映画『君たちはどう生きるのか』とも共通するものを感じました。映画を見ていない人に悪いので、ネタバレにならない程度に、映画のことにも触れます。。 マルチバースと存在しない時間 『火の鳥』は、過去と未来が行ったり来たりしながら16巻が進むのですが、その振幅が結局マルチバースを彷彿とさせてきます。繰り返し、火の鳥が「この世界には時間が存在しない」と言うのだけど、この1

高倉健主演「夜叉」

大学時代に観た映画の一つに、高倉健主演の「夜叉」という映画があります。大阪の大学に通っていた私にとって、大阪が舞台でもあることが映画を観るきっかけでしたが、白い雪の中に赤を効果的に使う映画の色使いがなんとなく小津安二郎っぽくて、かつ、トゥーツ・シールマンスのハーモニカとナンシー・ウィルソンのボーカルによる音楽があまりに素晴らしくて、すっかり好きになってしまって、サントラを何度も繰り返し聞いていました。 映画のストーリーは、ヤクザであった高倉健が、結婚を機に足を洗って漁師にな

仏アニメ映画「自殺用品専門店」

今年もいろんな映画を見ましたが、心に残った映画の一つが、「スーサイド・ショップ(自殺用品専門店)」というフランスのアニメ映画です。 飛行機の中で見た映画で、公開は2012年と、古い映画ですが、フランスらしいブラックユーモアと人生について考えさせられるメッセージが込められていました。 そもそもタイトルが「自殺用品専門店」と、見た瞬間「?」でした。しかもアニメ。「大人向け?」と思いながら見てみると、これが面白いというか、味わい深い。(監督によると、子供向け映画だそうです)

ボヘミアンラプソディを観てきました

公開以来、人気がどんどん高まっているという映画『ボヘミアンラプソディ』を観てきました。中学時代にお小遣いを貯めて購入したLPレコードは、記憶する限り3枚で、そのうちの1枚が、QueenのLPレコードでした。けれど、その当時は、フレディ・マーキュリーについてもよく知らず、ただその音楽に惹かれて聴いていたように思います。 今回、遅ればせながら、映画を通して、フレディ・マーキュリーという人の人生を知ることになりました。 映画なので、製作者の意図が入っているとはいえ、随所に表現さ

河瀬直美監督新作「Vision」を観ました

河瀬直美監督の新作「Vision」を観た。 河瀬監督は、同郷で、映画祭のアドバイザーもさせていただいたり、親しくさせていただいているので、ここでもいつものように河瀬さんと呼びたい。。 今回の作品の圧巻は、やっぱりフランス女優のジュリエット・ビノシュ。繰り返し画面一杯に映し出されるビノシュのアップと涙。もうそれだけで、何かグッとくるものがある。彼女が放つオーラは、共演者に適度な緊張を与えると同時に、未だ出したことがない演じる力を引き出したのではないかと思う。 仕事をしている