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子育てをしながら小説を書いています。noteでは主に短編小説です。Twitterでは小説のネタや子育てについてつぶやいています。【Twitter】https://twitter.com/kumxxxxxxxxo

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  • 短編小説

    短編小説の本棚です

  • 人間とはよくできた生き物だ

    全10回(9話+あとがき)にわたって連載した小説です。

最近の記事

忘れもの|あとがき

◇読了時間目安:約3分(1500字)◇ 小説「忘れもの」を読んでくださり、ありがとうございました。ここでは、あとがきとして自分がやりたかったことや伝えたかったこと、反省点などを書いていきます。 本編はこちらからお読みください。 『モチーフ』 この小説を書き始める前、時期も時期だったので、「クリスマスにちなんだものを書こう」と思いました。しかし、クリスマスにちなんだ、とは言うものの、肝心の中身が思いつきません。来る日も来る日も「クリスマス」と唱えるだけで過ぎ去って行き、

    • 忘れもの

      ◇読了時間目安:約8分(4200字) 図書館には真っ赤な陽が射していた。 「ねぇ、先生。私にとって本はげんじつとうひなの。だから、このまま本をよみつづけて、げんじつにもどれなくなったらどうしよう」 Rは長机に突っ伏して、小さな肩を振るわせて泣いた。 図書館にはRの嗚咽が響いた。 「そうね。でも、本は……」 優しく背中をさすりながら、先生は言った。 最近Rは仕事がうまくいっていなかった。 新しくできた後輩は中途採用で入社した年下の女の子だったが、この半年でめきめ

      • 美しいものたちへ|あとがき

        ◇読了時間目安:約2分(1200字)◇ 小説「美しいものたちへ」を読んでくださり、ありがとうございました。ここでは、あとがきとして自分がやりたかったことや伝えたかったこと、反省点などを書いていきます。 本編はこちらからお読みください。 『モチーフ』 この小説は「花鳥風月」という四文字熟語をモチーフとして使用しました。「花鳥風月」とは言わずもがな、自然の美しいものや風景のことです。ここから着想を得て、花が鳥になり、風を感じ飛び立ち、月で踊るという流れを思いつきました。

        • 美しいものたちへ

          ◇読了時間目安:約5分(3200字) Sは規則正しく慎ましく生活しています。 朝起きて、ご飯を食べて、歯を磨き、服を着替えて、仕事に出かけます。仕事が終わればまっすぐ家に帰り、晩ご飯を食べて、テレビをみて、お風呂に入ってから歯を磨き、ベッドで眠ります。 Sはずいぶんと長い間こうして過ごしてきました。 ある日、Sは仕事場で花をもらいました。それはまったく偶然の出来事で、Sだけでなく花をあげることになった本人も驚いていたほどです。 今まで花に興味などなかったSですが、ま

        忘れもの|あとがき

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        • 短編小説
          10本
        • 人間とはよくできた生き物だ
          10本

        記事

          COLOR(カラー)|あとがき

          ◇読了時間目安:約4分(2000字)◇ 小説「COLOR(カラー)」を読んでくださり、ありがとうございました。ここでは、あとがきとして自分がやりたかったことや伝えたかったこと、反省点などを書いていきます。 『モチーフ』 通常は何か描きたいモチーフがあり、それを元にストーリーを考えていきます。しかし、この小説を書き出す前、描きたいモチーフが全く思い浮かばず、仕方ないので、「日頃考えていること」を元にストーリーを構築していきました。 物流の発達はわたしたちの生活を豊かなも

          COLOR(カラー)|あとがき

          COLOR(カラー)

          ◇読了時間目安:約5分(2800字) それはたいへん美しい国でした。 1つ目は赤い国。 目に見えるものすべて、いや、目に見えないものでさえ、すべて真っ赤な国でした。気温は常に40度を超える灼熱(しゃくねつ)のような国であたりは赤い土で覆われていました。さまざまな赤い動物が住み、赤い人間は動物に感謝し、動物を狩りながら暮らしていました。 2つ目は青い国。 なにからなにまで真っ青な国でした。寒い季節と暑い季節とがあり、青い人々は青い海で暮らしていました。青い空の下、青い

          COLOR(カラー)

          朝ご飯|あとがき

          ◇読了時間目安:約2分(1000字)◇  小説「朝ご飯」を読んでくださり、ありがとうございました。ここでは、あとがきとして自分がやりたかったことや伝えたかったこと、反省点などを書いていきます。 『モチーフ』  この小説は、「とにかくご飯を食べているところを描きたい!」という思いから出発しました。食べさせたいのは炊きたてのご飯にふわふわの出し巻き卵、豆腐とわかめのお味噌汁、そしてお新香。 完璧な朝ご飯。こんな朝ご飯を食べている人は心身ともに健やかな人に違いないですよね。大

          朝ご飯|あとがき

          朝ご飯

          ◇読了時間目安:約2分(1250字)◇  彼の表情は、朝の穏やかな食卓には不似合いなほど鬼気迫っていた。ピシっとYシャツを着て、背筋を伸ばして座っている。しかし、髪の毛は寝癖がついており、どこかアンバランスな感じもいなめない。 「ふぅ」 ひとつ深呼吸をし、両手を合わせこう言った。 「いただきます」  ぱっと目を開いた彼はまず蛇紋木の箸とお椀を手に取り、お椀の中の具を箸で止め、まずは汁のみをすすった。熱かったのだろう。彼の顔は大きく歪んだが、彼は再度お椀に口を近づけ、

          朝ご飯

          愛でるもの|あとがき

          ◇読了時間目安:約3分(1700字)◇  小説「愛でるもの」を読んで下さり、ありがとうございました。ここでは、あとがきとして自分がやりたかったことや伝えたかったこと、反省点などを書いていきます。 『ストーリー』  ストーリーとしては比較的単純な作りになっていると思います。  当初は少女を結晶に閉じ込めるというラストを考えていたのですが、あまりにもありきたりで面白くないなぁと思い、考えあぐねた結果、あのようなラストにしました。  結局少女自体を結晶に閉じ込めるのと大し

          愛でるもの|あとがき

          愛でるもの

          ◇読了時間目安:約10分(5400字)◇  あなたにとって、閉じ込めてしまいたいほど大切なものとはなんでしょう。珍しい蝶々、あの日拾った貝殻、それとも四葉のクローバー?  残念ながら、わたしにはそんなものありませんでした。--ただ、ひとつだけ。花を閉じ込めてもらいました。とても美しい結晶に、瑞々しい花を。そして、そう、それが始まりだったのです。   あの時わたしは、両親の仕事の関係で見ず知らずの土地に1週間滞在することになりました。そこのお屋敷は前のお屋敷と比べものにな

          愛でるもの

          人間とはよくできた生き物だ|あとがき

          小説「人間とはよくできた生き物だ」を読んで下さり、ありがとうございました。ここではあとがき、というよりも自分がやりたかったこと、伝えたかったことなどを書いていきます。 この小説は自身の妊娠体験を元にファンタジーを交えて書いています。 『ストーリー』 「で、最終的にはどうなったの?」 「角笛は?」 「結局ロビー=子どもでいいの?」 ストーリーに関して、色々と疑問に思うところがあると思います。 「結末について」 まず結末としては、いわゆる「夢オチ」にしていまいまし

          人間とはよくできた生き物だ|あとがき

          人間とはよくできた生き物だ|第9話 ありがとう『ロビー』

          前回のお話はこちら 以来、ロビーは私のピンチに警鐘を鳴らしてくれるようになった。 朝起きて、ギリギリの精神状態で電車に一歩入るとき。 見積に対して営業からつめられているとき。 疲れ切って夜中ベッドに入り目を瞑った瞬間。 (私、今ピンチだよね。でも、大丈夫だよ。ありがとう) その角笛の音はだんだん励ましの音色にも聞こえてきた。 (ロビーだけだよ、本当) いつだってロビーは私に寄り添ってくれている。 (早くロビーに会いたいな) それは意外と早くやってきた *

          人間とはよくできた生き物だ|第9話 ありがとう『ロビー』

          人間とはよくできた生き物だ|第8話 始まるの?『ロビー』

          前回のお話はこちら。 (・・・いや、冷静に考えて私のお腹の中のものが『世界の終末』なんかに警鐘を鳴らせるはずないよね) そんな立派なものは私のお腹にいるはずがない。 (でも、もしかしたら・・・) 「先輩?先輩?大丈夫ですか?何か疲れてますか?」 後輩に話しかけられて、はっと我に返った。 「あっ、ごめん。大丈夫。ありがとう」 「本当ですか?あまり無理しないでくださいね。最近暑くなってきましたし」 後輩はそう言いながらいそいそとデスクの上の携帯やらを鞄に入れ始めた

          人間とはよくできた生き物だ|第8話 始まるの?『ロビー』

          人間とはよくできた生き物だ|第7話 何を伝えたいの『ロビー』

          前回のお話はこちらから 「大丈夫、かぁ・・・」 今度は言葉にして呟いてみた。 (ダメだ、とりあえずお腹空いた。コンビニに行こう) そう思った次の瞬間、突然お腹から音がした。 ホルンのようなユーフォニウムのような。 どこか北欧あたりで響いていそうな、角笛のような音が響いたのだ。 (ん?今お腹から鳴った?) 突然のことで、はっきりはしないけれど、どうもお腹から鳴ったような気がする。 (まさか・・・まさかだよねぇ) ・・・いや、おそらくまさかではない。 やっぱ

          人間とはよくできた生き物だ|第7話 何を伝えたいの『ロビー』

          人間とはよくできた生き物だ|第6話 つぶやく言葉はわたしに届く?『ロビー』に届く?

          前回のお話はこちらから 「はい、む・・・」 「この間印刷納品したカタログだけど、スペックに間違いがあったってクライアントから連絡あった。詳細は今からメールするけど、すぐ経緯追って、どっちのミスか連絡して」 ツーツーツー。 (最悪だ・・・) いつも雑用ばかりさせられているにも関わらず、こういう時だけは責任を問われる。 いや、もちろん制作における責任は自分にあるのだけれど、それならばそれでもう少し普段の労を労ってくれてもいいのではないだろうか。 とは言え、まだこちら

          人間とはよくできた生き物だ|第6話 つぶやく言葉はわたしに届く?『ロビー』に届く?

          人間とはよくできた生き物だ|第5話 思い出すじゃないか『ロビー』

          前回のお話はこちらから 髪だけはしっかり巻いて出勤したものの、後輩は立寄だった。 (何てつまらないのだろう) とりあえず私はデスクに座る前に部長のところへ行き、陳謝した。 「いやいや、こっちは大丈夫。ただ、本当にもう大丈夫なの?無理しないでね」 「はい、ただの貧血だったのでもう大丈夫です。本当にご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」 再度頭を下げて、自分のデスクに戻った。 (ふぅ、とりあえず今日の憂鬱1クリア) 部長の笑顔は今日も完璧に張り付いていた

          人間とはよくできた生き物だ|第5話 思い出すじゃないか『ロビー』