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竜と、部活と、霊の騎士

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連作長編小説。高校に入学したシキは、美少女の先輩たちのいる部活に入部する。その部活でシキは、霊珠の力で霊能力を獲得する。
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2014年9月の記事一覧

第15話「第五期発足 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第3章 戦間

第15話「第五期発足 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第3章 戦間

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 竜神部の部室。部員の五人を前にして、顧問の佐々波先生が、その発足の経緯を語った。七年前の御崎高校への赴任。そこで再会した高校時代の同級生。六年前の、その同級生の裏切り。そして、五年前の七人の殺人鬼事件。

「佐々波先生。俺の母さんと姉さんは、五年前の事件の日、島を守るた

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第14話「第五期発足 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第3章 戦間

第14話「第五期発足 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第3章 戦間

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 廃ビルを出た俺たちは、学校を目指した。校門を通り、玄関を抜けて、第二校舎に移動する。部室までずっとアキラを背負い、俺はさすがに疲労を感じた。

「アキラ大丈夫か?」
「ちょっと気分が悪いけど、だいぶましになってきた」
「椅子に座れるか」
「うん。ありがとう」

 雪子先

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第13話「針丸姉妹 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第13話「針丸姉妹 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 早く助けを呼ばなければ。俺は、呼吸を激しく乱しながら、廃ビルの一階を進んでいく。二階ではアキラが倒れ、DBが一人で時間稼ぎをしている。そのDBには、戦う能力はない。俺は必死に足を動かして、出口に向かう。

 俺は走りながら考える。DBは、能力を敵に明かすなと言った。しか

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第12話「針丸姉妹 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第12話「針丸姉妹 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

 シキが部長たちを連れてくるまで、何とか時間を稼がないといけない。廃ビルの二階に俺はいる。目の前には、派手な桃色の服に、悪魔のような白黒のメイクをした二人の少女、針丸姉妹がいる。俺は、自分の右手に持った写真を眺めたまま、彼女たちに声をかけた。

「父親か」

 姉妹の動きが止まり、顔に困

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第11話「針丸姉妹 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第11話「針丸姉妹 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇大道寺万丈◇

 ちっ。
 シキとともに、美人の尻を追いかけていたと思ったら、まさか廃ビルに放り込まれて、こんな危機に直面するなんて考えてもいなかったぜ。人生、何があるのか分からない。そして、どこで、本気にならないといけないのかも分からない。

 俺は、足を動かして、砂と埃の詰まった通

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第10話「針丸姉妹 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第10話「針丸姉妹 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 廃ビルの二階。死霊たちに囲まれた、俺たち新入生三人。その窮地を脱するために、俺は霊珠の力を借りて、白銀の鎧、黄金の騎槍という、霊の騎士の姿を身にまとった。そして、雄叫びを上げながら、敵へと武器を振るった。

 俺は、白銀の体の向きを変える。闘争本能が俺を掻き立てる。一歩

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第9話「初陣の霊戦 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第9話「初陣の霊戦 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 山の奥まったところにある採石場。その入り口に立つ、三階建ての廃ビル。その二階の通路に、俺たちはいる。俺とDBは、何体かの戦国時代の死霊に囲まれて、背中を合わせている。階段の近くには、驚いて混乱しているアキラがいる。

 敵は武器を持っている。刀に槍に弓矢。いずれも、粗末

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第8話「初陣の霊戦 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第8話「初陣の霊戦 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇朱鷺村神流◇

「キャーッ!」

 採石場の廃ビルの中から悲鳴が聞こえた。私は顔を上げて、どこから声がしたのかを確かめる。

「二階か?」
「階段を上った辺りね」

 ユキちゃんが場所を特定して、視線を向けた。
 新入生たちは、大丈夫だろうか。胸を張って送りだしたが、勝てるという確証が

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第7話「初陣の霊戦 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第7話「初陣の霊戦 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

 朱鷺村先輩と雪子先輩の先導で、俺たちは御崎高校から続く山を登っていく。
 足下は、アスファルトで舗装されている。左右は、斜面になった森に囲まれている。しばらく歩いたところで、二人の先輩は道を折れ、山道に分け入った。俺たち新入生も、そのあとに続く。
 森に入ると、周囲は薄暗くなった。土が

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第6話「初陣の霊戦 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

第6話「初陣の霊戦 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第2章 初戦

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 俺たち五人は、学生食堂に到着した。学食は、教室四つ分ほどの広さで、机や椅子が並んでいる。奥には、食べ物を注文するカウンターと、パンなどを買える購買がある。
 朱鷺村先輩と雪子先輩は、松花堂弁当を頼み、俺はカレーライスを注文した。DBは、かつ丼大盛りを二つトレイに並べ、ア

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第5話「入部試験 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

第5話「入部試験 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 竜神部の部室には、俺とDB、朱鷺村先輩と、雪子先輩、そして途中乱入したアキラの、五人がいる。俺たちは、木製の机を囲んで立っている。そして、虹色の霊珠を持った朱鷺村先輩の話に、耳を傾けた。

「この霊珠は、竜神部で管理していて、部員に貸し出されるものだ。そして、竜神部には

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第4話「入部試験 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

第4話「入部試験 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 竜神部の部室で、箱に意識を集中していた。俺は過去へと戻り、自分が霊の騎士になる幻を見た。その直後、現実の世界に引き戻された。呼吸が荒くなっていた。額には、大粒の汗が浮かんでいる。俺は、木の机に手を突き、呼吸を整えた。

「何が見えた。私にだけ聞こえるように、話したまえ」

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第3話「入部試験 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

第3話「入部試験 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 オリエンテーションが始まった。校則や学生の心得、一学期の予定などを聞かされたあと、雑多な書類を渡されて説明された。その煩雑さに、眠りそうになった頃、オリエンテーションは終わった。俺たちは、先生から解放されて、午前中で自由の身になった。
 俺たちが通い始めた御崎高校では、

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第2話「入部試験 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

第2話「入部試験 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第1章 入部

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 目覚まし時計が鳴った。俺は、手を伸ばしてベルを止める。上半身を起こすと、部屋の様子が目に入った。六畳の部屋に、布団を敷いて寝ている。壁には、勉強机と本棚、洋服ダンスが並んでいる。
 俺は時計を見る。針は七時を指している。学校の始業は八時半だ。朝食を取り、ゆっくりと登校で

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