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竜と、部活と、霊の騎士

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連作長編小説。高校に入学したシキは、美少女の先輩たちのいる部活に入部する。その部活でシキは、霊珠の力で霊能力を獲得する。
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2014年11月の記事一覧

第46話「末代訪問 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第7章 訪問

第46話「末代訪問 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第7章 訪問

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 佐々波先生の軽自動車と、朱鷺村先輩の大型バイクが、学校を出発した。軽自動車の助手席に座るDBは、タブレットを出して、地図を表示する。そして、運転席の佐々波先生に、指示を出し始めた。
 ハンドルを握ったことがないDBとは違い、佐々波先生は運転経験がある。それに何度も末代の

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第45話「末代訪問 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第7章 訪問

第45話「末代訪問 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第7章 訪問

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 土曜日の朝八時。その時刻に集合して、俺とDBとアキラは、休日の高校に向かった。今日は、竜神部のみんなで、竜神神社末代の家を訪問する予定になっている。集合場所は、校門を入ってすぐのところだ。俺たち三人はその場所に立ち、運動部の生徒たちを眺めながら、先生や先輩たちが来るのを

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第44話「末代訪問 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第7章 訪問

第44話「末代訪問 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第7章 訪問

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 土曜日の朝、七時五十分。空は青く澄んでいる。雲は、まばらに見えるだけで、まるで夏の空のような色をしている。
 松海公園の入り口。その場所で俺は、DBとアキラを待っている。一緒に学校に行くためだ。今日は、竜神部のメンバーで連れ立って、多津之浦にある末代の家を、訪れる予定に

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第43話「火炎坊と鏡姫 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

第43話「火炎坊と鏡姫 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇鏡姫◇

「弥生様」

 ブルータワーの上で、私はその名前をつぶやいた。声を出すとともに、私は身のうちに火照りを感じた。私は弥生様との体験を思い出す。闇球の中に入り、私はすべての感覚を遮断した。そこで、私の自我は境界を失い、弥生様の自我と触れ合った。
 魂の接触。魂の姦淫。
 それは、

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第42話「火炎坊と鏡姫 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

第42話「火炎坊と鏡姫 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇鏡姫◇

 八布里島と本土とを結ぶ定期連絡船。その港がある島の北西部は、八布里島で最も賑わう場所になっている。賑わいの中心は、商店街である。その周囲に、住宅が多く立ち並び、市街を構成している。
 そこから少し離れた海岸沿いに、背の高いマンションがいくつか建っている。海峡の景色を見渡せる

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第41話「火炎坊と鏡姫 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

第41話「火炎坊と鏡姫 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇火炎坊◇

 私の本名は、坊津猛留という。年齢は、二十一歳になる。竜神教団で、探索人という仕事に就いている。
 竜神教団は、家庭環境に問題のあった人間が多い。虐待や育児放棄。そういった経験を持つ者が、一定数を占める。私は違う。少なくとも、小学六年生の頃までは、中の上というべき家で育ち、

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第40話「火炎坊と鏡姫 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

第40話「火炎坊と鏡姫 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇火炎坊◇

 八布里島には、島裏と呼ばれている地域がある。本土に面している地域を表と考え、その反対側を裏とした言い方だ。本土に面した港のちょうど反対側、島裏の中ほどに、多津之浦という地域がある。多津という字を当てているが、本来は竜や龍であることは容易に想像できる。浦は入り江を指す。島裏

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第39話「竜神教団 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

第39話「竜神教団 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇凪野弥生◇

 最上階の教祖の部屋から、地下へと通じる昇降機。その縦穴を抜けた先には、秘密の部屋がある。地下雨水貯留施設として建設された空間。その場所を封鎖して作った、巨大な地下施設である。
 昇降機を利用して、地面よりも奥深くに到達する。降りた先の扉に、掌をかざして、静脈認証をおこな

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第38話「竜神教団 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

第38話「竜神教団 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇凪野弥生◇

「弥生様。記録書からの伝言です。針丸姉妹の両名が死んだそうです」

 竜神教団の本部ビル。その最上階で寝ていた私に、一本の内線電話が入ってきた。私はベッドの上に座り、その報告を聞く。
 最も能力が低かった探索人が、最初に命を失った。順当な結果だと、私は思った。
 播磨一花

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第37話「竜神教団 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

第37話「竜神教団 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第6章 教団

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇大道寺万丈◇

 シキを送り、アキラを商店街で下ろし、大道寺の家まで戻ってきた。母屋に明かりはない。今日は両親ともに帰宅していないようだ。俺は、離れの前で車を下り、今日の礼を執事に言った。

「坊ちゃん。本当に大丈夫ですか。非常に危険なことに、巻き込まれているようですが」
「心配ない。

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第36話「月下の死闘 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

第36話「月下の死闘 その4」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 春の夜の海峡を泳ぎ、波刈神社の崖下までたどり着く。海の流れは速い。岩場に到達するまでに、かなりの体力を奪われた。
 岩場の一角には、針丸の妹の死体が転がっている。その姿を、苦い思いで見たあと、境内へと上がる階段を探した。崖の上に上がった時には、寒さのせいで膝が笑っていた

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第35話「月下の死闘 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

第35話「月下の死闘 その3」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 竜神海峡に浮かぶ和船の船底。白銀の全身鎧をまとった俺は、左手に黄金の騎槍、右手に青白い偽剣を持ち、全身に力をみなぎらせる。目の前には、当世具足を身にまとった、二体融合の鎧武者がいる。戦国時代の武者の怨霊と、現代の殺人鬼が融合した怪物。その手には、ぎらつく太刀が握られてい

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第34話「月下の死闘 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

第34話「月下の死闘 その2」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 波刈神社の拝殿。俺と鎧武者と針丸の霊。その場にいた全員が、屋外に目を向ける。
 DBとアキラが倒れている辺りに、二人の美しい少女が立っていた。一人は長い黒髪を、海風にひるがえしている。その手には日本刀を持ち、刀身には霊の力が揺らいでいる。もう一人は、ふわふわの金髪に、月

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第33話「月下の死闘 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

第33話「月下の死闘 その1」-『竜と、部活と、霊の騎士』第5章 決闘

★★★ 連作長編。目次ページは→ https://note.mu/kumoi/n/n5487c292e17e

◇森木貴士◇

 俺の騎槍は、針丸の剣山のような針で、食い止められている。その状態のまま、足に力を込める。雄叫びとともに、全身の筋肉を動員する。俺は、敵を全力で押して、相手ごと一気に拝殿まで脱出する。

 俺たちは、板間の上で別れて距離を取った。敵は、全身を太くて長い針で覆っている。両手

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