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「家路」

武夫は街灯の少ない暗い道を歩いている。
遅くなってしまった。もう午前0時を過ぎている。
終電には間に合ったが、終電は、自宅ひと駅手前の駅が終着駅なので歩いている。
明日はいつもより早く出社しなければならないので、武夫は小走りで歩いている。
自宅まであともう少しというところに公園がある。この公園を通れば自宅までの時間を短縮できる。
武雄は躊躇することなく公園に入った。
しばらく歩くと「おっさん」ドスの効いた男の声がした。
振り返って見れば20代後半に見える男が3人立っている。
声を発したのは、そのうちの一番大きな男のようだ。
3人は武雄の周りを小刻みに左右に動いて武夫が逃げないように囲んでいる。
「何か用か?」武夫が答えると「金持ってる?」と、さきほどの大きな男一人が言う。
「何だ、つまらない。金か? 小銭なら500円くらいあるよ、貸してやろうか?」武夫が鼻で笑う。
「何だ、その言い方?」「バカにしてるのか?」と男たちは怒り出す。
それを見た武雄は「だって、バカじゃん」と言ってあざ笑った。

「てめぇっ!」大きな男が武雄に掴みかかろうとする。

「ホンモノのバカだな。来世では上手に生きるんだよ」武雄が呟くと同時に武雄の全身から直径1センチほどの無数の太い針が飛び出して、それが5mほど伸びていく。「ギェッ!」と奇妙な音がした。それは苦悶の声のようだった。
「おやすみ」武雄は自宅への道を急いだ。
公園には全身穴だらけになった3人の男の死体が転がっていた。

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