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幻影の城 Castle Of Illusion

*見出し画像は「稲生美代子のイメージ」(本文参照)です。
*内容は西村京太郎さんの「殺しの双曲線」(名作)に似ています。ぜひ、京太郎さんの殺しの双曲線をお読みください。

雪深い山間部にある村のペンションに東京近郊から10人の老若男女が招待された。

村は100世帯で構成されていて、割と大きな村落である。10人が招待されたペンション伊豫は、村から離れた箒山(ほうきやま)の麓に建っている。ペンションには、10人が招待されたペンションのオーナーの伊豫(いよ)恭三(65歳)、玲子(60歳)夫妻と息子・清士(32歳)が暮らしている。

招待された10人は、石井孝夫(26歳)、佐々木清美(25歳)、伊地知政夫(45歳)、30代の田中有紀、40代の佐藤鮭児・洋子夫妻、50代の忌(いみ)嘉男、幸子夫妻、70代の嘉村清人・ユキ夫妻である。

彼らはSNS上でこのペンションをフォローしている。というのもペンション側から彼らに一方的に地元の名産品を送りつけてきて「友だちになれ」とコメントしてきたのである。この10人はもともともらえるものは何でももらうという性格だったから疑うこともなく友だちとしてフォローした。一度もこのペンションに泊まったことはないが、フォローして半年後に今度は「ペンション創業10周年記念」として、交通費込みでの招待状がSNS上から届いた。

招待された10人

「招待状」

F県I村の「ペンション伊豫」の伊豫と申します。SNSでフォローいただいております方々の中から勝手ながらこちらで抽選させていただき、10名の方にこの招待状をお送りする結果となりました。招待日は2023年1月2日から4日でございます。ご都合が悪ければ、他の方を招待させていただくことになりますから欠席いただいても構いません。

こちらで交通費(往復5万円・不足の場合は申し出てください。その分をお支払いさせていただきます)と無料招待券をお送りしました。欠席の場合にはご面倒をおかけしますが、同封の現金書留封筒で返却ください。

ご不明な点がございましたらSNS上でコメントください。

それでは、皆様のご参加を楽しみにお待ちしております。

             ペンション「伊豫」オーナー・伊豫恭三

F県I村。ペンション「伊豫」は、後方に霞む山の中腹にある

ペンション伊豫に招待された10人は、ペンション到着後に全員行方不明になった。

消えた10人

行方不明になった10人は、2011年の東日本大震災時に東京都内で起きた交通事故に関わりのある人物たちだった。東日本大震災時には関東地方で大停電になったが、その際に横断歩道を渡っていた若い母親・稲生美代子(25歳)と美代子の娘・美智瑠(5歳)を次々に轢いて逃げた人物たち(最初に轢いたのは伊地知政夫)であった。停電で防犯カメラも作動していなかったことから、彼らは検挙されることはなかった。

ペンションのオーナー夫婦はひき逃げされた美代子の祖父祖母であり、美代子の夫・稲生清士であった。彼らはひき逃げ犯の10人を、ペンション内に閉じ込め、人口雪崩を発生させて全員を凍死させた。

春になって、雪が溶けてからペンション付近を散策していた村人が10人の遺体を発見した。ペンションがあった場所にはペンションの建物がなくなっていた。

10人を閉じ込め凍死したことを確認した伊豫夫婦と稲生清士の3人は、すべての証拠を隠滅してから、現場から姿を消していた。

ペンションは雪と氷で緻密に作り込まれたもので、気温が高くなって溶けて薄汚れた雪と氷だけが残っていたが、10人の遺体はその中で発見された。しかし、ほとんどが熊や猪に食われており、見るも無惨な状況であった。

ペンション伊豫の存在を、村人たちは知らなかった。伊豫夫婦と稲生清士の3人は秘密裏に準備して10人に復讐したのだった。

伊豫夫婦は、その後、夫婦ふたりだけで10人を殺害した旨を書いた遺書を残して自殺。娘婿の清士には一切関わりがないとして疑いも持たれることがなかった。

清士は義父義母の意思を尊重して生きていくことを誓った。

AIがイメージした氷と雪のペンションですが、こんなに凝った作りではなく2階建ての簡素なものをイメージしてください。

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