見出し画像

2020.4.14.包丁を研ぐ

毎日がスローモーションのようだ。夢の中で走ろうとするのにちっとも体が動かない、あんな感じが現実を覆っている。

喫茶をやめてお茶のテイクアウトとお茶販売にシフトしようと決めて店を再び開けたのが4月7日。たった一週間しかたっていない。この日記をつけ始めたのが4月3日。もう3ヶ月くらい経ってる感じがする。

4月10日広島県に週末の外出自粛要請が出された。12日には平日も引き続き外出自粛が言い渡され、デパートは時間短縮に加え土日閉店をアナウンスした。
今の最優先はステイホームだ。不要不急の外出、特に人と会うことは避けなくてはならない。ウイルスは勝手にこない。人がつれてやってくる。かかってても気がつかないこともある。いい人かどうか知ってる人かどうかなんて関係ない。人も自分も信じられない。
雲間のような小さい店でも、外出の目的地になることがいいことなのか、ここはもういっそ5月の連休明けまで閉めますと言った方がいいのか
ぐるぐる逡巡する。どの店の店主もそうだろう。正解はない。たった一週間で状況はこんなに変わっていく。時間はスローモーションなのに。一週間後の自分が、明日の自分すらもうよくわからない。

重い気持ちで開けた店に、尾道の今川玉香園茶舗の今川さんがいらした。ほんのちょっぴりの納品のためにわざわざありがとうございます。
ろびんさんもやって来て、店頭で立ち話。
今年の走りの鹿児島枕崎の新茶をいただいた。
まだ、標高の高い畑のような繊細なうまみは感じられないが、ピチピチした若い生命力あふれるフレッシュさに目が覚めるようだった!
ああ嬉しい。自然はめぐるね。お茶の芽ピカピカだね!

状況は困難、話せば話すほど先の見通せない不安で
笑うしかないね。笑えないけどね。面白くなって来やがったぜ!と笑いながら話した。

美しいフォルムのイッヌたちがお散歩の途中にやって来てくれた。
イッヌのおかあさんが美しい仕立てのマスクをくださった。
イッヌたちの衣装をプロ顔負けに仕立てる敏腕によるそのマスクは
ほんとにシワ一つなく美しかった。ありがとうございます!
お茶ボトリングしてお渡し。嬉しい物々交換。

そうだ。誰かに喜んでもらうことが喜びだったんだ。
手渡して、にっこり、ありがとうと心が通うことに喜びを感じていたんだ。
人と人が接することを阻むこの状況は、人の喜びを奪うものなんだ。
今までとまるで違う、人と人が会わなくても喜んでもらえる、それを感じられる新しい状況を作り出さなくてはいけないんだ。

先日日曜の夜に配信があった「新生音楽 MUSIC AT HOME」は、まさにその試みの、関わった方々の感情と知恵の結実だったと思う。

荒野を、灯りをかざしながら進んでいく人たちがいることがわかると、勇気がわく。静かな静かな配信だったけど、聞いて見ていた私は確実に心揺さぶられた。登場した人々や聞いてる人はそれぞれ自分の部屋にいるのに、同じ空の下にいるんだねと感じた。新しい喜びだった。人は未知の世界に漕ぎ出せるんだな。ありがとうございました。

なんにしても取り組みの遅いわたしもそろそろやらなくてはならない。
しかし新しいことを始めようとすると、過去にあやふやにして置いてきた問題に直面する。なかなか鍛えられるぜ。
そして新しい出費が発生する。
あのさ、今は一円でも使わずにステイホームが安全じゃないの?
ぜんぜん売り上げたたないうちからお金出してバカじゃないの?
今はまだ笑ってられるけど、半年後どうなってると思ってんの?
とびびって一旦考えるのをやめる。

気分転換に包丁研いだ。

画像1

砥石は「刃の黒幕」オレンジ。なんちゅうネーミング。

以前、さしものかぐたかはしの高橋さんに「包丁研ぎ教室」の予行演習で研ぎ方習ったときにこれがいいよと教えてもらった。(その包丁研ぎ教室は市中を刃物持ち歩くのがどうなのかということになり実現せず)

ちょっと、十円玉が刃物と砥石の間にある感じで斜めに倒して、シュッシュっと研ぐ。片側に「バリ」がでるのでそれを落とすように反対側もシュッシュッと。案外簡単なんですよ。ちゃんと正しいのかどうかわかんないけど。

研いだ包丁で野菜を切ると、細胞が美しく切れる。切れ味の解像度が上がる。もう、ずっとなんか刻んでいたい。うっとりする。

そういうふうに自分の思考も研いでいきたい
などとうまくまとめられるんなら苦労しない。
いつまでたっても切れ味の悪いポンコツで、押したり引いたり綺麗に切れずに今日が終わる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?