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お腹、おだいじに(虚血性大腸炎)

手相なら少しならわかりますよ、と親しい人に言われ手のひらを見せると『強運ですね』と言われた。危なかった、このぐらいで済んでよかった、は何度もある。受け取り方ひとつの問題だとは理解しているし頭がお花畑なのも否めない。

今月に入り、明らかに不調の感覚はあった。口周りの吹き出物、カフェイン、便秘、ちょっとしただるさ、喉に上がってくるようなむかつき。何よりも食べるのが生きがいなのに、そこまでの食欲がわかない。数日もすればいつものように良くなるだろうと高を括っていた。でも、そうではなかった話。

※ここからは個人の体感と感想長めの6000字です。尾籠な話も含まれますので、お食事中や苦手な方、各自ご注意のほどおねがいします。


とある木曜日
チーズトーストとカフェオレ(デカフェ)の朝食
洗濯が終わり、外に干す

① 10時 腹痛
痛みレベル ★★
痛さ キュルキュル
便の状態 コロコロ

便秘だったから硬めだった
腹痛がリズミカルに続くためソファに寝そべる

② 12時前 再び腹痛
痛みレベル ★★★
痛さ お腹全体と差し込み/冷汗
便の状態 粘度性カタチあり

下痢ではないのにかなり痛い
地味に続く痛みでソファに横たわる

③ 14時頃 激しい腹痛
痛みレベル ★★★★★
痛さ 動けない/全身から冷汗
便の状態 下痢

便座に腰掛けても姿勢が保てない
上半身をぺたんと太ももにあずける
冷汗が全身から吹き出す
額からぽたりと床に落ちる汗
ダメだもうダメだ
神様許してと願う癖も忘れるほどだ
目の前にうっすらと紗がかかる
血の気が引いていくとはこのことか
意識消失?
それはやばい
なんとか目を開けよう
トイレが狭いので手を伸ばせば壁がある
そこに手をついて呼吸する
少しづつ色が戻ってきた
ずっと痛みは容赦ない
背中も腰も痛い
とりあえず意識があってよかった
ぐっしょりとした部屋着を脱ぎ捨て
う〜あ〜と言いつつソファに寝転ぶ
身体が冷えブランケットをかける
丸まったまま動けない

水を飲もうとするけど気持ち悪くて受け付けない状態。これまでも便秘でお腹が痛くなったり下痢になったことあるけどまったく比較にならない痛み。

④ 15時頃 腹痛
痛みレベル ★★★
痛さ 下腹部が痛む/冷汗ナシ
便の状態 下痢少量/下血
そのあとはガスだけがでる
すべて出尽くしたのだろうか

お尻を拭いた紙を見ると粘液状の赤いものが付着していた。女だし血には慣れているけどお尻からとなると話は別だ。切れてる感覚もない。立ち上がり便器を見るとポタポタと2滴ほどの血の跡。下血確認。

これはやばいとここで確信した私は、仕事中の夫に電話をする。木曜日の午後、ほとんどの病院は休診。救急車を呼ぶほどの痛みもなくだいぶ落ち着いていた。でも下血の恐怖には抗えない。夫の通話を切り、同じような症状で入院した友人を思い出し息も絶え絶えに電話をかける。ネットで検索した病名を告げるとそれだと入院する可能性もあると言われた。そうか、そうなのか。必死でググり、会社の近くの総合病院が午後も診察している情報を見つけ、すぐに電話すると「16時半で受付けが終了ですが間に合いますか?」ときかれ時計を見るとあと10分もなかった。到底無理な話だったが、そこからの対応に救われる。

質問され名前と生年月日を告げると過去の来院履歴を調べてくれた。今朝からの症状を話すとしばらくお待ち下さいと内科の看護師へ内容を伝え明日の担当医を確認してくれた。「このあと急変したり痛みがひどい場合は必ず救急車を呼んでください。明日まで大丈夫だったら、朝8時受付で8時半診察開始です。お待ちいただくと思いますが、内容とお名前は看護師に伝えてあります。よろしければお越しください」

誰かに症状を話し聴いてもらうだけで、不安が和らぐのを感じた。痛みと闘っているときはひとりぼっちだったけど、話しているときはひとりじゃない。当たり前のことだけど弱っているときにはつくづく有り難い。

痛みもだいぶマシになったところで我にかえる。汗だくで気持ち悪い。入院の可能性もあるならお風呂に入ろうとふらふらしながら浴室に向かう。ムダ毛の処理もしなきゃねと冷静な自分がいた。さっぱりついでに干していた洗濯物をなんとか取り込み片付ける。休むの下手くそ選手権の出場資格は十分にあるだろう。

夫の帰るコールにイオン飲料と、自分で食べるご飯を買ってきてと頼んだ。帰宅するなり想像以上に労ってくれる。手渡されたイオン飲料を飲むけどまったくおいしくない。汗をかいて下痢もして水分補給は必須だとちょびちょび摂取する。痛みはずっとあるけど小康状態だった。それでも夜は1時間おきに目が醒めてうっすらとしか眠れない。下血以降は排便もピタリとなくなっていた。


とある金曜日

きのう問い合わせをした病院へ車で向かう。午前8時過ぎに受付けへ行くと電話応対した女性が気付き声を掛けてくれた。簡単な問診に記入し番号のついたファイルを渡される。二階の待合スペースに移動し体温と血圧を測る。長椅子に腰掛けテレビを集中もせず見ていると番号を呼ばれ診察室に入った。担当は女性の医師だった。

①から④までを話すと目のした部分を指でちょいと下げ「貧血はないですね」と言い、仰向けになりお腹周りの触診、ゆっくり触られたりトントンとされたり痛い箇所を探っていく。「お尻も診ますね」と横向きになる。ウエストがゴムのボトムだったのでスムーズにお尻を出す。

「はい、ちょっと気持ち悪いですよ。力を抜いて」と先生の指が入る。「終わりました。ちょっと拭きますね」看護師さんがやさしく拭いてくれた。「キレ痔もいぼ痔もないですね。下血は腸管からかもしれません。大腸カメラはしたことないんですね。中尾さんの年齢であれば胃カメラと大腸カメラは定期的にしたほうがいいですよ。(親族に胃がんや直腸がん罹患者がいる)今日はこのあとCTと採血をします。時間がかかるのでその間、点滴をしましょう。そのあとまたこちらでお話します」と告げられた。

案内された長椅子に座っていると今度は名前を呼ばれる。ブラジャーに金属があれば外してお待ち下さいと指示され検査着を着用した。
「こちらに横になってください。CTの経験はありますか?」
「はい、脳外科で一度」
「いま痛いところがありますか?」
「このあたりが痛いです」
「それではちょっとテープを貼りますね。これから検査を始めますが、息を長めに止めてもらいます。合図の前に無理になったら呼吸してくださいね。」

ウイーンと鳴る大きい丸い機械のなかで息を止める。2回ほど繰りかえすとCTは終わった。次は採血ですねと言われるが何処に行くのか聞いてなかった。慌てて担当の看護師さんが来て点滴の準備の前に採血するのでと奥のカーテンのある部屋へ案内される。歩きながら、先生は今日が初めての勤務日で、普段は大学勤務であること、点滴は2時間コースであること、要するに互いに慣れなくて少し戸惑っていること。そんな人懐っこい看護師さんからバリバリの看護師さんにバトンタッチされベッドに横たわる。

腕を消毒され針が刺さる。血管女なのでなんの問題もなく血が抜かれる。次はいよいよ人生初の点滴だ。どんな感じなのだろう。準備に時間がかかっている。新人ナースに指示を出すも要領を得ない様子で結局自分で動いている。ああこの感じ懐かしいと仕事をしていた頃を思い出す。春の風物詩だなあ。そしていざ点滴。採血時よりも針の痛みはなくチューブのあたりにテープが何枚か貼られた。なにかあったらすぐに声を掛けてくださいとテキパキと片付けながらカーテンを閉め去っていくバリバリさん。かっこいい。しかもいい匂いがふわっと漂う。


点滴後はたしかにスッキリして肩凝りもなくなっていた。あれはなんだろう。


内線のなる音や救急受け入れの話し声、アナウンスがBGMとなり寝不足の私はいつのまにか眠っていた。ふと目が醒めると尿意に気づく。最初は小さくすみませんと声を出すも応答なし。徐々にボリュームをあげ、ついにはカーテンを開けすみませーんと叫ぶ。はいはいと別の看護師さんが来てくれ、点滴をゴロゴロさせながらトイレに案内してもらい終わったら呼び出しボタンを押す。迎えにきてくれた看護師さんは、このゴロゴロは重いよねと謝った。よくわからないけど軽いのがあるんですか?と聞くと、そうそう!なんでこれにしたんだろうって不思議顔だった。

ベッドに戻るとバリバリさんがやってきてあと30分くらいかな、もう少し頑張ってと励ましてカーテンを閉める。とても心地よく1時間以上は眠っていた。またふわっとあの匂いが漂った。

点滴が終わり落ちてこないのを確認したけど、誰も来ないのでカーテンを開け再びすみませんと呼ぶ。バリバリさんがすぐにお疲れさまでした〜と駆け寄って処置をしてくれた。お話好きの看護師さんに誘導され先程の診察室へ入った。

医師は血液検査の紙を出し、示す数値について説明を始めた。ここでは基準値外のものだけ記載する。幸いにも基準値をすこし外れている程度だった。

・白血球 H (炎症)
・好中球 H (炎症)
・リンパ球 L(炎症)
・T・BIL H (溶血//肝炎/胆石の可能性)
・LDH IFCC H (肝臓/赤血球/筋肉/悪性腫瘍)
・CRP H /(炎症)
・γ-GTP L(絶食状態)
・Na H(絶食状態)

そういえば診察時に、すぐ前日に食べたものを訊かれた。特に生モノと鶏肉。生モノは食べていないが、鶏むね肉の酒蒸しをサラダにのせて食べた。カットし中まで火が通ってたと話す。今年はウイルス性腸炎が流行しているから体調の悪いときは注意してほしいとのこと。いつもは大丈夫なメニューでも、免疫力が低下しているときは感染する可能性が一気に高くなるそうだ。

次はCTの画像説明。

「上記の血液検査からみて胆石などの可能性も考えられるが石は見当たらない。左側の腸が上から下まで腫れています。数値的にウイルス性の可能性もあるけれど熱や嘔吐もないので、そのことから見て虚血性大腸炎で間違いないでしょう」と診断された。検討をつけていた病名だった。

とうとう入院かと一瞬脳をかすめたが、医師は続けて話す。
「昨日の15時に排便と下血のあと、痛みと症状が落ち着いて、丸一日の絶食と脱水状態なので点滴をしました。今日と明日は消化の良いお粥か素うどんを食べてゆっくり過ごしてください。もし腹痛がきたら痛み止めを出しますので服用を。食後には整腸剤を。頭痛などあるかもしれませんがお家にある薬を飲むときは胃への負担が大きいので胃薬も併用してください。徐々に消化の良いものを中心に普通食に戻して栄養をつけていく生活を。一週間後になにか不調があればまた来てください。ほぼ完治する一ヶ月後には、必ず大腸カメラを受けてください。おだいじに」と診察は無事に終わったのであった。

入院の話は一度も出なくて拍子抜けした。現時点で可能な検査はしてもらい、記憶が一部曖昧だけど書き連ねた内容でだいたい合っているだろう。なにより字面の強い虚血性大腸炎とはどんな病気なのか。

虚血性(きょけつせい)大腸炎は、大腸の粘膜の中の血管に十分な血液が通らなくなることで生じる病気です。血管に十分な血液が通らなくなることを虚血といいます。一時的に虚血になるものの、その後回復する一過性型、腸管が狭くなってしまう狭窄(きょうさく)型、大腸が壊死してしまう(組織が死んでしまう)壊疽(えそ)型の3パターンに分けられますが、ほとんどの症例が一過性型です。

おなかの健康ドットコム

帰宅してツイッターで病名を検索するとツイートが出てくる出てくる。しかもここ数日のあいだに罹患した人ばかりなのが驚異だ。なかでも、バズっていた西餅さんの漫画がnoteになっていたのでぜひご覧いただきたい。私の6000字超のnoteよりも訴えかける情報量が段違いです!!!


会計を済ませ病院を出ると雨が降っていた。正面の調剤薬局が2軒に増えている。右は昔からの、左はオープンしたばかりで胡蝶蘭が置かれていた。これだけでも戸惑う案件だが、恐ろしいこと右に白衣の無表情なオジサマ、左は笑顔で会釈する雨合羽を着た女性が店の前に立っている。右を見ないように左の薬局に吸い込まれる。木目調のきれいな薬局だが慣れないのか誰も居ないのに少し手間取っている。丁寧な説明とお薬手帳と薬を受け取り外を見るとお迎えの赤い車が見えた。

時計は13時をまわっていた。診察、検査、点滴、診断。くたくたなはずだけど病名がついたことで安堵していた。車の中で一部始終を聴いてもらい、とりあえずよかったねと言う夫の横顔をみて力が抜けていくのを感じる。

帰宅してとりあえず体重計にのってみる。
1kgしか減っていない。
そんなものか。
非情だな。
でもお肌はすべすべになっていた。
デトックスの一面。

食べることに不安はあったが、消化の良い、腸に良い、などたくさん調べてたどり着いたのは定番のお粥。5日間はほぼお粥で過ごした。今回のことで万能だなと感心した。たまに茶碗蒸しやスープ、甘いものが食べたくてプリンも食べた。うどんはあまりおいしく思えず断念。食パンは消化のよいものに分類されていると知り、グルテンLOVEのわたしは飛びついたものの、バターもチーズもダメ。それなくして何の意味があるのかと憤怒したが、しかたなくトーストして食べる。お粥しか口にしていないと味覚もリセットされるのか、甘みがあり何もつけなくても美味しい。

少しずつ解禁しながらタンパク質の入ったヨーグルト、ほぐし鮭フレーク、かんたん参鶏湯など作ってみる。大好きなコーヒーが飲めない代わりにMILOへ挑戦してみた。牛乳も低脂肪にする。これが大正解で私のたのしみとなった。


MILOはいろんなレシピがあって楽しいね
かき混ぜてレンチンした温かいのが好き

あと、水も無理で何も食べられないとき唯一口に入れたのはe-maのど飴グレープ味。慰めになったよ、UHA味覚糖さんありがとう。リンゴジュースも!

すべてにおいて初めての体験だった。これまでたいしたことなく過ごせたのも有り難いことだ。身体のサインに気づきながらも何をしてよいのかわからないときは食養生でリセットするのも個人的に効果的であると学んだ。口に入れるもので身体は出来ている。図書館で借りた本がいまの私を表しているのだった。


【炎症性腸疾患】悪化させるもの/乳製品/揚げ物/人工甘味料/アルコール/カフェイン入り飲料
効果のあるもの/水/バナナ/米/アップルソース/トースト/白身魚/鶏肉
「治す食事 患う食事」

おかげで消化のよい普通食を食べられるようになりました。通常モードまでには、もう少し時間がかかりそうです。今回ばかりは無理せずいこうと思います。励ましやご心配、本当にありがとうございます!



6000字超にも及ぶ長いものを読んでいただきありがとうございます。病名は同じでも症状はひとりひとり異なると思います。この疾患において軽症と診断された私は自宅で療養ができました。病院での温かい対応、仕事が自由になること、これも強運なのだと再認識した次第です。リスクを知り対策することで予防できる病気があります。頭で知っているのと体験するのでは雲泥の差だと痛感しました。これで終わりではありません。来月、大腸カメラを受ける予定です。食べることを楽しみたい私は、健診や人間ドックの重要性を叩き込まれました。うまく付き合っていきたいものですね。みんなのおいしそうなご飯が羨ましくて仕方のない日々でした。元気になったら何を食べようか考えるのも悪くないです。食いしん坊は治りません!終わり。

【同じような症状だった方へ】
ほんとうに大変でしたね。お疲れさまです。
もう二度とあの激痛は嫌ですね。
消化の良いおすすめご飯や食材、調理法などコメント欄に残してもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。






















読んでくださりありがとうございます。