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愛しい創作、愛しい文章 #真夜中インター

    同人誌「真夜中インター」を読了したあと、サッポロ一番が食べたくなりました。やはり冊子後半の掲載作品は、読後感において有利、いや、それは単に私がいやしんぼだからでしょうか。今もメロンと白桃のパフェを待っています。

    同人誌を読みながら喫茶店でパフェを待つ、というとなかなか粋なシチュエーションのように思えますが、この豪華なパフェの注文はちょっとやけくそでもありまして。どうにもやってらんないなあという出来事を背負って、私は真夜中インター片手に近所の喫茶店に駆け込んだのでありました。子が不在の隙に出てきたもので、子が帰宅して私がいなかったら心配されるでしょうか。母は死にましたって書き置いてくれば良かったです。死んだ(ことになった)母は、「夏のパフェ  足守メロンと白桃のパフェ1000円」、店で一番高いそのパフェを頼むくらいには高ぶっていて、その高ぶりを夕飯の支度に向けたらどうだと頭の中で誰かが叫んでいる気もしますが、そんな声をかき消しながら美しいパフェを待ちました。メロンは艶々、クリームはぽってり。クリームの頂上に突き刺さった薄切りのメロンを、お行儀わるく指でつまみ、いざ。

 そうしたら、そうしたらですよ。パフェのメロンはぜんぜん甘くなくて、白桃はグラスの底で味がわからないくらいカチカチに凍ったものがあっただけでした。白桃…おいしい白桃…どこ…と、憤りつつ完食し、メニューのキャプションをいま一度読んでみると「足守メロンをたっぷり盛り付け、白桃パンナコッタ、メロンアイスを使用したパフェです」とあるではないですか。コピーライティング的にちょっと赤を入れたいテキストですが、これはどうも白桃はメイン材料視されていないぞガッテム。白桃パンナコッタ? そんなもの入っていたっけ? と甘くて白い何かをさほど味わいもせず飲み下した自分の舌を呪っています。

 飲食店が「夏のパフェ」と「足守」をうたう意義、そして甘くない足守メロンとカチンコチンな冷凍桃を使う度胸を、わたしはココへ来るたび問い続けなければいけません。北海道育ちのいやしんぼは、材料の質にいちいちけっこう、そしてかなり、どうしようもなくうるさい。こんな自分がちょっとイヤになる時もあります。憂さ晴らしのパフェくらい、冷静さを捨てて有難がる素直さが、欲しい。

    気に入らないパフェを前にこうカリカリしていると、喫煙席で煙をくゆらせる面々がやけに羨ましく映ります。煙で一服していた頃なら、こんなにきらびやかなパフェは今さほど必要なものではなく、コーヒーカップ片手にジリジリと焦げるタバコの先を眺めながら深く深くニコチンを吸い込み、ふーっと煙を吐き出せば、大抵のことは白いもやもやと一緒になんとなく、なんとなく消えていったものです。そんなことをつらつらと考えていたら、ハイライトの煙をうまそうに吐き出す紳士と、ガラスごしにすんと目が合いました。

 そして気がつきました。あちらの世界は、自由です。喫煙席のみなさんは全員がマスクを外していて、私には、ガラス窓と壁に囲まれた空間にも関わらずあちらがとても自由で、異次元な世界に見えたのです。最近は、どこへ行っても不自由であろう喫煙者が、完全に隔離されたガラスの向こうでとても自由な姿に見える不思議、これは一体どういうことなんでしょう。結局、高額パフェまで頼んでメロンが甘くないなどと心の中で愚痴っている私の方が、今、この瞬間はとても不自由に感じました。

★★★

 よい文章ってどんなものなんでしょう。上記の文章なんて、まったくもって支離滅裂です。フィクションかノンフィクションなのか、自分でもよくわかりません。真夜中インターという同人誌の感想なのかと思いきや、パフェに怒り、くどくど解説まで始まっています。挙句、喫煙室は自由だ、パフェに思い巡らす自分は不自由だなんていう持論まで展開し、結局、意味不明です。

 ここまで読んでくださった皆さん、本当にお疲れ様です。ここまで読んでくださった奇特な人は、真夜中インターを読んだ人か、作った人か、それとも牡蠣ミユキのファン…(いるかなあ。いると嬉しいなあ。だとしたら、ありがとうございます)か、いずれにせよ同人誌「真夜中インター」を知る人だと思います。こんなしょうもないパフェ文章を読了するには、ぜったいに何かしらの「愛」が必要なのです。本当にありがとうございます。

 真夜中インターに掲載された文章は、こんな駄文よりも、もっともっと素晴らしくて、温かくて手元に置いておきたくなる作品ばかりでした。インターネット上でお付き合いのある人ばかりなので、私にも欲目は当然あると思います。それも愛です。いつかきっと、インターネットという広いようで狭い世界を抜け出して、(いや、抜け出さなくてもいい、お付き合いできなくなるのはかなしいから。比喩)もっともっと大勢の人の目に触れる場所に出てほしいと願いたくなるものばかりでした。紙の本にしてくれて、本当にありがとうございます。同人誌も作り続けていれば、「夫のちんぽが入らない」の著者さんみたいな形で出版界にデビューできるかもしれない、なんて考えた真夜中でありました。

★★★

   こうして知っている人の作品を手に取ってじっくり触れると、(web上で読むのは、やはり「じっくり」とは言い難く…)、やはり私も何かしら書いていたいと感じました。もう仕事したくなーい、本だけ読んで暮らしたーいなんていつも考えているだらしない私に、「ほらほら、創作は楽しいんだから」と真夜中インターという本に手招きをされた感覚です。

    私は堪え性がなくて飽きっぽくて、気持ちにムラがあって、でもやはり仕事でも駄文でも書くことから離れられない。それは、結局書くことが、言葉が好きだからなんですよね。

    困ったなあ。もう。でもね、承認欲求、自己顕示欲上等です。書く人は、結局誰かに読んでもらいたい。書いてもっと楽しみたい。どうにかして私の「これだ」というものを見つけたい、なんて考えた真夜中インターでした。

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