ku ni sa ki

鳥海山と日本海のはざま

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最近の記事

自分もそうなるかもしれないという怖さはどこから?東電OL殺人事件を知って感じたこと

事件に対する得も言われぬ当事者意識 つい先日までこの事件を知らなかった。 偶然、聞いていたラジオで話題にあがり、気になってすぐに調べてみた。 なんとなく開いてみた関連記事に、どんどんと吸い込まれるように読み進めているうちに、涙が出てきた。 怖い、というかおぞましいというか、表現するのが難しい感情。でもそれは、事件のむごさに対してではなく、どこか自分の内面をえぐられるような感覚から湧いてきたものだった。 この記事にもある「彼女は、私かもしれない」という感覚。わたしが聞い

    • 教育が大人のエゴになってしまう危うさをどうしたらいいのか

      教育現場に関わるというのは、わたしにとっておもしろいと思えることで、かといって毎回満足のいく内容になるわけではない。 たとえば、地域の高校で、「地域で活躍する人からお話を聞こう」というような内容の講演を頼まれる。先生は「歳の近い人なら、生徒も興味を持ちやすいと思うので」と言う。なるべく興味を持ってもらえるような話をするよう努めるものの、聞いてるんだか聞いてないんだかわからないような生徒たちを前に、なぜかわたしが気疲れしてしまう。刺さってないんだろうな~と感じながら話し続ける

      • 言葉のプレゼントって素敵だ

        文通をしている友達がいる。 同じ故郷を持ち、お互い慣れない東京で働いていた頃は、休みの日を一緒に過ごしては気分転換をしていた。 お互いの最近うれしかったことや、悩んでいることを話し合い、励まし合いながら、あのタフな日々を共に乗り越えていたんだなあとしみじみ思う。 私が引っ越した今、離れているので直接会うことはできないけれど、月に1度手紙を送り合うことでその関係を続けている。 コロナ禍で仕事に変化が訪れ、これまでに経験したことのない苦労に立ち向かっている友人に、「日日是好日

        • 生きることは食べること

          仕事を辞めて、地方に暮らすことを選んだ理由をひとつ挙げるならば、 「食べることにもっと身体で向き合いたかった」とでも言えるだろうか。 大学時代から農家さんや漁師さんと友達になっては、作業を手伝うという名目で訪ね歩いた。 それまで「まち」で育った私は、農作業なんて体験程度でしかやったことがなく、海は遊びに行くところだったので、 実際に野菜が育ったり、魚が水揚げされたりするのを見て、好奇心が掻き立てられた。 またそれ以上に、農家さん漁師さん、という今まで想像もできない遠い存在だ

        自分もそうなるかもしれないという怖さはどこから?東電OL殺人事件を知って感じたこと

          実験台になると決めた日

          新卒で入社した会社はいわゆる大手企業で、研修は3カ月間、同じ職種の同期は200人、全都道府県に事業所があるようなところだった。 就活中に説明会等で出会った社員は、やりがいをもって働いているように見えた。入社してみて現実を知るというのは、よくある話だ。就活ではどこも良い面を見せたがる。 配属された部署で出会った社員は、やりがいとはかけ離れているように見えた。 会社に来るのが憂鬱でないという人などいないんじゃないかというくらい。 私も一時期、毎日起きるのも家を出るのも電車に乗る

          実験台になると決めた日

          共に食べて、共に乗り越えた。友達が家族になるまで

          私にとって大学生活は人生の転機だったといえる。 あの大学に進学していなかったら、確実に今の自分はない。あの4年間に大切なものがたくさんできた。 これは書き残しておかないと、とふと思ったので記録する。 私が通った大学を一言で表すならば、とても変わっている。 一学年は160人ほどと少ない。しかも初めの一年は寮生活で三食も一緒。 だから嫌でもみんなと顔見知りになる。 私は元々他人といるのが得意ではなかった。 うわべで上手くやることはできるのだが、それが長い時間続くとストレスが溜

          共に食べて、共に乗り越えた。友達が家族になるまで

          人生学び続ける祖父

          祖父から小包が立て続けに2度届いた。 「書類を送りますので参考にしてください。ゴミも入っていますのでそれは捨ててください」と電話口で言っていて、冗談だろうと思っていたら、本当にゴミが入っていた。 ゴミというのは私が無情な孫なわけではなくて、訪問販売お断りのシールなんかが5枚も入っていたのだ。 (私が今住んでいるところに訪問販売なんてしに来る人がいたら、よほど行き詰まってるんだろうなって同情してしまう) 祖父は昔から、「新聞の切り抜きをするのが好き」な人だ。 本人は勉強しなが

          人生学び続ける祖父

          身体性を研ぎ澄ますこと

          美術大学が主催するプログラムを少し見学させてもらった。 プログラムの受講生たちは1週間、辺境と呼ぶにふさわしい地域を旅して、普段はできないような体験を重ねながら、最後には各々が感じたことを発表する。 旅には”メンター”と呼ばれる各界を代表するアーティストが同行する。 メンターの方々の話を聞いていて、共通したものを感じた。 それは「身体性」だ。 現代はスマートフォンの普及やVR・ARの発達などにも見られるように、情報を得る手段は視覚に偏っている。 それにより、その他の感覚が

          身体性を研ぎ澄ますこと

          「あるもので」がとってもすてき

          ある日職場に行くと、一通の手紙を渡された。送り主は、先日仕事でお世話になったおかあさんだった。 中を見てみると、そこには3種類のお漬物のレシピと手紙が入っていた。 その夫婦には先日、行政が企画したツアーを実施した際、そば打ち体験でお世話になった。 旦那さんがそば打ちを教えてくれて、奥さんはお友達と一緒に手料理を振る舞ってくれた。 そのときの料理がどれも美味しくて、感動した。 「卵とか肉とかはないけども、ここにあるものだけで」 とおとうさんが言っていた。 今で言うビーガンを

          「あるもので」がとってもすてき

          ちまたの贈与経済

          贈与経済という言葉が、内田樹さんの本に載っていた。 神田の古本まつりで出会ってから、最近は内田さんの本を読み漁っている。 贈与経済というのはなんだか聞こえのいい言葉だが、実際意味はよくわかっていなかった。 田舎特有の「持ってけ持ってけ」と大盤振る舞いであげたりもらったりするあれのことだろうなあと思っていた。 内田さんの本には、贈与経済は他人からもらうことから始まると書かれていた。 他人から何かをもらう(してもらう)ことで、自分もそれに返さないといけないという気持ちが生まれ

          ちまたの贈与経済

          今の世の中、生きづらい?

          いしいみちこさんの講演を聞いた。 いしいさんはドラマティーチャーという肩書を持つ。 演劇というものにはあまり縁がなく、演劇の先生と聞くととてつもないエネルギーを持った人なのかなと、少しびくびくしていた。 参加を決めたのは、「演劇と教育ー生きる方法を学ぶー」という講演のタイトルに惹かれたから。「私も生きる方法が知りたい!」と思った。 講演を聞いて、これまでの演劇の概念が変わった。自分の中で、演劇というものの認識が仰々しいものから、自然なものに変わった。 いしいさんは福島県で高

          今の世の中、生きづらい?

          当事者になることの難しさ

          知人がいる場所は、原発の新設予定地となっているところのほど近く。約40年間にわたる実際的な反対運動によって、建設準備段階の状態が続いている。3.11後は新設の動きが止まっていたようだが、突然建設準備工事が再開されることになった。側から話だけを聞いていると、かなり強引なように思われた。 島民で反対している方の言葉に胸が痛んだ。「町民一体となって原発に頼らないまちづくりに取り組もうとしていたのに」。 40年近くの間、原発を建てる建てないと地域の人たちを振り回し、推進反対と分断を生

          当事者になることの難しさ