哲学ダイアグノーシス_-_コピー

note版 哲学ダイアグノーシス 第十号 レヴィナス

<note版>

あなたの想いが哲学になる、

経営者・ビジネスリーダーのための読むエクササイズ

<哲学ダイアグノーシス>

第十号 レヴィナス


ホスピタリティという言葉、ビジネスの世界でも、もうすっかりおなじみですね。「おもいやり」や「おもてなし」といった訳し方がされることもあり、接客業はもちろん、さまざまなビジネスにおける顧客への接し方について語られる際に話題となる言葉です。

ご存知の方も多いかと想いますが、hospitalityとはラテン語のhospesを語源とする言葉であり、このhospesはhospitalやhotelの語源となった言葉でもあります。そのため、医療業界やホテル業界にホスピタリティのあり方の原点が求められることも多いようです。また、東京ディズニーランドや東京ディズニシーなどを運営するオリエンタルランドのすぐれた接客のあり方がホスピタリティのお手本としてよく挙げられます。

また、ホスピタリティは顧客への接し方にかんしてのみ問題となるだけではありません。企業がスタッフとどうかかわるかということを考える際にも問題となることであり、こういった側面については、スターバックスコーヒージャパンの障害者雇用への取り組みが成功例としてよく語られます。

さまざまな業界でさまざまな企業がホスピタリティの充実に力を注いでおり、マニュアル化なども進められているようです。このようなホスピタリティの熱心な研究や実践が、能率を最優先にして利益を追求するばかりではなく、企業と顧客との間に、そして企業とスタッフとの間に人間らしい関係がともなっていなければならない、そういったビジネス観の変化と結び付いているものであるならば、またその変化をおし進めるものであるならば、それはたいへん喜ばしいことであり、私も哲学の立場からビジネスリーダーの皆さんにこれからもさまざまなご提案をさせていただきたいと想っております。

ところが、このホスピタリティ、哲学の世界では「歓待」と訳されることが多いのですが……哲学者たちの手にかかると、とたんにやっかいな問題となってしまうのです。哲学的に突きつめて考えると、それはマニュアル化などとは相いれないものであり、さらには、ホスピタリティの実践なんてそもそも不可能だ、ということになってしまうのです。困ったものですねぇ(笑)。しかし、前回ご紹介したデカルトの「方法的懐疑」ではありませんが、あることの可能性を徹底的に疑うことによって、かえってより大きな可能性が見えてくるということも、世の中には往々にしてあるものです。ですから今回も哲学者のやっかいな議論にしばらくお付き合いください。もしかしたら、ホスピタリティにかんして、大きなヒントを発見なさるかもしれませんよ(笑)。今回は、フランスで活躍したユダヤ人哲学者、エマニュエル・レヴィナス(Emmanuel Lévinas、1906年~1995年)の哲学についてお話します。

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