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丹沢で初めてヤマビルに遭遇した日のこと | 鶴巻温泉駅~念仏山~高取山~浅間山~蓑毛乗越~蓑毛

丹沢の大山山麓でヤマビルに遭遇した時のことを書いてみたい。長年山に登ってきたが、ヤマビルを見たのは初めてのことで、しっかり血も吸われた。衝撃的な出来事だった。


2023年6月下旬の梅雨晴れの日のこと。
鶴巻温泉をスタートして、いつもの登山口から尾根道に入り、吾妻山から善波峠を越えて念仏山に着いた時だった。

水分補給をしてふと足を見たら、膝の上辺りに尺取虫みたいな茶色い虫がくっついている。虫 (とくにやわらかい系) が苦手な私は、「ウゲェー !」と葉っぱでつかんで草むらに放った。

尺取虫とは少し違うとは感じたけれど、この時はヤマビルだなんて思っていなかった。いや、思いたくなかったのかもしれない。

吾妻山から相模湾方面を望む


吾妻山から善波峠へのなだらかな尾根道
この時はまだヤマビルに遭遇するとは思ってもいない


念仏山山頂 
ここで初めてヤマビルに気づく

たまたま虫がついていただけ、と気を取り直し高取山に向かっていると、また同じ虫が足元に付いているのに気づく。「ウギャーッ !! 」 と叫んで木の枝で引き剥がそうとするが、なかなか剥がれない。全身に鳥肌がたつ。男性のトレイルランナーが追い越していくが、助けてくださいともいえない。

もしかして、ヤマビルなのだろうか?
ヤマビルかどうかスマホで調べるなんて、ここまで来てしまったら怖くてできない。

高取山の山頂で冷静になって考えてみる。やはりヤマビルの可能性が高い。いつもよりやけに人が少ないのも気になる。きっとヤマビルがいるからだ。

どうしよう。
忌避剤も塩も防御するものがなにもない。
途中で下山するか、それとも蓑毛乗越まで行くか。迷いながらそのまま浅間山に向かって登っていった。

高取山山頂

なだらかな尾根道を足早に登っていく。ぬかるみに着地した時だった。ヤマビルらしき虫が頭をビニョーンともたげて靴に飛びついてきた。
な、なんてヤツなんだ。いったいどうやって私のことを察知しているんだ。これは間違いない。ヤマビルだ。とにかく蓑毛乗越へと急ぐ。

ヤマビルがいないか地面に目を凝らし、瞬時に足を落としていく。できるだけ接地時間を短くしなければ。我ながらいつにない身軽さだ。もう、どんな急登だっていい、ヤマビルさえいなければ!

なんとか蓑毛乗越までたどり着きホッとする。あとは蓑毛に下るだけだ。
でも、この先に最大の試練が待ち受けていた。

蓑毛乗越


蓑毛へと下る道
古道の雰囲気が残っていて好きな道だが
それどころではない

間違っても転んで尻もちなどつかないように、神経を集中させ急な道を下っていく。登山道から林道へと出た時だった。
靴の上をヤマビルがすごい勢いであがってきて、靴ひもの隙間からクネクネと入り込もうとしている。伸縮するヤマビルを棒きれで引っ張り出そうと格闘する。ヤマビルも私も必死だ。やっとの思いで引き剥がし、靴で踏み潰した。(ゴメン💧‬)

他にもヤマビルが入り込んでないか靴の中を念入りにチェックし、ズボンもまくってみる。大丈夫だ、中まではやられていない。そう信じてアスファルトの道を下った。

ヤマビルに襲われる心配のない道はなんて楽なんだろう。

蓑毛大日堂の隣にあるカフェ「やまくじら」でアイスコーヒーを飲み、心を落ち着かせる。
無事に下山できてよかった。帰りは秦野駅まで歩いた。

蓑毛のカフェ「やまくじら」で

家に帰って靴下を脱いだら、なんと両足に血のかたまりがベットリついていた!!  くるぶしの上辺りを一ヶ所ずつ噛まれている。
なんで!?  あれだけ注意していたのに。痛みもなにも全く感じなかった。
いったい、いつ? どこで? どうやって入ってきたんだ? そしてどこへ消えたんだ?

あとで知ったのだが、ヤマビルの吸血時間は1時間位だそう。私の知らない間にそんなに引っ付いていたのか。気を失いそうになる。


もう30年以上も前のことになるが、私が縦走や沢登りなどで丹沢の山々に登っていた頃は、ヤマビルの話など聞いたことがなかった。それがいつの間に大山山麓域にまで広がることになったのだろうか。

もともとヤマビルは東丹沢の奥地に生息していたらしい。山林の荒廃など様々な環境の変化によって、シカやイノシシなどが里山や耕作地などに下りてくるようになった。同時にそれらの野生動物に付着していたヤマビルの生息域も広がったようだ。

今年元日、蓑毛から大山を往復した。ヤマビルがお休みしている冬の間に、もう一度昨年と同じ鶴巻温泉からのルートを登っておきたい。しばらくは冬季を中心に、大山山麓の山々を歩いてみようと思う。












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