Netflixドキュメンタリー「グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル」を見た。あるいはあなたはあなたではないという問いについて。


伝えることに特化してます

私は現在、いくつかの仕事を抱えているけど、そのほぼ全てが「伝えること」に特化している。(というか、伝えること以外は無能だ)

本業は障害者向けクラウドソーシングサービス「サニーバンク」の広報的な仕事でこのサービスの認知を広めることに必死にない頭を絞っている。

noteで「くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談」という連載をしているが、これもまた自分たちの障害を伝えることがメインだ。

最近はゼネラルパートナーズと組んで「発達障害者が感覚過敏向けのグッズを使ってみた」という企画も立てた。

また、いろんな媒体で書いたりまとめたりしていて、ネットにおける情報発信についてはそこそこ影響力はある、と自負している。

影響力とはなにか

しかし、この「影響力」の源はナニか、といえば特段突き抜けた文章力やコネクションがあるわけではなく、ツイッターでフォロワー数がかなり多いという「(プチ)インフルエンサー(笑)」なだけだ。だから、今ツイッターがなくなった私の影響力なんて砂上の楼閣のように消えて無くなるだろう。

影響力っていうのも曖昧な言葉だけども、「誰かが情報を発信することで、他人がアクションを起こす」というのが「影響力」の本質だと思っている

たとえば、私がクウドファンディングを紹介したら、何人かはクリックして見てくれて、そのウチ1人くらいは実際にクラファンに投資してくれることもあるだろう。この一連の流れを作る起点となるのが、私にとってはツイッターということだ。(今応援しているクラファンは↓)

いま、経営や広報に関わるビジネスパーソンにとって、プラットフォームをどう使いこなすかがかなり話題になっているようだけども、ツイッターのユーザーでしかない私でもそこそこの「影響力」があるという実感がある。そして、これを組織的に運営できれば多くの人たちの行動を左右できるのは当然のことだと感じる。

そして、それは果たして良いことなのだろうか、2016年11月8日のあの日からずっと自問自答している。

「グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル」を見た

仕事を終えてツイッターを見ていたら、偶然、Netflixで「グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル」というドキュメンタリーを配信していることを知った。

2018年、選挙コンサルティング企業「ケンブリッジ・アナリティカ(CA)」がFacebookから8700万件の個人情報を不正に入手し、2016年のブレグジットと米国大統領選挙に影響を与えたという疑惑が持ち上がった。このドキュメンタリーはこの疑惑の中心となった複数の人物を密着取材したものだ。

この問題は本当に複雑であり、複数のキーパーソンの思惑が絡み合ったまま特に説明もなく進行するので内容の理解が難しい箇所もあったが、まるで映画のような展開が続いて最後まで固唾を呑んで見ていた。

この疑惑そのものはアレクサンダー・ニックス最高経営責任者(CEO)は停職処分となり、CA社自体も倒産したことで幕を閉じたが、この疑惑が突きつけたのは「民主主義の健全性とは何だ」という問いだ。自由意志に基づく選挙は民主主義の大前提であるけども、選挙結果をアルゴリズムで左右できるとしたらそれは健全でありえるのだろうか。

CAがどれだけブレグジットや大統領選挙に影響を及ぼしたかは研究者によっても評価は異なるけど、この手法が洗練されればされるほどよりわかりにくくより自然に、そして誰が何をしているかわからないまま「世論」が作られていく可能性は高いだろう。(というかその気配は今の世の中の端々に感じる)よく漫画で「この魔王が最後の魔王とは思えない。第2、第3の魔王が現れるに違いない」というオチがあるけども、まさにそういうことが今のSNSの裏側で進行しているのだ。

だが、SNSを使わないことはこの高度情報化社会において不可能だし、SNSの持つ影響力は年々向上している。その影響力で食べている人も増えている。(私もその一人だ)

このドキュメンタリーにあるのは、希望ではない。既にパンドラの箱は開いていて、あとは何が起こるのかを眺めるしかないのか、という息苦しさ、重苦しさがどこまでも漂っている。

あなたはどこまで

ふと、たまたまだけども、私が昨日ツイートしたことがある。

人間はアイデンティティーと思っていることも、環境やインプットの方法で簡単に変わってしまうし、想像以上に慣れしまうものだ。ましてや、それが日々無数に浴びる情報にどこまでアイデンティティーを保てるできるあろうか?

あなたは、どこまで、あなたなのだろうか。
わたしは、どこまで、わたしなのだろうか。

私たちは変わっていく。しかし、その変わっていく方向はせめて私の手にあってほしい。それすらも叶わなくなれば、それは「わたし」が消えることではないのだろうか。

そういうことを日々自問自答しつつ、影響力を正しく増やしていきたい。

妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。