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東京(八王子)→北海道(札幌) その1

北海道に会いたい人が居た。
7月16日までに。
20歳が終わる前に。
どうしても会って思いを伝えたいと思った。

飛行機代を貯めるためバイトや仕事に興じるも、いい結果は訪れなかった。
6月末、あと1ヶ月で僕の生まれた日が。
飛行機代には届かない貯金額と、憂鬱なワンルームアパートの隣人の生活音に押しつぶされそうだったその時、アパートの駐輪場の、僕の相棒、原付「名をハスラーと言う。」がなんだか「俺がいるだろ?」って顔をしてるような、そんな気がした。

6月中の予定を全て詰め、終わらせた。
出発日は心に任せるとし、結果7/4に出発することに。

来る7/3、アパートの駐輪場で偶然出会った「先輩方」と酒を交わす。

ギターを背負い原付に跨っていた人に声を掛け話していくウチに、中学時代電話越しに始めたてのギターでニルヴァーナとロックンロールを掻き鳴らしていたあの人だと気付いた。
再開を喜ぶとその先輩の友達も来て、3人で良くつるんでいたのだ。
TOMMYとΧ、本名は伏せよう、僕ら世界に飛び出してから、だいこうかいしようかな。

豊田駅徒歩5分程の景色の良い原っぱに
楽器を持ち寄って、歌を歌ったり。
「北海道出るまでに、飲み行こうぜ。」と約束を交わしていた。以下その約束。

僕が初めて歌ったバーで。
昔のロックを聴きながら。   
「Monitoring Moon」Χが歌い出す。
僕も続いて「Marlboro」空間丸ごと音楽的。
各々の曲が鳴り響く夜中1:30、ボクら何者かにはなれただろう。

外の騒がしさに耳を傾けると予報外れの雷鳴が響いていた。
空に広がる紫電がなんだか美しく、畏怖の念は感じなかった、ただ何か超質量のプラネタリウムを体感している様に思えた。

紫電の中歩いて退去手前の僕の家へ向かう。まるで小説の1ページ。
濃いめのハイボールを「FREE」と書いてあったのでライブハウスから持ち去ったサワーグラスに作り、夢を語ったりしながら。朝まで。

だらけきったソファで朝を感じ、二日酔いの様な気分。
来る7/4、20時。
念入りに風呂に入り、髭を剃る。
エンジンオイル、替えの洋服、レトルト食品、煙草をリュックに詰める。
原付の鍵はもう既にポケットに入っていた。

LITTLE WONDERSのステッカーが貼ってあるヘルメットを被り、あの人からの贈り物、赤い革ジャン。

エンジンはキック一発で掛かった。

「ハスラー。」

SUZUKI、7.2馬力、50cc、ツーストローク、オフロード、白い煙、スロットルの重さ。
普段はうんざりするほどの焦げ臭い匂いが背中を押していてくれていた気がした。

ミラーを直す、スタンドを払って飛び乗る。
回転数は4000/rpm前後、ハイスロットルをジリジリと回す。
クラッチをジリジリと繋げる。
パチン、と繋がる、力が。
瞬間、何か始まった気がした。

「北海道、行くぞ。」

ツーストロークのエンジンの白い煙が夜中の住宅地に響く、、、


「令和やぞ」


その2へ続く!


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