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禍話リライト 葉に乗った思い出

「この話はさ、幽霊も怪異も呪いも出ない。恨みつらみやサイコパスな人関係でも無い。でも怖いなぁっていうちょっと毛色の違う話でね。あぁいや、蓮コラとかそういう恐怖症でも無いんだよ。

…ただ、蓮の話ではあるかな。」


葉に乗った思い出

高齢の方の聞き取りをするお仕事をなさっている方から頂いた話なのだが、その聞き取りの際に一定の年齢層の方々から共通する体験談を聞くことがあった。

曰く「自分は子供の頃、蓮の葉の上に乗ったことがある」と。

日本に生息していない蓮の一種には、確かに子供程度の重さならば上に乗っても沈まないものがある。だが日本在来の蓮には人の重さに耐えられる程の浮力を持つものは無い。
偶々その事を知っていた投稿者は疑問に思い、更に深く話を聞いてみた。だが、彼等に別幼少期の海外生活は無く、痴呆の進み具合なども相関関係に無かった。

「その後も聞き取りを続けてたらさ、分かったんだよ。」


『彼等が幼少の頃、テレビCMで海外の少年が蓮の葉に乗る内容のモノが流れていた。
その記憶が加齢と共に変質し、いつしか自分の経験として記憶された』
結論としてはそんな他愛もないりゆうだった。なんの怪奇現象もヒトコワも関わらない。

だが投稿者はその後少しテレビを見る時間を減らそうと決めたそうだ。

「ぼーっと見てる映像を、自分の記憶に置き換えちゃうんじゃないかって。
自分で自分の記憶を改造して、それに事に気づかないのって怖くないですか?
やはりテレビは良くない!壊さないと!」
半ば茶化しながら彼は言った。
かぁなっき氏も釣られて苦笑いしお茶を濁した。

しかし、とかぁなっき氏は後述する。
「でもさぁ、これって珍しい蓮の知識とかCMの内容とか、そういうものが無かったら気付かなかったかもしれないじゃん?
しかも昔はテレビしか見るもの無かったから原因を辿れたけど、今は皆がそれぞれ色んな媒体を見てるわけで。
てことはさ、今の自分達が年取って、各々が偽りの記憶を生んじゃったらさ。
痴呆じゃないのに幼少期の変な記憶について皆が口々に言い出して、しかも誰もそれを指摘してくれないとしたら…」


※この話はツイキャス「元祖!禍話 第十二夜」より、「葉に乗った思い出」という話を文章にしたものです。

この話が含まれる放送の一回前には語り手のかぁなっきさんの記憶に関する「資料館の記憶」が、次の放送ではこの話を聞いたリスナーさんが思い出した記憶にまつわる「河童の鳴き声の話」が、語られました。

お時間がありましたら合わせてお聞き頂くと三週に渡り記憶に関する話を聞かされたリスナーの追体験が出来て味わい深いかと思います。特に「河童の鳴き声の話」については投稿者様本人がリライトなさっておりオススメです。

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