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「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」 展覧会レポート (文:こたにな々)

現在、六本木の21_21 DESIGN SIGHTにて行われている企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」について、7/7に行われたオープニングトークでの内容も少し交えながらレポートしていきます。

「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」

---------2018.06.29-10.14  21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2

展覧会ディレクター:中村勇吾   音楽:小山田圭吾(Cornelius)
会場構成:片山正通(Wonderwall)
  

インターフェースデザイナーである中村勇吾氏がディレクターとなり開催されている本展。コーネリアスの小山田圭吾氏が制作した楽曲に合わせ、9人の様々な分野の作家が映像を制作。会場構成を担当した片山正通氏によって、会場全体が構造物(アーキテクチャ)なっている。 ちなみに中村勇吾氏とコーネリアスは、自身の新譜『Mellow Waves』の中の1曲である『いつか / どこか』のMV監督や、NHK Eテレ『デザインあ』の映像監修、今年2月に開催された『谷川俊太郎展』でも映像と音楽でタッグを組んでいる。

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”音のアーキテクチャ” と名付けられた本展に何も想像が付かず会場に入ってみると、まずコーネリアスが今回の為に制作した楽曲に乗せて、展覧会のロゴが微細なリズムと共にくるくるとその姿形を変えてうごめいていた。

このロゴは、コーネリアスのジャケットやグラフィックデザインをずっと担当している北山雅和氏によるもの。グリッドの上に光の文字を一筆書きで書いて制作されたそう「文字かなんか分からない不可解な感じにしたかった」

なるほど。と思いながら進むと次は、部屋を丸々一つ使い3面の壁に向かってコーネリアスの今回の楽曲のスタジオ映像が投影されていた。

ここで気付くのは、個々で音楽が流れているのではなく、会場全体にひとつの音楽が流れていること。先ほどのロゴしかり、ひとつの音楽によってすべての ”動き” と作品が繋がっている。同期していると言えばいいのか、それによって大きな ”強さ” のようなものを感じる。

そして、ただライヴ映像のようなものが流れているわけではなく、壁を3面使っている事によって、スタジオの真ん中にいるような接触感や特別感が演出されており迫力があった。リズムの間に生まれる ”間” や楽曲の間に挟まれている静寂さえも感じる事が出来た。

空間・建築・音楽・精神・意識にまつわる言葉を中村勇吾氏が投げて、コーネリアスが曲として繋げたというテーマ楽曲『AUDIO ARCHITECTURE』

後ろを振り返るとモニターに楽曲の歌詞が映されており、よく見ると歌詞さえも音に合わせて震えていた。

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ずっと居たい空間に名残り惜しくも次に進むと、巨大な横長のスクリーンというか、ステージが配置されており、そこに8人の作家の作品映像が一斉に流れていた。もはや大きな建造物だった。

その状態ははっきり言ってカオスだった、でも何か嫌じゃなかった。呑まれるようにその大きな ”固まり” を呆然と見ていると、ステージにはどうやら上がれるらしい事が分かり、大人は遠慮しながら手をかざしたりする中、子ども達が嬉しそうに走り抜けていた。映像の中に入れる事が分かり、音に合わせるようにとても楽しそうだった。

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ステージの裏に回ると表で大きな構造物になっていた映像作品たちが作家ごとにひとつひとつのブースに分かれてじっくり体験出来るようになっており、なぜかホッとした。(自分の知っている形の ”展覧会” の形だったからだと思う。)

この展示構造を中村勇吾氏は「音楽を軸に空間と時間が全部連動している。(9人の作家の中の)一人の一行を追ってもいいし、その場にとどまってもいい。空間という枠組みで時間のループの中、色んなデザインをしていく。」と表しており、片山正通氏は「段差を上がると空間の中に没入出来る。裏はパラレル、8人の作家さんの時間が同時に流れる。」と言っていた。

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コーネリアスの数々のMVを制作してきた辻川幸一郎氏とバスキュール、北千住デザインのブースでは、実際に体験者の顔を利用して自分だけのミュージックビデオを作れる仕様で、カメラに映った自分の顔が音に合わせてどんどん変形やモーションと共にアクションを起こして行く。

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ひとつひとつを丁寧に観ながら、私が一番無意識に目を引かれてしまったのは、勅使河原一雅氏の『オンガクミミズ』という作品だった。

渦のような、よく見ると毛細血管のような網状の何かが大きくうごめきミミズになっていくという、身も毛もよだつ作品だったのだけど、何か目が離せず、ずっと観てしまったのと、何よりもその色調のインパクトが強かった

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テーマ曲である『AUDIO ARCHITECTURE』は5分くらいの楽曲で、気付くとフッと終わっていて、また少しの静寂を挟んで延々とループする。しかしそれが全然苦では無く流れている時間に身を委ねるようにとてもリラックスした不思議な状態が続いていく。気付くと何時間でも滞在出来る空間だった

中村勇吾「一番不安だったのは行こうと思えば5分で観れちゃうから、鍵はワンループ耐えられるかっていう事だった。ワンループ観て、もうちょっと観るかって。内覧会の時に(三宅)一生さんが見てて、これ深夜営業した方が良いよって。お酒出して(笑)」

「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」

会期:2018年6月29日(金)- 10月14日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

展覧会ディレクター:中村勇吾
音楽:小山田圭吾(Cornelius)
会場構成:片山正通(Wonderwall)
参加作家:稲垣哲朗、梅田宏明、大西景太、折笠 良、辻川幸一郎(GLASSLOFT)×バスキュール×北千住デザイン、勅使河原一雅、水尻自子、UCNV、ユーフラテス(石川将也)+阿部 舜
技術監修:遠藤 豊(LUFTZUG)
グラフィックデザイン:北山雅和(Help!)
テキスト:ドミニク・チェン

●あとがき●

会場内は規定の中での撮影OKでしたが、このアーキテクチャと名付けられた空間は写真はおろか、動画にさえも映らない、不思議な一体構造でした。その場に行かないと、時間を感じ取らないと分からない何かがそこにはあり、文章では表すことが到底出来ないと瞬時に悟らせるようなうごめく何かがそこにはありました。でも、恐怖でも楽観でもなく、何も考えずにずっとそこに居れるような不思議なもので、もし違う日に行ったらまた違う何かが、もし違う場所で見る事が出来るならば、また姿を変えているような不思議な魅力のあるものでした。オープニングトークでは皆さんに質問も出来たのでまたどこかで書きたいと思います。

最後に、小山田さんに手製のZINEをお渡し出来て嬉しかったです。エールも頂いて...ありがとうございました!!

文:こたにな々 (ライター) 兵庫県出身・東京都在住 https://twitter.com/HiPlease7

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