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『最果タヒ 詩の展示』 レポート (文:こたにな々)

『氷になる直前の、氷点下の水は、 蝶になる直前の、さなぎの中は、 詩になる直前の、横浜美術館は。 ―― 最果タヒ 詩の展示』

-------------------------------------2019.02.23-03.24 横浜美術館

ー「最果タヒ」はあの頃のインターネットに沈んでいた「私たち」ひとりひとり、そのものなんだ。

同世代で同じ神戸という地に生まれた「最果タヒ」はもしかしたらクラスに居たかもしれないし、友達だったかもしれない。

でも私も詩を書いているから、あの平成の暗いインターネットの中でHTMLの中で、teacup.掲示板の中で、mixiの底で、毎日浮上を夢見て、夜中中書き散らした私たちの言葉たちを、グラフィックと共に「最果タヒ」と名付けて明るい場所に勝手に持って行った彼女とは、友達にはならないと決めたし、共感なんかしないと決めていたんだ。

私も詩を書いているから。

ー決めたのに、堅く堅く決めて入ったのに、奥に進むにつれて、容易に泣きそうになった。

「最果タヒ」は私たちであって、私は「最果タヒ」ではないのに、私が自分でやってる展示と錯覚するような瞬間があって、そこにある言葉に「許された」と思った瞬間に私は勝ちも負けもなく、許容されてしまったんだ。

私たちが暗い暗いインターネットの底で書いていた言葉は、彼女が明るい所に持って行って、連れ去ってしまった。

明るい所に連れ出してくれたんだ。それがひどく羨ましくて、悲しくて、嬉しくて、優しかった。

もっと言うと、この展示が本当に私の言葉であったなら、私は世界で一番大好きなあの娘に見せたかった。私の言葉を浴びせたかった。
私は「最果タヒ」との境界線が分からなくなって、静かに会場を後にした。

私は詩を書いている。「最果タヒ」が持って行かなかった私に残された言葉は今、まだ私の手の中にある。ゆっくり握って会場を後にした。

「最果タヒ」は私たちであって、私は「最果タヒ」ではない。

私は詩を書いている。

文:こたにな々 (ライター) 兵庫県出身・東京都在住  https://twitter.com/HiPlease7

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