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慶應大学講義『都市型ポップス概論』①  【模倣とオリジナル】 (こたにな々)

●文学部 久保田万太郎記念講座【現代芸術 Ⅰ】

『都市型ポップス概論』 第一回目

----------------------2018.04.13 慶應義塾大学 三田キャンパス 

コンテンポラリーアートとしての都市型ポップスとは何か。共著『渋谷音楽図鑑』をもとに様々な角度から迫る。

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講師:藤井丈司 (音楽プロデューサー)

1957年 岐阜県生まれ 音楽プロデューサー/プログラマー/アレンジャー。80年代よりシンセサイザー・プログラマーとしてYMO、サザンオールスターズなどの作品に参加。サザンオールスターズ、桑田佳祐、布袋寅泰、井上陽水、ゴスペラーズ、TEI TOWA、仲井戸麗市、SPIRAL LIFE、広末涼子、ウルフルズ、SCANDAL、BRADIOなど幅広いジャンルの作品を手掛けている。

藤井: ”自分の中のものを表現する” 事ではじまるので『現代芸術』と音楽は遠い事ではない。 ”自分とはこうである” というものを現代に投げ出せれば『現代芸術』になる。SNSもアートのひとつ、個人がそれぞれ発信出来る。日本のポップスはその原形になって来た。

特別講師:牧村憲一 (音楽プロデューサー)

1946年 東京都渋谷区生まれ 音楽プロデューサー。シュガー・ベイブ、山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、加藤和彦などの宣伝、制作を手掛け、84年に細野晴臣主宰のノン・スタンダード・レーベルに参加。80年代後半からはポリスターでフリッパーズ・ギターをプロデュース。フリッパーズ・ギター解散後90年代は『トラットリア』『ウイッツ』レーベルを設立。ピエール・バルー主宰の『サラヴァレコード』の日本サイドを担当。

牧村: ”今、僕達はどこにいるのか”  ”時間軸” を常に問い掛ける授業。

出逢うべくして出逢って、音楽が変わって行った事が  歴史には多々あった。

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模倣とオリジナル①

はじめに、AKB48『365日の紙飛行機』(2015年) と山本コータロー&ウィークエンド『岬めぐり』(1974年)が似ている等の ”パクリ” 疑惑楽曲を集めた動画が流された。

参照リンク:https://www.youtube.com/watch?v=gd3TzJIzoMI

これに対しての牧村さんの言葉はまず似ていない、と。この動画を作成した人は楽曲の雰囲気や表面上しか見ていない。最近は ”パクリ” とすぐ言われるがそうではない。ポピュラー音楽はできてから100年経っている。

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”似てる”と考えるより”なぜ似てしまったのか”を考える

例えば、画家のフィンセント・ファン・ゴッホはより良い作品を作る為に、素晴らしい作品を模写し、吸収する。そして自分のものにする。

左:ゴッホ『種まく人』(1889年) / 右:ミレー『種まく人』(1850年)

左:ゴッホ『ジャポネズリー:雨の橋』(1887年) / 右:歌川広重 名所江戸百景『大はし あたけの夕立』 ※参照画像:ゴッホの模写作品より

オリジナルというものはどこにもないものではなく、自分の身体から沁み出て来るもの―


人は14才中学時代に出逢った曲に支配される。

●加藤和彦と北山修『あの素晴しい愛をもう一度』

(講義で流れた映像と異なるが、加藤和彦と北山修『あの素晴しい愛をもう一度』の映像が流れる

参照リンク:https://www.youtube.com/watch?v=CAtHvMP0QFw

牧村:パクリということではなく、日本にオリジナルのフォークソングが生まれた頃のアコースティック・ギターと共にあった歌を意図的に生み出したのではないだろうかという事。 (AKB48『365日の紙飛行機』)

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堤光生さんの考えた方法論はまだ生きている。


60年代に加山雄三らと結成された『ザ・ランチャーズ』のギタリストを経てから、CBSソニー(現・ソニー・ミュージック) のディレクターへと転身した堤光生さん

当時は楽曲をより多くの人に聴いてもらうには、沢山の労力と資金が必要だった。最近の売り方も未だに変わることなく、より大きい所に先に行って失敗する。

”やりたい事をやる” をやるにはまず、小さくてもいいので熱心に聴いてくれる層にアプローチする。

キーワードは ”ライフスタイル” だった。

誰に向けて発信し、誰に聴いて欲しいか。

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模倣とオリジナル②

1988年 音楽好きな若い人達が結成したインディーズバンド『ロリポップ・ソニック』が出現。後の『フリッパーズ・ギター』の前身バンドである。

彼らの音楽の背景には主に英国のインディーズバンドへの共振があり、その中の一つに『ザ・パステルズ』という当時日本では無名に近いバンドがいた

狭い所であっても、深く掘っていく事で揺るぎないものを作る事が出来る。

●フリッパーズ・ギター『さようならパステルズ・バッジ』

参照リンク:https://www.youtube.com/watch?v=RmAB_a9qDZw

オシャレの代名詞のような扱いだった彼らだが、ライヴではいつも指が切れるくらいの激しい演奏をしていた。

パンクの精神をバックボーンに持っていたからだ。

そして、その20年前の1968年には当時輸入盤が日本に数える程しか入らなかったアメリカのロックバンド『バッファロー・スプリングフィールド』の輸入盤を見つけた青年がいた。

●バッファロー・スプリングフィールド 『For What It's Worth / Mr Soul』

参照リンク:https://www.youtube.com/watch?v=BWTqj5lvkFs

当時初任給が4万円届くか届かないかの時代にそのレコードは2500円した。持ち合わせがなかった青年は電話を掛けた。「自分が行くまで確保して、待っていて!」と言ったのが細野晴臣であった。レコードを見つけた青年は大瀧詠一であり『はっぴいえんど』という日本のポップ、ロック史に欠かせないバンドを結成する二人だ。

牧村: かつてあったものは、螺旋状にもう一度繰り返す。

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この講義で頻繁にポイントとして出てくる 4つの ”つ” 

”つくる” ”つたえる” ”つながる” ”つづける”。

つまり...


この講義は音楽だけではなく時折マーケティングや社会・文化にも触れる。

それも踏まえて、次回へ!!!https://note.mu/kurashi_no_nana/n/n241a4ad11692

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●おまけ●

講義終わりに牧村さんから希望者に配布された、無料冊子『記憶の記録 LIBRARY feature 松本隆』育った街 ”青山” や足を運んだ街 ”渋谷” の当時の記憶の中で、松本隆が影響を受けた映画や作家・小説・漫画の固有名詞がガンガン出て来る、それまでの特集とはまた違う面白さでした。

掲載されている写真は写真家・野上眞宏氏が撮り下ろした19才や20才のまだ『はっぴいえんど』になる前の『エイプリル・フール』やそれ以前の写真で、それもまた新鮮かつ貴重でした。

お読み下さってありがとうございました!

本文章は牧村さん及び藤井さんの許可と添削を経て掲載させて頂いています


文:こたにな々 (ライター・文筆家)  兵庫県出身・東京都在住  https://twitter.com/HiPlease7

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