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『とと姉ちゃん』で想うあの頃の台所と文化鍋

旧八月十日。今日は雑節の【二百二十日】。立春から数えて210日目という意味で、十日前の【二百十日】と共に、江戸の初期から暦に記載されています。台風の襲来や季節の変わり目で天気が荒れる要注意日ということで、農業・漁業を営む庶民に注意を喚起したのでしょう。確かに、この頃は突然空模様が変わるなど、油断ができません。しばらくは秋雨前線で天候が愚図つくとか。中秋の名月は、さて拝めるでしょうか。

 NHKの連続テレビ小説『とと姉ちゃん』。とても熱を上げて観ています。子供の頃から実家では雑誌『暮らしの手帖』を定期購読しており、掲載された料理を再現したり、暮らしのヒントを実行したりと、生活におけるひとつの指針のような存在でした。
 ドラマでは今ちょうど「商品試験」(『暮らしの手帖』では「商品テスト」)を巡って、マスコミ、メーカーを巻き込み物議を醸しています。その中の「電気釜」でふと思うことがありましたので、そんなお話を。

 『暮らしの手帖』で「電気釜をテストする」を特集したのは、昭和33年(1958年)の第44号でした。誌面では、「おいしさ、使い勝手、電気代などを考慮し、『あってもよし、なくて一向差支えない』と結論づけた。」(暮らしの手帖社Facebookページ 2016年9月8日より)のだそうです。
 昭和30年代前半といえば、一般の家庭にプロパンガスが引かれ、台所にも一口ガスコンロが普及し始めた頃でした。それまでは、薪を焚いて羽釜に付きっきりで行っていた炊飯。ガスコンロが登場すると、炊飯に適した鍋もお目見えし、簡単に火加減を調整して、ほかの台所仕事の片手間でごはんが炊けるようになったのです。その鍋こそが『文化鍋』でした。が、すぐに電気釜が登場し、文化鍋は時代の変化を繋ぐワンポイントリリーフのような存在となりました。

 文化鍋は、アルミの鋳物でできています。底が厚いため保温性に優れていて、一度沸騰すればごく弱火で内部の高温を保つことができます。蓋と本体はぴったりと一致して隙間がなく、吹き上がる際に間に薄い水の膜ができるため、蓋の重さで圧力がかかるのです。

 拙宅では8年前に文化鍋を買い求めました。東京都荒川区にある株式会社トオヤマの『亀印文化鍋』で、大きさは20cm。約5合のお米が炊けるサイズです。これが実に重宝しています。炊飯、特に炊き込みごはんの類いは失敗無く美味しく炊けます。他には、100円ショップで売られている蒸し籠を使った蒸し物などにも便利です。

 特にお薦めするのが、鶏胸肉の「ゆで鶏」。作り方は簡単。鶏胸肉1枚がしっかりかぶるほど水を入れ、蓋をして中火で沸騰させ30秒。あとは火を止めて蓋をしたまま冷ますだけ。パサつくことなく、しっとりジューシーに茹で上がります。(下の写真、本当は蓋を開けてはダメです)

 冷ましたゆで鶏は、その時に使う分を2本のフォークなどで繊維に沿って裂いて分け(絶対に庖丁で切らないこと)、用途に応じた大きさに手で裂きます。サラダ、棒棒鶏、カオマンガイ、麺類の具材、和え物などで活躍しています。冷蔵庫で保存して3日以内に使い切れば大丈夫です。ゆで汁の用途も様々ですが、ナンプラー、カピ(海老の塩漬け)などを足してフォーにするのがお薦めです。(下の写真、茹でムラがないかがわかるように、厚い部分を開いています)

 話が逸れましたが、日本の炊飯を長年に渡って支えてきた羽釜に代わる道具として研究開発された文化鍋。ぜひこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

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