朝市-02

伝えるって難しい!〜人は思った以上に読まないし聞かない。

「くらしアトリエ」を立ち上げてから、平日はほぼ毎日(お休みをいただくこともありますが)何かしらの文章を書いています。

「日々 綴る」のような日記や軽いお知らせのようなものから、イベントの告知、コラムまで。「発信が仕事です」と言えるほど、何かを伝えることを喜びとして続けてきました。

でも、15年近く経つ中でひしひしと感じるのは、「人は、思った以上に読まないし聞かない」という事実です。厳しいけれど、これは現実。

その昔、「暮らしを楽しむ朝市」というイベントを主催していた頃(まだ今のようにイベントがあまりなく、マルシェという概念も山陰にはなかった頃)。

イベントのために専用ホームページを設け、毎日告知をしつつ、近隣住民の方には折り込みチラシを作り…新聞の取材を受けたり、ラジオに出演したりしたこともありました。

自分たち的には、十分すぎるくらいたくさんの情報を流し、「朝市と言っても野菜や魚が並ぶようなイベントではなく、パンや雑貨、焼き菓子やお花など、明日の朝が楽しくなるようなものをご紹介するものです」と注意喚起もしたつもりだったけれど(朝市については過去のイベントページから見ることができます)、


それでもやっぱり「朝市って聞いたから、野菜や魚があると思った」「朝市なのに値段が高い」という声を何度も頂きました。

自分たちの伝えたいことを、100%伝えるって本当に難しいことなんだなあ、というのを実感したのですが(「朝市」というネーミングのせいでは、という声もありますがそれはさておき)、この経験はとても実りあるものでした。伝えられていないのはこちらの力量不足。聞いてもらえるように、7割でも、いや半分でもわかってもらうにはどうしたらいいのか。

理解してくれるのは無理でも、情報としてきちんと受け取ってもらえるには何をすべきなのか、考えるようになりました。

適当な文量、間に入れる写真の種類、文字の大きさ。文章の組み立て。いつもすごく考えていますが、やっぱりなかなか難しいもので、試行錯誤の毎日です。

「人は思った以上に読まないし聞かない」ということを、知らない方が案外多いんじゃないか。そう思っているので、例えばデザインの打ち合わせでも機会があればお伝えするようにしています。パッケージや冊子のデザインなど、「このサイズにこれくらいの情報を入れてください」と言われたとき、キャパオーバーな量を提示されることが多いからです。狭い場所にぎゅうぎゅうと文章や写真が詰まっていても、読む気が失せてしまいますよね。

とはいえ、やっぱりこれも伝えたいし、こっちも必要。そこが難しいところです。たくさんの情報の中から、最低限伝えなければいけないこと、これは書いたほうが依頼主の利益になるであろうことを絞り込み、そぎ落としてそぎ落として、デザインをしていきます。

その作業は、ちょっと俳句に似てるなあ、と思うときもあります。たくさんある情報の中からそぎ落としてそぎ落として、17文字にすべてを凝縮させて句をつくりあげる、というその行為…伝わるでしょうか。

「人は都合のいいところしか読まない」「自分の耳なじみの良いワードしか聞いていない」というのは、自分に照らし合わせても分かります。他人の文章を読んでいても、自分の既成概念で判断してしまったり、「あ、その言葉は分かる」という一部分に引き寄せられたりして、真意までたどり着かないことが多々ある。スタッフ同士のやり取りでも、「え、そんなこと書いてあったっけ」「書いてあったよ~もう!」ということが、たまにあったりするのです。これはミスの元凶です…。

きちんと読んでほしい、聞いてほしい、と思うからこそ、きちんと読む、きちんと聞くことを大切にしようと思う。結局は「誠実にものごとに向き合う」ことが大切、ということでしょうか。当たり前のことをしっかり、誠実に行うことの積み重ねが、「ちゃんと伝える」ことにつながるのかもしれません。

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