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抗うって難しい。

去年の8月に、「入学式スーツと、多様性と、さとり世代」というタイトルでコラムを書きました。

大学の入学式に新入生が着ていく服装が「黒いスーツ」だらけ、っておかしくないですか?というような内容です。

多様性の時代と言いながら、晴れの日に着ていく服装も暗黙のうちに決められて、しかもそれが暗い色のスーツ、そして履きなれないパンプス、という現状。「多様性ってなんだろう」と考えずにはいられませんでした。

…とはいえ、子どもたちは「みんなと同じがいい」という「さとり世代」。事を荒立てたくないので、なるべく目立たず、人と同じことを好みます。

さらに、「30%引き」という紳士服メーカーのクーポンを目の前にし、「…抗いたいところだが、世の中の流れに従うしかないのか…」と、心で涙する母親もいらっしゃるのではないでしょうか。

抗うって、大変です。でも、やっぱり腑に落ちない気持ちも大いにあります。

思えば子どもたちが小学生の時、「お習字セット」が自分の知っているものとはかけ離れていて、仰天したことがありました。キャラクターものやリボンがついたものなど、まあバラエティに富んでいるのです。うちはシンプルな黒×黒、赤×黒のかばんを選びましたが、学校によってはその選択肢すらなく、仕方がないので別注した、という話も聞きました。

お習字セットの次は彫刻刀。私が覚えている、木製の持ち手に刃がついたタイプのものはもう、カタログにもありませんでした。持ちやすく怪我がしにくく(それは大事)、そしてとにかくカラフル!入っているケースもカラフル!試しに「彫刻刀 小学生」で検索してみてください。「…こんな○○ジャーみたいな彫刻刀やだなあ」と言いつつも、他に選択肢がなかった記憶があります。

家庭科のエプロンもそうだったなあ…布は各自で選ばせてほしい!と強く思いましたが、そうもいかない事情があるのでしょう。

経済的なこととかもあると思うのですが、それを抜きにしても、どの分野にも世の中のスタンダードがあり流行りがあり、誰かが主導して起こしている「流れ」があります。「こっちのほうが子どもが喜ぶでしょう?」「こっちのほうが、みんなと同じで安心ですよ」という「流れ」です。

私なんかはその主導者を突き止めたい、と思ってしまう人間なので、スーツの1件でもかなり抗おうとしましたが、「入学式では皆さん濃い色のスーツです」「就活では必ず皆さん黒いスーツでタイトスカートです」と断言されてしまうと、その枠からはみ出しなさい、と子どもたちを説得するのも難しい。

でも、自分のこだわりや信条に合わないものにお金を払うのは、すごくしんどいのです。経済的なことと自分の信条との間で、揺れに揺れている人たち、きっといらっしゃると思います。抗うのはお金もかかるし、何より生きにくい。

もっとみんな、いろいろな中から好きなものを選べる時代であってほしい。「私はこれが好き!」「うちはこれがいい!」というスタイルを、「私とは違うけど、それも素敵だね」と言い合える世の中であってほしい。切に思います。

靴に関しては、いまSNSをきっかけに「#Ku Too」 のムーブメントが起きているようですね。また、とある化粧品メーカーでは就活に際し、「自分を表現できるメイクで面接に来てください。もちろんノーメイクでもOK」というような告知をされていて、支持を得ていたようです。

自分たちの子どもが就活をするときには、もうそんなバカげたルールはなくなっているといいなあ、と心底思います。っていうか就活っていう括りもなんか変だよなあ…いろいろ考えるときりがありませんが、とにかく「みんな違って、みんないい」でいきたいものです。

窮屈な世の中が、少しでも心地よくなりますように。


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