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ひたむきにわかちあう ―「シマシマ編集室」取材記事 ライター:毎熊さん

◎2019年5月7日に実施した「シマシマ編集室」取材の記事です。インタビュー内容をそれぞれがまとめ、自分の言葉で綴る、という体験をしていただきましたので、ご覧ください。

1.森脇さんについて

今回の「シマシマ編集室」でインタビューしたのは、松江市在住の女性・森脇香奈江さんです。


森脇さんは浜田市生まれ、小学校の頃から食に興味があり、大学で管理栄養士の資格を取得。広島のドラックストアに就職し、14年間勤務されました。

子育てと仕事の両立に忙しい日々を送る中で、ご主人の実家がある松江にご家族で戻ることを決意。松江市の地域おこし協力隊に応募され、採用後は協力隊として玉湯にある「八百万マーケット」の立ちあげに尽力されました。


2.イノシシ猟師との出会い、会社設立。

60団体と関わるなかで、松江市八雲町のイノシシ猟師たちとの出会いが転機となったという森脇さん。イノシシについて知りたくなり、解体現場や罠を見に行ったりとしていくうちに、イノシシを取り巻く環境や課題がみえてきたそうです。多くの問題の解決をめざし、猟師さんと同じ立場になって話をするために狩猟免許を取得。2018年11月に同期メンバーである佐藤氏と合同会社「弐百円」を設立され、猪肉の加工品の開発や販売をてがけておられます。


3.大切なのは、「自分ごと」として考えること。

インタビューを終えての森脇さんの印象は「直向き(ひたむき)」
栄養士として採用された企業で育児・介護・健康食品の相談会を企画され、その中でも特定保健指導をした男性からの「薬が減って人生が変わった」の一言が嬉しく、自分も元気になることができたそうです。森脇さんは何事にも自分の気持ちとそのつど向き合って、自分で答えを出しながら丁寧に生きてこられたのだと感じました。

協力隊として活動していくなかで、イノシシという「害獣」(人間が一方的に害としているだけなのですが)が殺されて土に埋められていくのを目の当たりにし、困っている農家さんの力になりたい、そして、ただ殺されていくだけのイノシシの命を活かしたいと、真剣に考えて考えた結果、動き始めたのでしょう。彼女が協力隊の応募用紙に書いた「人を喜ばせるだけではなく、一緒に怒ったり泣いたりしたい」という一見ざっくりとした言葉は、イノシシの問題を当事者の目線と同じ「横並び」の立ち位置で、「自分ごと」として考えることに繋がっているのではないでしょうか。それが狩猟免許をとり、実際に鳥獣被害対策に取り組むことなのだと思います。


4.人の役に立ちたい、という本能にも近い欲望。

同じ目線になるための行動からみえてくるのは「わかちあいたい」という強い思いです。

狩猟免許をとらなくても(実際に害獣を仕留めなくても)今の活動は成り立っているかもしれません。しかし、彼女はちゃんと同じ位置に立って話がしたかったのです。「守るべきものは尊重しながらも変化を求めていく」という言葉からも、彼女の真摯な志が感じられます。どんなことにでも「直向き(ひたむき)」であることが彼女の生きていく姿勢であり、その姿に静かな感動を覚えました。


今回のインタビューを通して確信したのは、「人の役に立ちたい」「人を喜ばせたい」というのは多くの人に共通した本能にも近い欲望であって、森脇さんや私だけでなく世の中に数限りなくある仕事の殆どのエネルギー源ではないかということでした。それを叶えるためのツールが人によって違うということであり、森脇さんにとって、合同会社「弐百円」の活動が人を喜ばせるための手段なのでしょう。

仕事は様々で複雑なものもありますが、その根源はシンプルなのだと思いました。

生きていくのはシンドイことも多いですが、シンプルな考え方で生きれば楽しいことも多くなるのかもしれません。きっとシンプルな考え方に至ることが難しいのだと思います。人は誰かの役に立つことで自分の存在が意味のあるものだと感じることができ、だからこそ誰かを喜ばせたいのでしょう。


5.自分のできることを、「次の世代へ」。

森脇さんはイノシシの問題は山の環境を守ることにつながっていくと考えておられ、これまで守られてきた「猟師の山の知恵」を次の世代に引き継ぐことが大切な使命であり、この活動を子供たちに伝えていきたいというのが今後の希望です。

私たちの世代がその上の世代の知恵を学び深く理解し、子供達に伝えていくことは、今もっとも大切なことではないでしょうか。

私はこれから森脇さんの活動を心において、自分のできる「人を喜ばせる」ことをしながら、自分自身の存在の意味を考え、私たちの世代が次の世代のために今やるべきことを常に意識しながら同じ島根で暮らしていきたいと思います。


ライター:毎熊さん / 文責:シマシマしまね

取材日:2019年5月7日


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