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智頭のかき餅が教えてくれること。

毎年の、この季節の楽しみのひとつ。

鳥取県智頭町から届く「かき餅」です。

山陰地方の方には、テレビなどで紹介されているのでおなじみかもしれませんが、このかき餅が本当に素敵なのです!

智頭の那岐地区というところにお住まいの皆さんが作るこのかき餅。豆・青のり・にんじん・ゆず・ゆかりの5色のお餅で、色合いがとても素敵。お餅はていねいにわらで編んでから天日で乾燥され(その様子は、まるでかき餅のカーテンのようです)、送ってくださいます。

ストーブの上で焼くとぷくーっと膨れて、そのかわいいこと!そして、とてもおいしい!冬の季節のお楽しみです。

もともと、我が家では実家の祖父母が毎年この時期に手作業でかき餅を作ってくれていました。青のりと黒豆の2種類で、分厚くカットして届けてくれるかき餅が、私も家族も大好きで、きょうだいで我先にと焼いたものです。

でも、祖父母も歳を重ねてだんだんと餅つきが大変になり、そのうち作ることをやめてしまいました。それからしばらくして、私と同じようにかき餅が好きだった母親が、代わりに、という思いがあったのかどうか分かりませんが、智頭のかき餅を取り寄せるようになったのです。

以来、母に便乗し、我が家ともうひとりのスタッフと2家族分、毎年お願いして取り寄せてもらっています。

おいしい、とか、かわいい、ということももちろんなのですが、かき餅が届くと「ああ、もうこの季節か」と感じる、その季節感がとても好きです。これこそまさに「風物詩」。おいしいもので季節を感じることができるなんて、とても贅沢なこと。それが、地域で毎年ていねいに手作りされたものならなおさらです。

祖父母のつくるかき餅とは味も姿も違うけれど、私が子どもの頃から培ってきた「冬にストーブでかき餅」というライフスタイルをずっと続けさせてくれている、智頭のかき餅には毎年感謝です。同時に、これが10年先も20年先も、ずっと続いていてほしいなあ、と願うばかり。テレビで拝見したときには、かなりのご高齢の方もニコニコ笑顔で参加されていました。きっとこのおばあちゃんたちにとっても、季節の風物詩なんだろうなあ。

シマシマしまねのある「はたひよどり」も、全体的にとても高齢化が進んでいて、施設から見下ろすことのできるちいさな田んぼの風景も、あと何年見ることができるんだろうか、とふと思うことがあります。

かき餅も、田んぼも、田舎の風景や昔ながらの知恵は、それを支える人がいなければ成り立たない。地方にいるとそれを痛感します。そして、支えているのは往々にして、お年を召した方が多いのも現実です。

先人たちの知恵や伝えてくれるものの大きさを教えてもらっているなあ、と実感する、冬の風物詩「かき餅」。美味しくいただいています。

ちなみに我が家の娘たちは、テレビで智頭のかき餅を作る様子を見て、「…人が作ってるんだ…」と少々びっくりしていました。え、今さら?とこちらも驚きましたが、今どきの子どもたちにしてみれば、こんなに均等に、美しくパッキングされたものが「手作り」だとは想像できないようです。

私自身は、祖父母が餅をつくり、母が餅が固くなる前にカットする、そのようすをずっと傍で見ていたのですが(包丁がすごく大きくて、お餅が固くなり始めると切るのが大変そうで、ちょっと怖かった記憶もあります)、それも今ではなかなか得がたい経験なのかもしれません。

なんてことない記憶が、歳を重ねるごとに大切な記憶に変わることってありますよね。子どもにちゃんと記憶を刻んであげること。これも、親としての大切な役目なんだと、つくづく感じています。



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