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やりがいって何だろう? ー「シマシマ編集室」取材記事 ライター:長岡さん

◎2019年6月10日に実施した「シマシマ編集室」取材の記事です。インタビュー内容をそれぞれがまとめ、自分の言葉で綴る、という体験をしていただきましたので、ご覧ください。


1.はじめに

「今の仕事に満足していますか?」という問いに対し、「はい」と答えた割合は約4割程度らしい。この数字を見て、4割という数字が多く感じるのか少なく感じるのかは、今の自分自身がどちら側にいるかで違うのだろう。これを読んでくれているあなたはどっちだろうか?

ここ数年、求人広告や看板、ネットニュースなどで「好きなことを仕事にする」「やりがいのある仕事」というキャッチフレーズを見かけることが多い。職にやりがいを求められるその一方で、「やりがいが見つからない」と悩む、やりがい難民の声も多く聞く。今回のインタビューを通して、このことについて改めて考えるきっかけにもなった。

2.美郷のこと、君谷のこと。

今回インタビューさせていただいたのは、面白裕紀さん。島根県出雲市出身で、大学進学を機に上京。一度は都会で就職をしたものの、「いずれは地元に帰りたい」という思いがあり、約4年前に地域おこし協力隊としてUターン。現在は美郷町君谷地区で養蜂を営みながら、地域活動コーディネーターとしても活躍されている。

まず美郷町とは、広島県との県境に面した、島根県のほぼ中央部に位置する人口4,500人ほどの町。自然豊かで、美肌の湯と知られる温泉が多くあるのも有名だ。面白さんが現在活動されているのはそのなかの君谷地区という、約150世帯300人ほどが暮らしている小さな村。高齢化率は約55%ほどと、高齢化が進む島根県のなかでもさらに高い数字である。
「君谷には誇りとなるものが無い」という住民からの悲観的な声を真摯に受け止め、地域の方をはじめとする多くの方に協力をいただきながら、「花とみつばちの里」の実現に向けて、地域の誇りとなる景観や特産品を生み出そうと日々努力されている。

養蜂活動を始めてまず取りかかったのは、耕作放棄地をミツバチたちの蜜源に変えること。そもそも耕作放棄地とは、農家の後継者不足、高齢化などから増え、景観の悪化や害獣の住処となってしまうことが全国的にも今大きな問題になっている。ここ君谷地区では、そんな耕作放棄地に手を加え、住民の方にも協力いただき空いた土地に花を植えてもらうなどすることで、すでに約300a(サッカーコート約4.2面分!)も花を咲かせたそうだ。面白さんが今後の夢にかかげる、ここ君谷地区に人を集めるような環境を作りたい!という願いが叶う日も近いかもしれない。


3.ここで、生きていくということ。

「小さなころから昆虫が好きだった」という面白さん。
働き蜂にはメスしかいないこと。天気が悪いと蜂たちが不機嫌になること。そもそもどうして蜂はハチミツを巣に蓄えているのか。そんな初歩的な疑問にもすべて丁寧に答えてくれた。ひとつひとつの答えのなかにはいつも自然への慈愛があふれていた。
何でも知っているようなそんな面白さんでも日々恐れていることが、“予測のできないアクシデント”だ。日頃相手にしているのは言葉の話せない植物と昆虫。さらには、天候やちょっとした環境の変化で昨日までの当たり前が変わってしまう、ということが当然のことのように起こる。自然と共生する暮らしのなかには、人間がどうしようもできないことがあるのだと痛感した。


そして、お世辞にも便利とは言えないこの場所で暮らすことに「不便はありますか?」という質問に、「もちろん不便ですよ。」と答える面白さん。「でも、行こうと思えば車でどこでも行ける。買いたいものが近くになければネットで買うことだってできる。大きな声で鼻歌を歌ったって誰にも聴こえないし、夏には外でバーベキューし放題!東京にいた頃のような時間に追われる日々はここではありません。」と教えてくれた。
一度は田舎での不便な生活が嫌で、都会に憧れ、島根から離れた面白さん。外からみた島根は、都会には無い自然をたくさん持っていて、自分が生活する上では十分すぎるほど何でもあるところだったと気づくことができたようだ。

4.おわりに

文頭に書いた「やりがいが見つからない」という悩みは、物や情報が溢れ、便利になった現代だから生まれたたくさんの選択肢のなかで、初めから“正解”を見つけようと思うから難しくなるのだろう。いつか聞いた話で、自分の仕事を天職だと思っている人たちに「どのようにして自分の仕事に情熱を持つようになったのか?」と質問をしてみた、という話があった。回答したそのほとんどの人が、初めから天職にしようと夢を追って就いたわけではないとのこと。つまり、ほとんどが偶然の産物で、続けているうちにたどり着いたところが自分に合っていただけだったという結果だ。

私自身もそうだが、普段の生活のなかで、つい自分自身や周りの環境に対して、不足しているものの数を数えてしまうことが多い。だけど、面白さんのように時には外に飛び出して、俯瞰的に物事を捉え、ここに在るものを知り、自分が出来ることから一つずつ行動していくのが正解への近道なのだろう。もしかすると気づいていないだけで、すでにやりがいはすぐそばにあるのかもしれない。

今後、もしも嫌なことや辛いことがあったら、「山をぼーっと眺めて、寝て忘れる」という面白さんのストレス解消方法を試してみたいと思う。そして次に美郷町に行くときは、さらに拡がった花畑を見て、お土産にはちみつを買い、温泉に入って帰るというおでかけコースを楽しんでみたい。

ライター:長岡さん / 文責:シマシマしまね

取材日 2019年6月10日

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