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思い出の着物 ~晴れの日に。

先日行われた子どもたちの高校の卒業式で、着物を着ました。

着物を着るのは子どもの七五三以来だから、13年ぶり。朝早くから着付けをしていただいたりと大変でしたが、いい思い出になりました。

なぜ卒業式に着物を着ようと思ったかというと、毎回いわゆるセレモニースーツを着るのが苦痛だったからです。

ストッキングやパンプスもとても苦手で、毎回、あの時期になると「やだなあ、やだなあ」と思い、数時間着なれない恰好をして変な心持ちになるのですが(毎日スーツでパンプスの人とか本当に尊敬します)、あるとき「あ、着物を着たらいいんじゃん」と思いつき、同級生のお母さんでもあるくらしアトリエスタッフを誘い込んで、2人そろって着物で参加することにしました。

「高校まで母親業も頑張ったし、一応ひと段落、ってこともあるから、着物でぱーっと参加しよう!」という気持ちもありました。子どもたちの進路はまだ分かりませんが、とりあえず、母親としての役目がまたひとつ違うステージになる記念でもあるかな、と。

もちろん、スーツやストッキングよりはるかに着物のほうが着なれていないため、しんどかったのですが(笑)、子どもたちにも案外好評で、思い出作りになりました。

私の訪問着は、学生時代に祖母があつらえてくれたものです。この着物が、本当にかわいくて私は大好きなのですが、あまり着る機会がなく、「年齢にそぐわなくなってしまったかなあ、派手だろうか」と正直不安に思っていました。

でも、着付けをしてくださる方に事前に見ていただいたら「素敵な着物!いいのを作られましたねえ、これはまだもっと年齢を重ねても着られますよ」と言っていただきました。帯は母のものを借りることに。

祖母と母と、百貨店の着物の展示会に出かけた時のこと、今でもすごく鮮明に覚えています。一番最初に呉服屋さんが持って来られたのがこの着物でした。「わ~素敵…」と思ったものの、当時の私には理解はできないけれど決して安くはないその値段に躊躇し、それから何着か見せていただいたものから、値段が安めのもので気に入ったものを…と選んでいたのです。

そんな時、祖母が私のそばにやってきて、「あのね、着物はいつまででも着られるものだし、いつか子どもにも譲り渡せるものだから、ちゃんと選びなさい」とささやいてくれました。私が最初に見た着物に心惹かれたことを見抜いていたのか、あるいは祖母もその着物に惹かれていたのか。晴れて、素敵なこの着物が私のもとへやってきました。

結婚のお披露目のとき、娘たちの七五三のとき、祖母にも着物を見てもらえました。今回の卒業式、祖母には見てもらえなかったけれど、きっと空の上から喜んでくれていると思います。思い出すと泣いてしまうけど。

次に着るのはいつだろう…着付けをしてくださった方にも「もっといろんな場所で着たほうがいいですよ」と言っていただいたので、もし娘が成人式に帰ってくることがあったら、一緒に着てみようかな~なんて思っています。その時はどんな気持ちで袖を通すんだろうか…ちょっとわくわくします。

卒業という節目の時に、着物という非日常を経験することで、自分自身もなんだかすっきり、新たな一歩を踏み出せたような気がします。身につけるもので気持ちが変わる、気持ちを変える。思いつきのイベントだった「着物で卒業式」が、図らずもそんな経験を与えてくれました。

いつか着物と一緒に、思い出や、母→祖母→曾祖母と受け継がれた「元気で暮らしてほしい」という願いを、次の世代へ渡せたらいいなあ、とも感じています。着付けの準備をしていた私を見て、「…そんなにいろんな道具を使って着るの?へー、大変だね~」と、まるで興味を示さない娘ですが、さて、どうなることやら。

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