世の中には、よく目を凝らさないとそこにいるかどうかわからない人、というのが確かに存在しているのだ、ということを、活動を通して感じるようになりました。

　
いわゆる「地域づくり」的な活動をしていると、さまざまなジャンルの方に出会いますが、多くは何らかの意志を持って自ら行動している人たちです。いわば、「初めから見えている人」。

デザインのお仕事を介してお会いする人たちも、SNSでつながっている方も、皆さん初めからどこにいるかちゃんと見えている人たちです。
　
でも、活動を続けていて感じるのは、むしろそれとは真逆側にいる「見えない人たち」のほうが、私たちのコンセプトを多く、深く受け取ってくださっているのではないか、ということ。直接伝えられることはないのだけど、「見ています」「応援しています」というメッセージがなんとなく伝わってくる。その人たちのことをわれわれは「静かなる熱を持つ人」と呼んでいます。
　
静かだから、表舞台の人からは「いない」と思われがちだけど、ちゃんといる。主張はしないけれど、熱量は持っている。そして、それぞれの暮らしを楽しんでいる。そんな人がホームページの向こうに確実にいてくださることで、励まされ、活動を続けることができたのだと思います。

　
なぜ励まされたのか。それは、自分たちもそちら側の人間だから。

主張することも得意ではなく、できれば静かに暮らしていたい。そもそも人の前に立ったりすることも本当はやりたくない。

いわゆる「地域づくり」的なノリもすごく苦手で、写真を撮るときになんかポーズをとらされるのも、毎回本当に辟易しています。（今度言われたら絶対断ろう…と思いながら、ノリが悪いと思われるのがしんどくて、結局させられるんですけど…そういう人、絶対ほかにもいると思う！）

でも、熱く、伝えたいものを持っている。
　
そんな自分たちだからこそ、同じように「前には出たくないけれど、ちゃんと暮らしを楽しみたい」という情熱を持った人たちに向けて、メッセージを伝えることができるんじゃないか。そう思うようになりました。

静かなままで、暮らしを、地域を楽しむ。

楽しみながら、情熱をもって生きる。

そんな人たちと一緒に、島根での暮らしを楽しみたい。そして、ともにその熱を高めていけたら。そんな、ちょっと変わった地域づくりがあってもいいんじゃないかと思うのです。

地域づくりとしては成果も見えにくいし、影響力も少ないかもしれませんが、静かに暮らしを楽しむ人たちとともに活動する、そんなくらしアトリエでありたいと思います。