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緞通

こんにちは。和のこころアドバイザーのゆうです。

緞通(だんつう)をご存知ですか?
緞通とは、屋内敷物用織物のうち、手織りのものを指します。中国語で毛織の敷物や掛物を指す『毯子(タンツ)』が変わって『緞通』となったものです。手織りの重厚な絨毯で、特に小ぶりで方形のものを指しますが、絨毯と混用されることが多いです。製法は綿や麻の地糸に毛を一目ずつ手で結んで植えたのち、包丁かハサミで切って立毛します。非常に手間がかかり、高価です。インド、ペルシャ、中国を原産として、日本へは江戸時代にその技術が伝わり、佐賀の鍋島緞通、大阪の堺緞通、兵庫の赤穂緞通が日本3大緞通と呼ばれでいます。

その中で地元の赤穂緞通について少しお話をします。赤穂緞通は、江戸時代後期に、赤穂に産まれ育った一人の女性が中国の織物の美しさに感動し、30年近い試行錯誤の末に考案しました。明治末期には御召列車の敷物として、天蚕を使用した赤穂緞通が採用され、その後も東宮御船、枢密院王座の敷物として、政府に納入されたそうです。

しかし、昭和に入ると戦争による綿糸の統制や、その後の高度成長期の機械化になじまずに、衰退の一途をたどり平成に変わるころには、「まぼろしの緞通」と言われるようになりました。この伝統工芸の危機を救おうと、平成3年に赤穂市教育委員会が「赤穂緞通織り方技法講習会」を開催し、現在では講習会修了者によりさまざまな活動がされています。

鍋島緞通や堺緞通では、床から垂直になった堅機(たてばた)が使われていますが、赤穂緞通は床に水平な水平織機を使います。赤穂緞通は握りハサミ1本で、根気を必要とする『摘み(つみ)』が特徴です。特に『筋摘み』と呼ばれる文様の輪郭に溝をつけ、柄を浮き出させる作業がありますが、これには熟練した腕前が必要です。厚さを均一にする『地摘み』とともに何度も繰り返す手の込んだ摘みは、まさに芸術的です。そのため一人前の織子になるには、数年の経験が必要と言われています

また、赤穂緞通はオーダーメイドで1人の織子が織り上げるまで務めます。製作期間も3ヵ月~6ヵ月と時間はかかりますが、仕上がった緞通は手触りもよく、『筋摘み』によって浮き上がってくるような柄がとても素敵で和のお部屋にも洋のお部屋にもあう敷物です。

赤穂市内にはいくつかの工房があります。購入するには少し高価ですが、見学や体験も可能な工房もありますので、ぜひ、本物に触れてみてください。

※冒頭の写真は工房「赤穂緞通 六月」さんの許可を得て掲載しております。

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