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里山に春が来ました

こんにちは。身近な自然観察アドバイザーのmimosaです。

日増しに暖かくなり、木々は若葉を広げ、さまざまな花も次々と咲いて、身近な庭も公園も、遠い山々も春色に染まっていきますね。

4月になると、毎月一度活動している里山保全の市民ボランティアさんたちと、春を探して活動地の周辺を散策しています。みなさんほぼ全員がリタイア世代ですが、好奇心の赴くままに歩き回り、いろいろなものを見つけては、あちこちで盛り上がって、子供の頃に戻ったようなその光景は素敵です。

散策の日は、曇りのち雨の予報にもかかわらず、日も差して、満開のコバノミツバツツジのピンク色の花が青空に映えて美しく、心地のいい季候でした。ボランティアさんたちは、写真を撮ったり、愛用の網で水路をガサガサして、捕まえたトンボのヤゴやオタマジャクシをポリ瓶に入れて観察したり、関心のあることに夢中です。花や虫をみつけては教え合って、とても自由に、そして心から楽しんでいる姿に、こちらまで楽しくなってほっこりしました。

ため池の近くへ行くと、ウワミズザクラが白い花を咲かせていていました。このサクラは、普通イメージするサクラとはまったく違い、6~8ミリほどの小さな花が房状に集まって咲き、「白いブラシのような」とよく形容されます。熱心に写真を撮っていたボランティアさんが「この木は漢字で書くと『上溝桜』なので、ウワミズかウワミゾか混乱しちゃうんだよね。これを言うと、聴いた人を混乱させるから、言わなきゃいいんだけどさ。」と笑いながら話してくれました。ホントです、混乱するではないですか(笑)。

ため池の堤防の法面(土手)にはワラビがたくさん生えていました。毎年、管理している集落の方には、ワラビを摘みのOKをもらっています。袋を取り出して摘みはじめる人もいて、「ワラビ採るのって楽しいわぁ。」という声のとおり、山菜採りは春の楽しみの一つです。春の山菜は、ほろ苦い風味や歯ごたえ、香りがあって、この季節ならではの味です。コロナ禍以前には、ボランティアさんたちと採った山菜をその場で天ぷらにして、山菜天ぷらうどんランチを楽しんだこともありました。しかし、今ではそういうイベントは難しくなってしまいました。

ため池の堤防の繁茂したササ類などの刈り取りは、ボランティアさんたちが里山林の間伐などと併せて実施しています。また、集落の人たちも定期的に草刈りをしているので、ワラビがたくさん生えてくる草地はずっと保たれています。堤防は管理をしていないと、ササ類をはじめとする背の高い草が繁茂して地面に日が当たらなくなり、植物の多様性が低下します。さらに樹木が侵入して成長すると、堤防の強度が下がることにもなります。草地の植物には、キキョウやユウスゲ、オミナエシなど減少傾向にある植物も多いので、希少な植物の開花や結実時期を避けて刈り取ることが重要です。

活動地の里山林には、セトウチサンショウウオやニホンアカガエルなどが生息していて、早春にはその産卵状況も毎年観察しています。これらの両生類は、年明けのまだ寒い時期に、流れのない水の溜まった場所(水田、ため池など)に移動して産卵します。その後は、また林へ戻って春まで冬眠(春眠)するそうです。孵化した幼生も成体になると、林の中へ移動して暮らします。つまり、水辺と林の両方が生活場所なので、それらの環境のつながりを隔てることなく、どちらも保全する必要があります。毎年セトウチサンショウウオを確認していますが、「環境省レッドリスト2020」では絶滅危惧2類(絶滅の危険が増大している種)に選定されている希少種です。

適切に管理をして、里山の環境がうまく保たれていると、景観的にも美しく、季節の恵みが楽しめるだけでなく、生きものにも住みやすい場所になります。しかし、人手不足などで管理が行き届かなくなると、たちまち多様性は低下し、風景も荒れてしまいます。草刈りや間伐などは継続的に行う必要があるため、里山の生態系保全にとっても、ボランティアさんたちや集落の人たちの役割は思った以上に大きく、欠かせないものになっています。

コロナ禍では、当たり前だと思っていたことが、実はそうではなく、大切な時間であったと気付くことがたくさんありますが、里山での活動もその一つです。昨年は活動が中止になることもありましたが、どんな状況であっても四季は巡ります。これまでと同じに見えても、同じ春はありません。その季節ならではの生きものとの出会いを、陽気なボランティアさんたちと、しみじみと楽しみながら、里山の大切さや魅力をより多くの人に伝えていきたいと思っています。

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