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《取材記事③》「『精一杯』の姿勢で立ち続けることのできる仕事」「染め工房造舎」クワバラマキコさん

くらしずく2019では、作り手と使い手との出会いをより深め、手の仕事を身近に感じていただくために、ワークショップを開催いたします。
手軽にできるものから、本格的な制作に触れる貴重な体験まで、多彩なプログラムをご用意。
会場の「くらしずくスタジオ」では、講師の方々の作品も同時に販売もいたします。ワークショップ中の見学も自由です。ものづくりの現場に、ぜひお越しください。

今回、様々な「手しごと」を提供してくださる作家さんを取材しました。

ご紹介するのは、「染め工房造舎」クワバラマキコさん。ワークショップでは、 手描友禅で名入り風呂敷づくりが体験できます。

【ワークショップのお申込みはこちら】(要予約)
手描友禅で名入り風呂敷をつくろう
https://kurashizuku2019-w1.peatix.com/

お申し込みはお電話でも承ります。
090-2403-1021(くらしずく ワークショップ担当・白石)

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紬の単衣に名古屋帯。残暑の厳しいこの日の陽気を感じさせない、涼やかな装い。颯爽とした佇まいに、友禅染の帯がきりりと映える。

「着物の中ではカジュアルな装いです。慣れれば一人で15分もあれば着ることができますよ。日常着ですね」

と、その着物を身にまとったクワバラマキコさんが教えてくれた。

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「着物をもっと日常に近づけたい」と、着物姿のクワバラさん

クワバラさんは大学生の頃、バイト先の定食屋で着物姿だった女将との出会いから着物に惹かれ、日舞の師匠でもあるその女将から着付けの仕方を教わった。そこから「着物を着ること」に魅了され、友禅染めに興味を抱くようになる。その後、出版社勤務を経て、友禅染め工房で修業。2009年独立して2010年、佐倉市に友禅染めを行う「染め工房造舎(ツクルヤ)」を構え、誂えもの(オーダーメイド)の着物などの友禅染めを手がけている。

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クワバラさんの手がけた友禅染めの数々

友禅染めは、多彩な色で華やかな模様を染める伝統技法。その工程はまず、染める柄をデザインするところから始まる。
制作した柄は原寸大の紙に描き、さらにそれを生地に描く「下絵付け」を行う。続いて、描いた下絵に沿って糊を置く。これは彩色した時、隣り合った色同士が混じり合わないようにするため。「糸目糊置き」と言われるように、柄の線に沿って細く糊を置く、細やかな動きが要求される作業だ。

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糊を置き終わった状態。青色のラインが糊が置かれている部分だ

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刷毛を使って糊を生地に馴染ませる「地入れ」。生地をピンと張っている竹ひごのような「伸子(しんし)」と呼ばれる道具の微調整も、ムラなく仕上げるために欠かせない。

糊を生地に定着(地入れ)させたらいよいよ染料を作り、柄に色を染める「色挿し」を行う。
生地を蒸して柄の色を定着させたら、今度は柄以外の部分の作業に移る。そう、「地」の部分を染めるのだ。その際、せっかく彩色した柄の部分に地の色が染まらないよう、柄に糊を置いたうえで地染めをする。そして地色を生地に定着させるため、改めて蒸す。
蒸しあがったら水と揮発成分で洗い、生地の風合いを整えるため湯のしをかけ、ようやくラストスパート。仕上げに金彩などを施し、一つの反物として完成するのだ。

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友禅は水彩画と違い、何度も塗り重ねできない。色数分、染料を用意し、グラデーションも距離感や効果を計算しながら、筆で作業する。

ざっと友禅染めの工程を辿ったが、完成までに非常に多くの仕事が積み重ねられていることが、お分かりいただけるだろうか。クワバラさんは大型設備の必要な洗いなどの工程を除き、各工程をほぼ一貫して手がけている。

また、染め方も「型染め」ではなく「手描き」なのも特徴の一つだ。くらしずくのワークショップでは、風呂敷の柄に色を染める「色挿し」と名前を糊で描く「金糊置き」が体験できる。色挿しは「友禅」とも呼ばれている作業なだけあり、友禅染めの象徴的な工程。ぜひこの機会に伝統技術の一端を体感してみたい。

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下から光を投射しながら、柄の線に沿って金線糊を置いていく(ワークショップ当日の風呂敷を糊置き中)

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クワバラさんがデザインしたモチーフ。日本の伝統的な柄だけではなく、アジアの更紗などをヒントに新たな柄をデザインすることも。全世界の国々をテーマに製作する「KIMONOPROJECT」でハイチ共和国の着物製作を担当。現在帯も製作中。

さて、クワバラさんの工房にお邪魔すると、どこか空気感が違うのに気が付いた。

「地入れや地染めの時など、ほんのわずかな環境の変化で仕上がりにムラが出ちゃうんです」

色の定着が終わるまで、微風も日の光も温度変化も大敵だ。工房は閉め切り、日差しが入り込まないようブラインドで窓を覆い、空調すら付けない。あらゆる外部要素を排除したプレーンな空間で仕事が行われるのだ。
そのうえで「技術の引き出し」をフル活用する。

「例えば、このくらいの濃さの染料なら、仕上がった時にこんな色合いになるなとか。『引き出し』が多ければ早く作業を進めることができます」
技術に関してクワバラさんは、「偶然性」の良さが比較的肯定的に捉えられるある種の工芸と比較して、友禅染めは仕上がりに対する「確実性」がより求められる仕事であるとも語る。

「仕事としてテクニックが必要で、極め甲斐があります。これまでの経験を踏まえて無難にこなせば、ある程度安定した仕事はできますが、でもいろいろ試してみたくなっちゃうんです。失敗したりもするけど、発見がある。そういう意味で終わりがないんです。大変さはありますけど、時間が経つのが早いといいますか…その集中できている感覚がいいんです」
既存の技術を、作り方に沿って淡々と単にこなすだけではなく、常に仕事を磨いてゆく。その伝統という底なしの魅力に、没頭してしまった人がここにいるようだ。


手描き友禅で華となる仕事といえば色挿しだ。だが、その前段階の糊置きに、クワバラさんは特に魅力を感じている。

「下絵に沿って、糊で線を入れていくのが好き。友禅は色を入れるから、ほんとうは『面』の仕事なんですけど、私は『線』…そこから楽しさが広がってる」

友禅染めの修業時代、周りに美大生出身者が多かった。一方で自分が幼い頃から学んできたのは版画や書道。デッサンなど関わる技術に対して、コンプレックスを抱いていた。

「でもだんだんと、お客さんに『線がいいよね』と言われるようになって。それだけではない自分の強みがある。気が付いてみると、糊で線を描くことは、版画や書道とも通ずるところがあって…今までやってきたことが無駄にはなっていなかった。やっとそう思えるようになったんです」

その糊置きの技術も「これでいい」と、現状にとどめることはない。
「細くきっちり糊を置くのもいいけど、『強弱』があってもいいかなと。˙筆のように糊を使ってみたい」

そして、生地に注がれた情熱は、依頼主にしっかりと届ける。

「お客さんと一緒に仕事ができている感覚が好きなんです。オーダーメイドで、一貫して自分で手をかけて」

お客さんの想いを汲み取れる仕事のあり方。それがやり甲斐なのだと。
以前、お客が注文をくれた際にかけてもらった言葉が忘れられないという。

『あなたなら、どんなものでも精一杯やってくれると思って』

そのひと言がほんとうに有り難かったと、クワバラさんは振り返る。そしてこう、心に決めた。

「その姿勢であり続けること。自分はちゃんと、そこに立ち続けていること」

着物離れやプリント柄の着物の台頭など、伝統をめぐる現状は厳しい。だが、

「『着られればいい』から、『この1枚があれば次の世代にも伝えていける』という感覚に持っていきたい」

と話すクワバラさん。それは単に形としてのモノが受け継がれるのではない。人が人として生きるその熱量が、時を超えて宿り続けるのだ。

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地入れに使う刷毛などが並ぶ。道具も作るものによって使い分ける

取材・撮影:暮ラシカルデザイン編集室 沼尻 亙司
編集:くらしずく実行委員 三星千絵
協力:和雑貨 翠 白石 由美子

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《ワークショップ概要》
手描友禅で名入り風呂敷をつくろう 教える人 クワバラマキコさん

「友禅染め」とは、多彩な色で華やかな模様を染める、日本の伝統的な染めの技法で、通常は帯や着物を制作するのに使われる染めの技法のひとつです。
多々ある工程のうち、友禅のメインとも言える「色挿し」に挑戦します。
あらかじめ金のライン(糊)で描かれた小鳥やお花に、筆でお好みの色を挿し、ぼかしていくことで、手描友禅の繊細な技を体験していただけます。
最後に、筒を使って金糊で線を描くことにもチャレンジ! 自分の名前を糊で書いてみましょう。
世界に一枚だけのオリジナル風呂敷を作ってみませんか?(できたものは当日お持ち帰りいただけます。)

全2回のうち、①または②のいずれかをお選びください。

【概要】
日時: 
 ①[W1]2019年10月14日(月・祝)10:00~12:00
 ②[W1]2019年10月14日(月・祝)13:30~15:30
場所:菅原工芸硝子内くらしずく2019ワークショップ特設会場「くらしずくスタジオ」(千葉県山武郡九十九里町藤下797)
定員:各回8名
費用:5,000円/人(当日現金にてお支払いいただきます)
対象:10歳以上
所要時間:120分
備考:染料を扱うため、汚れてもいい服装でお越しください

お申込みはこちら。(要予約)

お申し込みはお電話でも承ります。
090-2403-1021(くらしずく ワークショップ担当・白石)

 
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くらしずく 2019

日時:2019年10月13日(日)、14日(月・休)
時間:10:00~16:00
場所:千葉県山武市九十九里町藤下797[Sghr菅原工芸硝子工房敷地内]

ワークショップのお申込みはこちら
https://kurashizuku-1.peatix.com/

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kurashizuku

暮らしをより豊かにしたいと願う使い手と。 使い手の暮らしを想い、作品を生み出す作家と。 その双方が出会い、心を通わせることが出来る場をつくりたい。 そんな想いから生まれた新しい形のマーケットイベント『くらしずく』の実行委員会が綴っています。
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