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Talk.03 若者と考える、もっと自由で多様な未来【暮らすroom's交流会】

こんにちは!暮らすroom'sです。
2023年3月4日に松本市にて行われた暮らすroom's交流会のトーク3「若者と考える、もっと自由で多様な未来」の様子をお届けします。

●登壇者
ファシリテーター:秋葉芳江(長野県立大学教授)
スピーカー:九里美綺(長野県立大学4年)、加藤あすみ(松本深志高校3年)、松村わら(N高等学校3年)、北村きよみ(暮らすroom’s)


現役の高校生や大学生たちが、今取り組んでいる行動や想いとは

秋葉:トーク3は、α世代やZ世代と言われる若い世代と、私や北村さんなどの世代で交わりながら進めて行きたいと思います。よろしくお願いします。まずは、自己紹介を兼ねて、今まで何をやってきたか、今は何をやっているかを教えてください。 

九里:私は今、長野県立大学の4年生で、グローバルマネジメント学部に所属しています。松本市出身なのですが、大学に入ってから「地域となにかできないかな」ということを考え始めて、長野県中の方々と出会い、意を決して一昨年に起業しました。今日、設立記念日を迎えて丸2年になります。会社の事業は、長野市内でのシェアハウスの経営や長野市との実践型インターンシップを作る仕事など、学生という立場で学生がどうやって働いていくかを考えながら様々な事業をしています。

左から、九里美綺氏、加藤あすみ氏

加藤:私は松本深志高校の3年生で、昨日卒業式を迎えました。高校時代を通じて環境問題やサスティナビリティに興味があって、学校外での活動をしていました。たとえば、青年環境NGOでイベント開催をしたり、塩尻市にあるスナバの起業家プログラムに参加して、Z世代と言われる自分たちの同世代に向けて、「エシカル消費」という環境や社会に優しい消費を広めるメディアを立ち上げて、Instagramやウェブサイトで発信をしたりしています。3月の後半からはドイツに行って勉強して、その後にイギリスの大学に進学してサスティナビリティ系を学びたいなと思っています。ヨーロッパはサスティナビリティや環境政策が進んだ地域として有名なので、そういった地域に行きたいと思って選びました。高校2年生のときに1年間カナダの高校に行った経験もあります。

松村:私は2年間、松本県ヶ丘高校に通っていたのですが、3年生になるタイミングで、日本で一番大きな通信制高校であるN高等学校に転校して、今月卒業する予定です。実家は農家で、農業ボランティアのシステム「WWOOF(ウーフ)」というのを利用していました。世代や国を問わず、日本の文化や農業を学びに世界中から人が来てくれて、今まで合計1000人ぐらいの人と一緒に暮らしてきた経験があり、今の自分があります。高校を卒業したら、半月後くらいからワーキングホリデーでオーストラリアへ行く予定です。今回、女性の生き方やウェルビーイングというのがテーマになっていると思うんですが、「幸せはいつでもどこでもだれでも作れる」ということを、心理学を通して伝える会社でインターンとして学ばせていただいているので、日々伝えているものと今日のお話が合わさるところがあって、楽しく聞かせていただきました。

左から、松村わら氏、北村きよみ(暮らすroom’s)

北村:私には高校2年生の娘と東京の専門学校に通っている娘がいます。下の娘が小学校へ上がる前に離婚をして、シングルでここまで育ててきました。親目線ということで、色んな話ができたらいいなと思います。

秋葉:教員として若い方に接していると、(今の世代は)男とか女とかあまり関係ないよね、という感じを受けます。みなさん、今やっていることをもう少し丁寧に紹介していただけますか。また第一部や第二部のトークを聞いてみて、何を感じているかなどを教えてください。

九里:(秋葉先生が用意してくれた)年表のなかで、私たちが生まれた頃くらいから、男性とか女性とか関係なくなってきたのかなというのを感じました。今まで学校生活を送ってきたなかで、「女性だから生きにくい」ということをまだ感じたことはありません。これから会社に入ったりしたら、何かあるのかもしれないですけど。働き方とか生き方を自分で選んで行くために起業して仕事を始めたので、自分たちで生きて選べば怖くないのではと思います。女性が、という話よりも、一人の人間としてどう生きていくか、ということをやり始めています。

秋葉先生が作成された年表

秋葉:九里さんが手掛けているシェアハウスやインターンの話を、もう少し具体的に教えていただけますか?

九里:シェアハウスを2棟経営しています。大学2年生の時に、コロナになったのがきっかけです。うちの大学は1年生が全寮制なんですけど、そこでみんなでごはんを食べることや、みんなで話して作っていく場所や時間がとても大事だったんだなと気づきました。寮が終わったら一人暮らしになるんですけど、「みんなで住んだほうが楽しかったし、新しいものを作れるかもしれない」という妄想から、シェアハウスを作り始めました。大学の授業のなかで知り合った大家さんに一軒家の空き家を紹介してもらって、同じ長野市内の大学の工学部建築科の人たちにも手伝ってもらいながらDIYして、みんなで住み始めました。また昨年には長野市と一緒にインターンシップの授業をやりました。NPO法人ETIC.という実践型インターンシップを全国でやっている大きなNPOがあって、長野市でもそれができたらと思ったからです。「働くことって辛いんじゃないか」「就活はやだな」と社会に出て行くんじゃなくて、「長野市内の中小企業って楽しそう」「こうやって生きたいと思って経営している人がいるんだ」という感想をいただけるようになったらいいなと思います。

秋葉:加藤さんのことは、フィンランドとの国際交流イベントで初めてお会いして話を聞いて、「なんてすごい高校生がいるんだ」と感動して憧れていました。もう少し、今までやってきたことを詳しく教えていただけますか?

加藤:私は高校時代に色々な活動に関わってきました。自分が運営しているエシカル消費のメディアは「エシテリア」という名前です。(最初に関わっていた)青年環境NGOの活動は、気候変動とかプラスチック問題のことを調べて中高生にレクチャーイベントをするとか、環境省への政策提言にも少し関わるなど、真面目でお堅い活動が多かったんです。でもそれだと一般の人を変えられない。中高生に向けたレクチャーイベントをやったときに「この子たちは、明日から環境問題を解決するために少しでも行動を起こしてくれるかな」と考えたときに、「いや違う」と思って。環境問題はとても大きな問題として捉えられがちで、「知識はあるけど動けない」という人が圧倒的に多いと感じました。

(環境問題への)日々のアクションを変えていけるような活動をしたいなと思っていたときに出会ったのが、エシカル消費という言葉です。世の中には環境を破壊する原因になっている商品や、労働者の権利を無視して大量生産のことだけを考えて作られている商品がありますが、エシカル消費では、それらを買わずに社会や環境に優しい商品を選択します。その概念ですごくいいなと思ったのは、消費は誰もが毎日行う行動であること。エシカル消費がもっとやりやすい世の中になったら、もっといい世の中になるのかなと思って。フェアトレードの商品を扱っているお店や、環境負荷の低い動物性のものを使用していないお菓子屋さんやレストランを紹介したり、日本に限らず世界でいい取り組みをしているブランドを紹介したりしています。実際にそのお店にインタビューに行って「どういう思いで始めたのか」ということや社会問題にかける情熱を店主やオーナーさんに聞いてウェブサイトの記事にしたり、Instagramではもっとラフなかたちで日本や世界でエシカルな取り組みをしている企業を紹介したり、さらに(Instagramの)ストーリーでは世界で起きてるエシカル消費のトレンドだったり環境問題を発信したりしています。「一人一人の環境問題へのアクションのハードルを下げたい」という思いで、高2の春くらいからメディアを立ち上げて、今でも続けているという感じです。

秋葉:だから、大学でサスティナビリティを学ぶという選択に繋がったんですね。

加藤:はい。大学で学びたいのは、政治学や社会学関連のサスティナビリティです。環境問題を大学で学ぶときに、理系からのアプローチや環境マネジメントのようにビジネス系からのアプローチもあると思います。環境問題に取り組む起業家さんなどに関わるなかで思ったことは、企業は今ある社会のシステムのなかでビジネスを興して環境問題へアプローチしているけれど、それには限界があるなと。メディアを収益化してやるとか、自分のビジネスとして環境問題にアプローチすることはできるけど、それは今の社会システムのなかでやっているだけ。私は社会のシステム自体を考えたい。大学では、その枠自体を研究したいなと。今の政治や経済が環境に果たしていいのか、別の道はないのか。政治学、社会学という観点でサスティナビティを学びたいと思って、そのプログラムがある大学を見つけて選びました。

秋葉:松村さんが、N高に進学してよかったなと思うことはどんなことですか?

松村:前にいた高校も好きで一年半ほど楽しく通っていたんですけど、進路のことを考え始めたときに、「どう生きたいか」「どういう社会がいいのか」など、そういうところがぽっかり抜けてるなというのが自分のなかにあって。中高・大学・就職というレールってあると思うんですけど、私にとって(N高への)転校はそこから外れることでした。「自分で選択していかないと」と思っていた時に、「君たちはどう生きるか」という言葉がN高のパンフレットに書いてあって、それに惹かれました。N高はさまざまな人に開かれている学校で、何万人の生徒がいるので多様なカリキュラムが組まれています。そこからも、「あなたはどれをやりたいの」という順番から問われるというか。色々な価値観がある上で「どう生きたい?」と問われている感じがすごく好きだなと思って、選びました。

通信制高校は自分で使える時間がすごく多くて、学校の勉強をクリアして単位を取って卒業することは全日制の高校よりもハードルが低いので、それ以外の時間を使って色々なことができました。私がこの一年意識していたのは「人から学ぶ」「旅から学ぶ」「本から学ぶ」ということです。自分で転校するという選択をしたことで、本気で向き合って学べたという感覚がありました。学ぶことは、三人称としてある何かを一人称にすること。この一年間は、自分事としていろんなことと出会えた、世界と出会い直せたなと感じています。

秋葉:北村さんもα世代のお子さんをお持ちですが、3人の話を聞いてどう感じましたか?

北村:3人の話を、娘2人にも聞かせてあげたいなと思いました。とくに専門学校1年生の長女が特徴的で。高校でも勉強はまったくしなかったのですが、教養を頑張って推薦をもらって専門学校へ行くことができました。今その娘は、演技科で演技を学びながら、大女優になる夢を追いかけています。


SDGsの登場によって、国内のジェンダー格差は本当に薄まっているのか

秋葉:みなさんの話を聞くと、ものすごく選択肢が広がっていますよね。2015年にSDGsが国連で採択されています。サスティナビリティは2010年くらいからはビジネスの世界でも世界的なトレンドとして言われるようになり、とりわけヨーロッパでは社会と経済の文脈のなかで語られています。女性の働き方が柔軟になるように日本も法制度をして良くなってきてはいるんですけど、世界の動きはもっと早くてエポックメイキングだった2015年のSDGsがあり、日本でもジェンダー格差が意識されてきました。トーク3のここまでの話で、男とか女とかいう話が全然出てこないのがすごく象徴的ですよね。進んできているなというのを、私も改めて実感しました。

せっかくなので、会場へ来てくださっている方々にも話を聞いてみたいと思います。ここまで聞いてきて、思ったことを教えてください。

現役大学生1:長野県立大学の2年生で、九里さんのシェアハウスを利用しています。あまり男女の区別がないなかで過ごしてきた小中高大のなかで、社会に出ていらっしゃる女性の方々の現実、僕は男性なので、社会に出ても自分から知ろうとしないと直面することがないだろうなという現実にすれ違って、言葉を選ばずに言えば「かっけえな」と思いました。一方で、自分が社会に出てからその現実にどう直面して行くのかな、とも。女性だからこそ感じる悩みがたくさんあると思うんですけど、羨ましさみたいなものも感じています。男性なので、お金を稼ぐという意味では「働かない」という選択することもおそらく無理ではと思いますし、だからこその悩みもあると思います。そのなかで自分の生き方や働き方、自分をどう表現するかを考えるのはおもしろそうだなと思いつつ……。モヤモヤした一日でした。

現役大学生2:僕は長野県立大学の2年生で、合同会社キキのチームメンバーです。話を聞いていて、男女の区別については、あまり気にしたことがない話だったので、「謎だな」と思いました。先ほどの(第二部の)トークセッションで「自信をもってやりたいことを『やりたい』と言うことが大切」といった話を聞いて、男女に関わらず「感情の思うままでいいんだ」と自信がつきました。

出店社:私は富士見高校の在学中に養蜂部に入りまして、そのなかでミツバチに出会ったのがきっかけで養蜂業という生業をしてます。とくに男だから、女だからということではなくこの仕事に携わっているんですけど……。ひとつ好きなものや夢を追いかけて失敗しても若いから何回もチャンスがあると思って、養蜂業を続けています。私は両親がサラリーマンなので、普通だったら社会に出て、会社に勤めるというのが世の常かもしれませんが。男性女性関わらず、自分の好きなことや自分でやりたいことを、ぜひみなさんにもチャレンジしていただきたいです。女性の方々は社会により出やすくなっていると思うので、そういうチャンスを逃すことなくチャレンジしていったらどうかなと思います。

現役高校生:私は、松本第一高校を昨日卒業しました。今日みなさんのお話を聞いて、男性とか女性とか関係なく、一人の人としてその人を見たいと思いました。

秋葉:みなさん、ありがとうございました。最後に、「未来」というところで話していただきたいと思います。2040年頃にどんな未来を生きていたいですか?それに向けて、「私はこれをしたい」「私はこれをする」ということを教えてください。

九里:2040年、私が40歳の時には、通常のルートみたいなものがなくなってくると、みんなが生きやすくなるのかなと思います。もっと自分が好きなこととか、「こういうことやりたい」「この分野を研究したい」という想いがあったとしたら、「それをやり続けてもいいんじゃない?」と思えるし思ってもらえるような社会が理想です。「こうしなきゃ」「こうあるべき」というのが薄まっていくと、みんなが生きやすいのかなと。キラキラした生き方や活躍した生き方から外れても、認められるし、ないがしろにされない世の中になるといいな。私自身としては、研究したい分野が見つかったし、「食べる」という自分が好きなこともやりつつほかのこともやり続けるみたいな、色々なことを手にしながら生きられたらいいなと思っています。

加藤:男女の境はきっと昔に比べて無くなってきているし、女性の差別というのも少なくなってきていると思うんですけど、個人的な感覚として、海外に1年間住んで日本に帰ってきて、男女の分断やジェンダー間の伝統的なものを感じて、居心地の悪さを感じました。それには気づいてない人が結構いるのかなと思います。「男女が平等になってきているから、男女なんて関係ないし女性差別は全くないよね」というのは違和感があって。なぜ今こういうムーブメントが起きているのか、なぜ女性が差別されてきたのかというのを学んでほしいし気づいてほしい。そこにある小さな女性に対するイメージや差別みたいなものに、一人一人が考えて気づいて話していくことが重要。ほかの社会問題にも言えて、環境問題の重要性というのはなかなか人任せになることが多いと思います。「国がやればいい」とか、「大きすぎるから関係ない」とか……。環境問題やジェンダーを一人一人が考えることは、一人一人の幸せに繋がることだと考えていて、自分がどんな社会で生きていきたいのか、どういう状態が理想なのか、自分が知らず知らずのうちに苦しんでいることはないかなどを一人一人が考えて、アクションできている社会が理想。2040年になると環境問題やジェンダーの平等の問題が解決されたとしても、社会問題というのは常に起きていると思うので、社会の風潮に流されずに、自分が大事にしたいことを一人一人が考えて気づいていける社会が理想ではないかと思います。

松村:平和と戦争とか、そういうことはゼロヒャクではなく、バランスだと思います。自由や多様がこれからのキーワードだと考えた時に、「自分がどう考えるか」という選択肢がたくさんあることは幸せなことだと思うけど、常に起こっていることに対して、それに対して自分がどう感じてどう行動していくか。そこで自分の幸せとか自分の行動をコントロールできることが自由かなと思う。2040年も問題はたくさんあると思うし、全員が幸せというわけにはいかないかもしれないけど、選択肢の自由だけでなく、向き合い方の自由もできてる人でありたいと思います。

北村:未来は、今日の積み重ねでしかありません。今日を楽しんで行くことが、未来の楽しいに繋がると思って生きています。子どもにも、自分が楽しくないとまわりを楽しくすることはできないから、まず自分が楽しくあることが大事だと伝えています。きっとその先にいい未来になるし、まわりにはいい未来を生きている仲間がいるんだろうな、と。

秋葉:今回のトークセッションを通じて、「自分を主語にする」ということが、すごく大事かなと感じます。自分が主語で、自分で選ぶ、自分で決めていく。そんなところに未来があるのかなと感じます。


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