10年という月日の話をしようか

時間が過ぎるのが速いと人はよく言う

光陰矢の如しだとか秋の日は釣瓶落としだとか、そんな風に昔から言葉にして口々に言ってたのだろう。

子供のころには長く感じた十分も、大人になってからは一瞬だ。

そんな一瞬が振り積もれば記憶というのはどんどん上書きされていく。

楽しいものを求めて次から次へ、それは生物の本能的な欲求なのだろう。

だけどそれでも上書きできない、埋もれてもなおすぐに思い出せる作品を読者殿は持っているだろうか?

己の血肉や信念になったとまで言える作品はあるだろうか?

もしあると言うのならそれは得難いものだ、どんな時も大切にして欲しい。

さて前置きが長くなってしまったが、読者殿は魔法少女リリカルなのはA`sという作品をご存じだろうか?

まどか☆マギカに並んで魔法少女に革命を起こしたと言える作品だ。

魔法少女と言えば杖とかコンパクトとかはたまたマイクとか、いわゆる女の子らしい持ち物が多かった。

リリカルなのはシリーズもA‘sまではその例にもれず大きな杖と戦斧で魔法を使い戦う話だ。

すでに男らしい得物が見える気がするかもしれないがそれはまだ序の口だ。

そこからは銃のリロードを模したシステムが敵味方問わず出てくるようになり、非常に男心をくすぐられたものだ。

この辺から魔法少女は男が見ても楽しめる作品になったのかもしれない。

少しだけ子供のころの話をすると、紅月が子供のころは男が女物の作品を見るのがばれたらクラスで後ろ指を指されるような時代でもあった。

別に男がちゃお読んだりしてもいいと思ったが所詮は数の暴力で押し切られるのが関の山だ。

だからこっそり読んでたし楽しんでもいたが同時に寂しくもあった。

作品を語り合うことが出来ない、これに勝る苦痛もなかなかない。

そんな時に現れたのが女性の見る魔法少女でありながら非常に男心をくすぐり、なおかつ大人が見ても面白い「魔法少女リリカルなのは」シリーズだった。

そしてそれが劇場版として再構築されたとき、紅月の足は自然と劇場へ向かっていた。

そこでは大人も子供も男も女も分け隔てなく、スクリーンに映る映像に涙していた。

劇場版第2弾、なのはA‘sは家族の物語だ。

独りぼっちの少女が奇妙な本から現れた4人の騎士と共に暮らしながら、主人の身に迫る危機を騎士たちが知らず知らずのうちに排除する。
そんなお話だ。

そして同時に出会いと別れのお話でもある。

その先を知る楽しみを奪うわけにはいかないから口を紡ぐが、いつだってその最後は胸を打つ。

あのシーンを見る度に家族っていいなと思ったり、主従の絆を超えたそれに涙することもあった。

その感動からもう10年という時間が経ったのだった。

今でも水樹奈々様のBright Streamを聞けばその光景が浮かんでくる。

今でも創作の度にふと指がその光景をなぞる時がある。

そのたびに思うのだ、コレが血肉となったという事だと

自分を構成する一部になったのだと。

これを見ている読者の方にもいつかそういうのが見つかって欲しいと思う。

そして願わくばその経験や体験をぜひ誰かと語らい、絆を深めて欲しい。

それが出来たのなら作家としてはこれ以上ないほどに嬉しいことなのだろうから。

あの日から10年、今も紅月からはあの光景が色あせることはない。

ただそれだけのお話なのでした

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