大阪メトロのウェブサイトの誤訳問題に関する外大生の呟き 〜翻訳されたメッセージを読むのは誰なのか〜

大阪メトロの駅名の多言語ウェブサイトの誤訳が話題となっています。
自動翻訳を使って翻訳をした結果、誤った翻訳が生成され、ウェブサイトに掲示されるまでに至ったという問題です。
SNSを通して大きな話題となり、大阪人としては笑いのネタとして扱う空気にもなっています。

18日の毎日新聞の記事によると、
「更新作業を効率的にするため、米マイクロソフト社の自動翻訳ソフトを利用し、確認作業をおろそかにしていたのが誤訳の要因」
ということです。

しかし、この問題の原因は「確認作業をおろそかにしていた」だけではありません。
「メッセージを伝えたい人が誰か」ということを意識していなかったという根本的な問題があります。

大阪メトロ以外でも、多くの観光地で不思議な訳や明らかな誤訳を見かけることはあります。

ここで問題なのは「なぜ翻訳をしているのか」「誰のために翻訳をしているのか」ということを
外国語表記の掲示物やウェブサイトを作成している人が意識していないということにあります。

そもそも、 なぜ、外国語表記の掲示物やウェブサイトを作ろうと思ったのでしょうか?

英語が書いてあるとかっこいいと思ったのでしょうか?
インバウンドやグローバルと言った流行りに乗って外国語表記は必要である!と思ったのでしょうか?
なんとな〜く外国語のウェブサイトも作った方がいいんじゃないかなと思ったのでしょうか?

実際に現場で掲示物やウェブサイトを作っている人たちは
このような考えで仕事をしている可能性があります。

なぜなら、外国語表記の掲示物やウェブサイトを作るとき、
担当者の目の前に「言語がわからなくて困っている人」が実際に立っているわけではないからです。
その場合、担当者は「表記を外国語にしなければいけない」という目の前の仕事しか見えていません。

今回の大阪メトロの場合は、
「堺筋を英語にしなければいけない!」と思って翻訳をした結果、
「Sakai muscle」(堺・筋肉)という表現が自動翻訳で出てきて
実際にその表記を読むであろう人たちへの確認を怠ったため
そのままウェブサイトに記載されることとなったのでしょう。

もし今回の大阪メトロのウェブサイトを作る過程において
外国語のウェブサイトを見るであろう当事者が実際に隣にいて
きちんとコミュニケーションをとっていたら、
「Sakai muscle?筋肉の名前?電車の路線の話をしているんやないの?」
と担当者に疑問を投げかけたら、あっさりと問題は解決したに違いありません。

言葉は「人」に「何か」を伝えるツールです。
「人」または「何か」のどちらが欠けていても意味をなさないのです。

翻訳は言葉という「何か」を置き換えるだけの作業ではありません。
メッセージを伝えたい「相手」がいることで成立するものです。

私たちは大阪外国語大学の卒業生として、
たくさんの人たちに大阪のことを好きになってもらうためにも、
「伝えたい人」を意識した外国語表記が増えて行くことを願っています。

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