ナミュールとプレサージュリフトに見る、ハービンジャー牝駒のトレンド

 ハービンジャーは現5、4歳世代の牝馬の重賞勝ち馬がゼロ。ディアドラ、モズカッチャン、ノームコアがいたころと比べ、父としての存在感が薄くなりつつありました。しかし現3歳世代は、プレサージュリフトがクイーンCを、ナミュールがチューリップ賞を勝利。久しぶりに活気づいています。

 せっかくなので、この2頭の共通点から傾向を探ってみることにしましょう。


傾向1:リファールのクロス

 リファールの血をクロスしたハービンジャー牝駒で、これまで一番活躍していたのはウインクルサルーテ(5勝)。あとは3勝馬が2頭ですから、さほど目立った実績はありませんでした。ところがプレサージュリフト、ナミュールはどちらもリファールをクロス。かつての傾向とは少し違ってきているのかもしれません。


傾向2:サーゲイロードのクロス

 サーゲイロードのクロスもちは、ウインクルサルーテ(5勝)、ギモーヴ(4勝)、テルメディカラカラ(4勝)などがいるものの、重賞勝利はなし。しなやかさを引き出す影響で、芯に非力さが残ることもあるため、良い印象がなかった仕掛けです。

 プレサージュリフトとナミュールは、サーゲイロードをクロスしています。しかも厳密に言うと、プレサージュリフトは「シャリーフダンサー≒アルザオ」4×4。ナミュールは「シャリーフダンサー≒ダンシングブレーヴ」4×4。大きなニアリークロスの一部にサーゲイロードを組み込むことで、シャリーフダンサーを増幅していることがわかります(※シャリーフダンサーの母父の父がサーゲイロード)。


傾向3:父似ではなく母似

 前述のとおり、プレサージュリフトとナミュールはサーゲイロードの血をクロス(シャリーフダンサーの血をニアリークロス)しています。しかし走りを見ると、しなやかさが過剰に出たり、非力に見えたりなど、サーゲイロード的な影響をあまり感じさせません。

 個人的な印象ですが、この2頭は父には似ておらず、母に似た競走馬だと感じています。プレサージュリフトの母であるシュプリームギフトは、現役時代に函館スプリントSで2着になるなど短距離で活躍した馬。ナミュールの母・サンブルエミューズは2歳時に(1600m時代の)芙蓉Sを勝ち、古馬になってからは距離を短縮して走っていました。プレサージュリフト、ナミュールの引き締まった肉体、弾けるようなフットワーク、そして豊かなスピードは母方の影響ではないでしょうか。

 傾向1・2でリファールのクロス、サーゲイロードのクロスを取り上げましたが、これはハービンジャーの配合論での話。ここまでの内容を否定するかたちにはなりますが、母似である2頭にとって、実はさほど大きな意味はないのかもしれません。


結論

 結論としては、現在のハービンジャー牝駒のトレンドは、母に似たスピード型という考えに至りました。父視点ではなく、母視点でみることが重要なのではないかと。

 とはいえ、リファールやサーゲイロードのクロスが興味深い傾向であることも確かです。種牡馬として年齢を重ねるにつれ、配合の特徴が変わることは珍しいことではありません。ハービンジャーの配合論にも少しづつ変化が起こっている可能性も含めて、注視しておきたいところです。


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