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朝日杯FS 有力馬血統考察

ダノンマッキンリー

 父のモーリスは、現役時代に挙げたGⅠ6勝のうち4勝がマイル戦。母の父・ホーリーローマンエンペラーは短距離GⅠを2勝した馬。この両者が「アメリフローラ≒デインヒル」、「ノーザンテースト≒ファンフルルーシュ」のニアリークロスを介して脈絡しています。どちらも屈強なパワーの増幅にまつわる仕掛け。同時にホーリーローマンエンペラーの主要な血をまるごと抑えた仕掛けとも言えます。これらの影響を考えると、短いところを主戦場とする突進型になりそうな印象です。
 ただしパワー一辺倒というわけではありません。本馬の3代母にあたるラップイットアップ(Wrap It Up)がモデルスポートに対してニアリークロスで脈絡。モーリスの軽いスピード源であるモデルスポートの血も、しっかりと刺激しています。主体となるのはあくまでもパワーですが、軽さに対しても配慮してあることが好印象です。
 これまでの2戦は1400mを使っていますが、将来は生粋のスプリンターに完成しそうな雰囲気です。今のところ実戦では、ギリギリのところで前進気勢を制御できています。今回は折り合いの達人・ルメール騎手を手配。少しでも不安を取り除こうという意図が感じられます。極端に抑え込もうとはせず、スピードをいかした競馬をしてくるのではないでしょうか。1800m型のライバルにとっては、嫌な存在だと思います。



ジャンタルマンタル

 父のパレスマリスは現役時代にベルモントS(ダ12F)を勝った馬。その弟にはアイアンバローズ(ステイヤーズS)、ジャスティンパレス(天皇賞・春)がいます。この血統の最大の長所がスタミナにあることは言うまでもないでしょう。それだけに本馬がマイル重賞で強い勝ち方をしたことに驚きはあります。
 母方は軽いスピード血統が豊富。そっち側の影響が濃い馬なのかなと最初は考えました。ただ実馬をみると、厳密には少し違うかもしれません。本馬は上半身こそ筋肉質ですが、脚先の捌きはしなやか。走りの雰囲気が祖父のスマートストライクに似ているのです。本馬はスマートストライクとムーンライトソナタを通じて、ミスタープロスペクター4×5、シアン6×6のクロスをもちます。スマートストライクはマイラーとして活躍した馬。上記のクロスを通じてスマートストライクらしさを引き出したと考えれば、本馬のパフォーマンスについても納得できます。
 とはいえ、さすがにピュアマイラーという感じはしません。道中で一呼吸おけるような、1800m寄りの流れが理想でしょう。前走は馬場が渋ったことも味方した印象です。


シュトラウス

 母の父のアドマイヤベガは、現役時代に日本ダービーを勝った馬。トニービンをもつ血統だけに、重厚な持続斬れを使えそうな印象を抱きます。しかし実際はあまりトニービン的なタイプではありません。牝系の奥にあるトムフールやボールドルーラーの、軽くて無駄のない脚さばきが主体。スピードの持続性はありますが、斬れ味というよりは、小脚を長く持続できる低燃費型のイメージです。ディープインパクトの全盛期とは違い、今は切れ味が絶対的に強い時代ではありません。レースの性質が変わったことで、アドマイヤベガのような機動力が、以前よりも武器になりやすいですね。これからもっと存在感を増してくるのではないかと思います。・・・と力説したものの、本馬は馬力を兼備した雄大な走りが目を引きます。父のモーリスっぽさが濃く、そこまでアドベガ的ではないですね(笑) もちろん下支えという意味で、恩恵は少なからずあるはずですが。
 本馬はデビュー前から折り合い面にかなりの不安を抱えています。前走はペースが流れたことで、あまり我慢を強いることなく済んだのが良かったです。モレイラ騎手の繊細なタッチだからこそ、なんとか誤魔化せたというのもあるでしょう。マイルへの短縮は、馬にとっては走りやすいと思います。ただ本質的に脚が速いほうではありません。馬場が渋るなど、タフな条件が望ましいです。


セットアップ

 父のデクラレーションオブウォーは『ベストインショウ』の血と好相性。収得賞金トップ4(トップナイフ、タマモブラックタイ、本馬、ハウゼ)はいずれもこの血をもっています。本馬の場合、母のスリーアローが「ベストインショウ≒ミントクーラー」5×3の仕掛けを内包(ニアリーとするには少しジャッジが甘めですが)。母の血統内でベストインショウの成分を強めたうえで、デクラレーションオブウォーに組み合わせたことが、より恩恵に繋がったのかもしれません。
 ただ実馬の走りをみると、どちらかと言えばベストインショウはサポート役として機能している印象を受けます。主役となっているのは軽いスピード成分。ラーイとサンデーサイレンスを通じるヘイローのクロスや、ゴーンウェストとストームキャットを通じるセクレタリアトのクロスなどが表面化しています。稍重の洋芝を逃げ切るのですから、当然パワーも兼備しているのでしょうが、字面ほど屈強なタイプではありません。
 とはいえ、さすがに阪神・外回りのマイル戦で鋭い脚を使えるかは微妙なところ。タフな条件で、底力が問われるようなかたちのほうが、相対的にみて有利になりそうです。


エコロヴァルツ

 母の父・キングカメハメハと、2代母の父・エーピーインディの柔軟性がしっかりと表現されたキャラ。父がブラックタイドなので、重厚な粘り気を帯びています。パワーと持続力をいかして、長く良い脚を使えるタイプです。ちなみにブラックタイド×母の父キングカメハメハは、現3歳世代が5打数5安打。現2歳も本馬を含めて3打数3安打。地味に存在感を見せている隠れトレンド配合です。
 前進気勢が強いため、マイルへ短縮することで折り合いは楽になりそうです。ただ血統構成や、馬の個性を考えると、阪神マイルの適性自体は微妙なところでしょうか。飛びの大きいストライド走法ですが、体幹がしっかりしており、コーナーで動いていける機動力があります。率直に言うと、ホープフルSに出走するようなら面白い存在になるだろうと思っていた馬です。朝日杯に出てくるとは思っておらず、ちょっと意外でしたね。


そのほかの重賞レースはInstagramで考察しています


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