見出し画像

五島旅①五島うどん工場見学

長崎県の西側に連なる五島列島。
幼い頃、父の仕事の関係で暮らしていた島。
五島を訪れるのはなんと35年ぶり。
連絡まめな姉が、現地で漁師をしている当時の同級生のかずさんに相談したところ、スペシャルツアーを組んでくれ、母と姉と3人で、思い出と食を巡る、大満喫の旅行となりました。

今回は特に心に残った五島うどんの工場見学について、まずはまとめておこうと思います。

長崎の波止場をジェットフォイルで出発。天候は薄曇り。
波も強くなく、酔うこともなく、快適な船の旅を経て、2時間後に上五島は鯛の浦港に到着しました。

レンタカーで最初に向かったのは、五島うどんメーカーであるますだ製麺の食事処「竹酔亭」。
私は五島うどんと漬け丼のセットを注文。


出汁のきいた五島うどんもさることながら、この漬け丼もまた美味。
甘みのあるお出汁に漬けられたお刺身が温かいご飯にのっていて、鯛茶漬けのような美味しさでした。

そして、満腹至福の後に、社長さん直々に工場を案内してもらいました。(一般客への工場見学は現在行っていないそうです。漁師のかずさんのおかげです。ありがとうございました!)

かつては手でこねていた五島うどん。
ますだ製麺を立ち上げた先代が、五島うどんのシェアを広げたい!と、こね機での製造をスタート。
はじめは25キロをこねる機械しかなかったものの、五島うどんよりも先に量産に成功していた島原半島のおそうめん屋さんが見学に来てくれたことがきっかけで、 150キロ分の機械の開発に成功したそうです。製造量は一気に6倍!


こねた後の生地は2時間置いて、生地と水分を馴染ませてから、数回に分けて少しずつ伸ばしていき、椿油でコーティング。
それをさらに細く伸ばしていき、最終的には麺の太さになるまで伸ばしていきます。一つの粉の塊が、伸ばされて伸ばされて、一本の麺になっていく。
なんともロマンがあると感じるのは、粉物好きだからなのでしょうか。

そして、伸ばした麺を乾燥。1日乾かしたら、商品に合わせて長さを変えてカット。
一本一本を人の目で、太さや色味などのばらつきがないかを検品。
最終的に、梱包して出荷していきます。

機械化は進んでも、各工程には人の手が必要で、気候や温度、湿度によって変わる生地の状態を人間が見極め、対応する。

その手間と労力は地道で、集中力をキープするのが非常に難しいものと感じました。

ただ、作っているものは違っても、関わり方、注意している点などベーグルを作っている自分の店と共通する部分が多いことも非常に興味深かったです。(異物混入への配慮や、農作物のフードロスへの意識など)

特に心に残ったのは、社長のますださんの経験談。

ますださん、島を出て別の仕事をしていたものの、数年後、家業のうどん店で勤めるため上五島に戻ってきたそうです。

ただ、日中はうどん麺を作り、夜中には必ず生地の乾燥状態をチェックする。
休みがほとんどない、うどん作りに明け暮れる日々が10年ほど経った頃。
仕事へのモチベーションがなかなか上がらず、悶々としていたそう。

そんな時、先代から関東の百貨店の催事に行くよう言われます。なんでわざわざ、と思いつつ訪れたその催事で、ますださんが見たのは「こんなに美味しいうどんは食べたことがない」と嬉しそうに試食するお客様の姿。「以前食べて美味しかったから」と再び買いにきてくれたお客様の姿。

自分達が苦労して作ったものが、心底喜ばれている光景を目の当たりにし、ますださんの意識に大きな変化が生まれました。
「同じことをしていても、不思議と以前のような疲れを感じなくなりました。自分で選んでやっている、と思えるようになったからなんだと思います」
そんなふうに仰っていたますださんの顔は、とても溌剌としていました。

そうそう。今回教えていただいて知ったのは、五島うどんと我が店のベーグルの水分割合が同じだった、ということ。幼い頃から食べ続けてきた五島うどんと、10年作り続けたベーグルにはそんな共通点もありました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?