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赤城山の不思議

夫は群馬県出身。
群馬といえば赤城山だよね?
「連れて行ってほしい」と何度かお願いした。
が、なぜか「行こう」とは応じてくれない。
どうして連れて行ってくれないのかと詰め寄ると「赤城山って言われてもなー」。行ったことはあるかと尋ねれば「遠足で行った。ざっくりとだけど。」と言う。
ーざっくり?

そんなやり取りを繰り返して20年も経ったある日、またしつこくお願いすると「う〜ん、いいけど、いいんだけどさ、どこが赤城山なんだか…」
どこって、場所を知らないの?
「だいたいの場所はわかるんだけど。赤城山はどこ?と言われても…」
なぜそんなにはっきりしないんだろう?群馬県で1番の山じゃないの?

あの《上毛かるた》にもあるじゃない。

   裾野は長し赤城山

(ヘッダーの画像がそのかるたです)


そんな折り、私の父が骨折により入院したと知らせが入った。手術や入院生活で認知症が進行しているというので会いに行き、そこで閃いた。
そうだ、父に聞こう!山が大好きだもの。詳しいはずだ。夫が渋る謎を解いてくれるかもしれない。それに山の思い出話をするのは認知症に良いかも?

病室で「赤城山に行くんだけど、どんな山か教えてほしい。」と切り出すと、
「赤城山?あー、そう。う〜ん、赤城山…ねえ。そうねえ‥‥」
と言ったきり、寝てしまった。
眠気を誘ってしまったようだ。
父からは何も聞き出せなかった。

らちがあかないので赤城山行きを強行することにした。もう現地へ行って、この目で確かめてみよう。

夫は地元だから情報は任せておけばいいと思っていたのだけど、日程が迫っても相変わらず煮え切らない様子なので気になり、赤城山について初めてちゃんと調べてみた。

結論。
赤城山という名前の山は

存在しなかった。


私「赤城山、なかった。」
夫『やっぱり?』
私「ないんだね。」
夫『そうじゃないかと思ってた。』

‥‥まあ、いい。
いいでしょう。
とにかく出発。

地図やナビを見ながら進んだ。
私「この辺り?」
夫『たぶん。』
私「車でどこまで行けるかな。
  登山道はどこだろう?」
夫『頂上なんてあったかな?
  ずっと車で行って、
  なんとなく下ってこれる。』
私「なんとなく?」

頂上が存在しない山なんてあるのだろうか?
不思議なことをおっしゃる。

謎だらけの赤城山を目指して一行は進んだ。

やがて、
「あ、看板!」

《土砂崩れにより通行禁止》

そういえば少し前に豪雨があった。
・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


私「今回はあきらめようかな。」
夫『そうしよう!』
(なぜホッとする?)

こうして行き先をグリーン牧場に変えたのだった。
         2019年、夏


2024年、初夏
いまだ赤城山は制覇していない。


※赤城山は黒檜山、駒ヶ岳、地蔵岳、荒山、鍋割山、鈴ヶ岳、長七郎山からなる複成火山だそうです。



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